2021年8月のブログです
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村上春樹さんの『シドニー!』①コアラ純情篇・②ワラビー熱血篇(2004・文春文庫)を久しぶりに読みました。15年ぶりくらいです。
文字通り、村上さんのシドニー五輪観戦記。
雑誌「ナンバー」の依頼原稿とのことです。
しかし、村上さんのこと(?)、オリンピックなんてちっとも好きじゃないんだ、とおっしゃいます。
事実、開会式は途中で退席します。
すごい観戦記(?)です。
いいなあ、自由で。
村上さんは、最近のオリンピックの商業主義やメダル至上主義に反対をします。
選手のことを考えない開会式や閉会式を批判します(村上さんは他の本でも、市民マラソン大会での来賓の長い挨拶が選手のことを考慮していないと参加者の立場から批判をしています)。
一方、たまたま観戦したゲームで、一所懸命にプレーをする選手たちに感動をします。
そして、村上さんの真骨頂ですが、オーストラリアの先住民であるアボリジニの選手の苦悩を描きます。
ここは感動的で、しかし、なかなか読むことも苦しいドキュメンタリーです。
合間のオーストラリアの風景描写は楽しいです。
なかなかいい国みたいです(もちろんアボリジニの問題をはじめとして表と裏があるのですが…)。
今回の東京五輪を振り返ってみても、考えることの多い本です。 (2021.8 記)