ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングや訪問カウンセリングなどをやっています。

松木邦裕ほか編『精神病の精神分析的アプローチ-その実際と今日的意義』2008・金剛出版

2024年05月31日 | 精神科臨床に学ぶ

 2017年のブログです

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 松木邦裕・東中園聡編『精神病の精神分析的アプローチ-その実際と今日的意義』(2008・金剛出版)を再読しました。

 この本もかなり久しぶりの再読で、しかも、最初に読んだ時にはじーじの力量がとても貧弱だった時で、あまり理解をできずに終わってしまったという記憶がありました。

 今回、精神科デイケアでのボランティアも5年目に入り、以前よりは少しだけ精神病のことや精神分析的アプローチのことが理解できるかもしれないという淡い期待を持って読みました。

 しかし、やはり精神病という病いはなかなか難しい病いで、そのアプローチも並大抵のことでは難しいということを再認識させられました。

 そんな中、本書の著者らは、本当に地道な努力と患者さんとの協同作業で、一歩一歩患者さんの治療に当たっていることが読み取れます。

 今回、改めて勉強になったことはたくさんあるのですが、たとえば、精神病状態のこころの状況(これは解体・破滅不安といわれるようですが…)の理解とか、妄想の意味やそれへの対応の方法、転移と逆転移の読み取り、不安のコンテイン、その他もろもろ、です。

 これらの考え方が、具体的な事例をもとに述べられているので、じーじのような初級者でも多少は理解ができます。

 中級者であれば、さらに深く理解できるのではないかと思われます。

 現場でいろいろ経験していることと照らし合わせると、頷けることも出てきました。

 ケースが見える人は、本当にいろいろ見えて、いろいろな対応ができるんだな、と改めて感心をしました。

 少しでもそういうレベルになりたいですし、メンバーさんと協力作業ができるようになりたいものだ、とつくづく思いました。

 年寄りだからとあきらめないで、さらに少しずつでも勉強を積み重ねていこう、と思いました。     (2017 記)

 

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樋口有介『遠い国からきた少年』2018・中公文庫-美人シングルマザーが社会の悪を暴く痛快小説です

2024年05月31日 | 小説を読む

 2018年のブログです

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 樋口有介さんの『遠い国からきた少年』(2018・中公文庫)を読みました。

 またまた樋口有介さんの小説、このところ小説ばかり読んでいて、専門書はほとんどほったらかしで、反省の日々です。

 今回の小説は、弁護士事務所の美人シングルマザー調査員(本の帯には、美脚調査員とあります)が活躍をする推理小説。

 この美人シングルマザー調査員は、少女時代にある事件から女子少年院に入り、そこで産んだ息子を女手一つで育てているという設定。

 息子を食べさせるためなら汚い手も使いますが、生きていく哀しさを十分に知っているゆえに、辛い人生を生きている人の哀しみもわかる人物です。

 美人なのに、とにかく痛快、料理は息子のほうがうまいのですが、何かとお母さんぶって笑えます。

 ユーモアと哀しさで、世の中の悪に怒りまくります。

 怒りの対象はさまざまですが、たとえば、少女アイドルグループで金儲けをしているおとな、容赦がないです。

 さらには、アフリカの子どもたちを救う寄付金で儲けているおとな、こちらも容赦ないです。

 北朝鮮の脱北者の問題も絡んで、事件は複雑、かつ、哀しく、しかし、主人公は粘り強く、絡まった糸を解いていきます。

 おもしろいです。そして、痛快です。

 小説だなー、とは思いますが、読後感は悪くありません。

 ちなみに、文庫本の解説は奧田瑛二さん。

 型破りですが、楽しい文章を読ませてくれました。     (2018 記)

 

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松木邦裕『耳の傾け方-こころの臨床家を目指す人たちへ』2015・岩崎学術出版社-ていねいなきき方を学ぶ

2024年05月31日 | 心理療法に学ぶ

 2015年のブログです

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 松木邦裕さんの『耳の傾け方-こころの臨床家を目指す人たちへ』(2015・岩崎学術出版社)を読みました。

 初学者用かな?と思って読んだのですが,なかなか奥が深く,じーじの力ではまだまだ理解が十分でないところが多々あったように思います。

 しかし,とても面白く読めました。

 面接におけるクライエントさんの話のきき方をていねいに検討されています。

 特に、精神分析的な心理療法のきき方を学ぶうえではとても勉強になると思います。

 今後,何度もなかみを噛みしめながら読んでいきたい本だと思いました。

 全体的な印象としては,精神分析の大家のみなさんはそれなりに表現は違いますが,しかし,やはり,松木さんも大切なところでは,成田善弘さんや藤山直樹さんと同じようなお考えを述べられているような印象を持ちました。

 もちろん,細部は違うのでしょうが,しかし,大家の言うことにはどこか共通点があるようにも思います。

 今後,さらに深く勉強をしていきたいと思いました。

 後日,再読をした際には,もっともっときちんとした報告ができればと思っています。     (2015 記)

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 2018年秋の追記です

 3年ぶりに再読をしました。

 今回は以前より少しだけ読み込めたような気がしていますが、どうでしょうか。

 面接でのきき方として、共感と受容のための支持的なきき方から精神分析的なきき方までのいくつかの段階のきき方を提示して、それぞれ事例を通してわかりやすく説明をされています。

 事例の描写は深く、多少の失敗も含めて、とても正直に描かれていて、初学者にも勉強になります。

 しかし、それにしても、面接の奥深さのなんとすごいことか、驚きとともに、感動させられます。

 そして、びっくりするのは、段階を経て習熟した技法を、最後にはいったん捨てる、というところ。

 無意識のもの想いを大切にする精神分析的心理療法のすごさが示されます。

 おそらく本を読んだだけではわからない世界、スーパーヴィジョンや訓練分析をきちんと経験しなければわからない世界なんだろうと思われます。

 もっとも、ないものねだりをしても仕方ありません。

 できるところから、勉強をしていこうと思います。

 最後に、松木さんも詩人キーツさんを引用しました。

 わからないことに耐える能力の大切さのところで、キーツさんとビオンさんの言葉を示して、説明をされています。

 考えてみれば、人生そのものがわからないことだらけなわけで、われわれはそこでわからないことに耐えてなんとか生きていくしかないわけですね。

 さらに、勉強をしていこうと思います。     (2018.10 記)

 

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