朝、まだ暗いうちに家を出たんだ。昨日まで雨の日が多く、天気が心配だった。路面にはあちこち濡れた跡が残っている。しかし、見上げる暗い空にはたくさんの星が光っていたよ。よしっ!思わずこんな言葉が口を衝いて出てきた。
奥多摩駅に降り立ったときには真っ青な空に秋の日差しがまぶしいくらいだったよ。すばらしい天気になったね。みみ爺は何故かいつも天気に恵まれるようだよ。
自転車を組み立て、コンビニで水と食料を買い込んで、さあ出発だ。クマ君に出会わないことを祈っていつものように鈴も付けたよ。冬眠に備えて、クマ君たちはドングリを探し回っていることだろう。
青梅街道だよ。前方に見えるのは氷川大橋だね。
天気がいいとペダルも軽く感じるよ。
これは南氷川橋だ。山はそろそろ紅葉が始まっているよ。本当にいい天気だなあ。嬉しいなあ。
青梅街道をすこし走ると、弁天橋手前の左手に鋸山林道の入り口があるんだ。ここからいよいよ急勾配が始まるよ。
ネットで調べたら、11月5日から12月13日まで通行止めと出ていたけれど、同じことが書いてある看板が立っていたよ。どうしよう。
…自転車なら通れるだろう。行ける所まで行ってみようかね、この際。
鋸山林道は道が荒れている上に、勾配が恐ろしくきついということで評判らしいね。みみ爺の歳で大ダワまで上りきることができるだろうか。まあ、のんびり休み休み行くことにしよう。
水の音がするよ。堰堤だ。水量が多くて迫力がある。水の落ちている風景に、みみ爺は不思議と心を惹かれるんだ。
空気が澄んでいて冷たい。森の匂いがする。空気がおいしいというのはこのことだよ。雨上がりのせいかね。路面もなんとなくしっとりとしている。
杉木立を通して大沢の水音が聞こえてくる。谷を下る水の音は心地いいなあ。
しっとりと濡れた杉の落ち葉の急勾配を上って行くよ。とにかく空気がおいしい。ひんやりとした山の空気が、肺の隅々まで沁み渡ってくるようだ。
さすが鋸山林道、上っても上っても上り坂だよ。下るということが全くない。大ダワまで10%前後の勾配が延々と続くんだ。麓から6キロほどこの急勾配だ。…上りきることができるのかなあ。ギヤーはとっくに一番軽いギヤーだよ。もうこれ以上軽くはならない。
ほんとに急勾配がずっと続くよ。すごいなあ。だいぶ高度が上がってきたね。それにしても空には雲の姿が見当たらないね。真っ青だよ。気持ちがほんとに晴れるねえ。
奥多摩の街が見えるよ。遠くの山がきれいだなあ。
たった今たどってきた道が杉木立の下に見えるよ。
山がきれいだなあ。天気も最高だよ。
どんどん上るよ。
夏じゃないから涼しいなあ。冷たい空気が気持ちいいよ。
ところで、ハブをTiagraに変えたんだ。ベアリングがステンレス製というのが気に入ってさ。ほんとうは105がほしいところだったけれどね。Tiagraでも玉当たりをちょっとだけ緩めてやったら、すごく滑らかに回るようになって満足してるんだ。値段も安かったしね。
今までのハブはかなり古いもので、よくわからないけれどたぶん安物だろうね。
ハブを変えたら走行音が明らかに変化したよ。それまではシューというかサァーというか、すこしざらついた音がしていたけれど、それがヒューという音に変わったんだよ。まるで風を切るような音だよ。ステンレスベアリングのせいかね。ちょっと感動したね。気のせいかペダルも軽くなったよ。
今日はまたペダルがさらに軽い。天気がいいせいかね。天気がいいとペダルも心も軽い。
リアディレーラーも変えたんだ。8スピードのスプロケットに9スピード用のディオーレのRD-M591だよ。変速はとてもスムーズだ。
それはともかく、きれいだなあ、山の景色は。空気が冷たいな。景色に見とれていつまでも休んでいると寒くなるよ。
まだまだ急勾配は続くぞ。頑張ろう。よいしょ、よいしょ。落ち葉がすごいなあ。落ち葉の下に隠れた石ころに気をつけよう。こんなところでパンクでもしたらたまらん。それにクマ君がその辺から顔を出しそうだ。クマ君に出会わないことを祈るよ。
山側の壁面はこんなに苔むしている。
苔むした壁が続く。
おや、モノレールだ。林業関係のものかね。乗ってみたいね。スリルがありそうだよ。
山と空がきれいだなあ。
急勾配は止むことがない。ここからはまたかなり急だよ。
左は深い谷だよ。怖くて端を走れない。向こうの山の斜面を右の方から左へ上って行くガードレールがかすかに見えるよ。あの坂を上るんだな。すごい急勾配だなあ。
山はいいなあ。すばらしい眺めだなあ。美しい景色に出会うと、日本っていいなあって思うね。
あそこを上るんだね。
小さな沢だ。大沢の源流かね。
白いガードレールが遠く下の方に見えるよ。今あそこを上ってきたんだ。
ずいぶん急な上りだなあ。ここはさっき下から見えていた坂だね。この急勾配はいつまで続くのかねえ。もっとも景色がいいから頑張れるけどね。
舗装が荒れているよ。これはまだいい方だ。それにしてもきつい勾配だよ。
右から上ってきて、左へ上って行くんだ。
紅葉がきれいだよ。まだ始まったばかりなんだろうけど、日を浴びてとてもきれいだ。日差しがまぶしい。晴れていてよかったよ。
昭島市がこの辺りの植林をしたんだ。
落ち葉が積もっているよ。タイヤの下でサクサク音がする。これもまたいい。しかしところどころずいぶん道が荒れているよ。評判通りだ。舗装路とは思えない。まるでダートだ。
林道の定番、落石注意の標識だ。
こちらを上ってきて、
こちらへ上って行く。
おっと、また落石注意だ。今日はヘルメットをかぶってないから、石ころが落ちてきたら痛いだろうね。痛いで済めばいいけど。
うわあ~っ、きれいだなあ。きつい上りだなあ。よし、引き足を使おう。よいしょ、よいしょ。これが正しい引き足かどうかは知らないけど、足の甲でトウクリップを引っ張り上げるんだ。少し楽に上れるよ。
ずいぶん上ってきたなあ。絶景だなあ。いいなあ。
もうすぐだ。
見えてきた。
やっと着いたよ。大ダワ、標高994メートルだ。
きつかったなあ。でも、とうとう急勾配の鋸山林道のピークを上りきることができたよ。クマと急勾配と荒れた路面を恐れて、ずっと迷っていたけれど来てよかった。64歳のみみ爺でも上ることができた。休み休みだけどね。それでも嬉しいなあ。時間さえかければ越えられない峠なんて無いのかもしれないよ。
大ダワは広場になっていて、きれいなトイレがあるよ。
山歩きの青年に写してもらったんだ。
背中の汗が冷えてきて寒いので、道の真ん中の日差しの中で早いお昼にしたよ。今日は時間に余裕があるので、コーヒーもゆっくり楽しむことができた。いつもより美味しかったよ。
さあ、武蔵五日市まで長い下りだ。嬉しいなあ。
おっと、落ち葉の中は石ころだ。ゆっくり下ろう。急勾配の下り坂でブレーキから手を離すとたちまちものすごいスピードになってしまうよ。危ない、危ない。路面もかなり荒れている。転倒でもしたらたいへんだ、ヘルメットをかぶってないんだからね。
いいなあ。絶景が続くよ~。
こんな景色の中を走れるなんて幸せだなあ。生きててよかったなあ。
深い谷だよ。落ちたら死んじゃうよ。
下ってしまうのがもったいないね。ゆっくり下ろう。
景色がよすぎて、何枚写真を撮っても撮りきれないよ。
下ってきた道だよ。
山が紅葉してるよ。これからもっともっと紅葉が進むんだろうな。
落ち葉と日差しの中を下って行くよ。
奥多摩側も急勾配だったが、五日市側もかなりの勾配だよ。
路面はこんな感じだ。
山の斜面にちらほら鮮やかな紅葉が。
下り坂もこんな感じだ。
ほんとに山はいいなあ。
見事な杉だ。
山深い感じがするねえ。下りの急カーブだ。ブレーキから手が離せない。両手が疲れて痛くなってきたよ。
赤井沢の堰堤だ。水の落ちているところに来るとつい立ち止まりたくなるのは何故だろね。水の音はいいなあ。流れ落ちる水の姿はいいなあ。
沢に沿って下って行くよ、流れの音に包まれながら。
小さな滝だ。小さくてもきれいだ。
道が立体的に下って行くよ。なんだか楽しいね。
落ち葉の下り坂。右下は赤井沢。いい道だなあ。静かだなあ。
沢がステキだ。
山からしみ出た水が路面を濡らしている。滑らないように気を付けようかね。
見事に紅葉してるよ。真赤だ。
鋸山林道の五日市側の入口だ。
最急勾配12%って書いてあるけど、ほんとにそんなもんかね。もっときついところがあったような気がするけどなあ。ほんとかなあ。
神戸岩(かのといわ)が見えてきたよ。
神戸隧道の奥多摩側の入口だよ。いい雰囲気の隧道だ。心霊トンネルという噂もあるらしい。
さあ、隧道に入るよ。中は真っ暗だ。出口が見えないよ。ちょっと怖いね。ライトを付けよう。路面の状態も悪いし、歩いて通るにこしたことはないね。
途中で曲がっているから出口が見えなかったんだね。出口が見えてきてホッとしたよ。
足下が濡れている。天井からも絶えず水が滴り落ちているよ。
うわっ、冷たい。首筋にも落ちてきた!
やっと出口だ。
五日市側の入口だ。神戸隧道の字が見える。
隧道を出てすぐの橋だよ。戸岩橋というんだ。古びた感じと苔のつき具合がいいなあ。
こちら側の渓谷の様子だ。木の橋や鉄梯子があるよ。ちょっと行ってみよう。木の橋は濡れていて滑りそうだよ。お~こわっ。
すぐ近くを落ちる水は迫力があるよ。音もすごい。
鎖を伝って岩と岩の間のトンネルをくぐり、向こう側まで行けるようになっているんだ。途中まで行ってみよう。
おおっ、見上げると迫力満点の巨大な岩壁が青空にそそり立っているよ。
この神戸岩は東京都の天然記念物に指定されているよ。大昔の地殻変動で二つに割れたという高さ100メートル、幅140メートルの絶壁だ。その割れた岩と岩の間に渓谷ができたというわけだね。
さて、また沢に沿って下って行くよ。この沢は神戸川だ。道は走りやすくなったね。
こんな橋があったよ。これはこれでいいね。旅先では目に映るもの全てがよく見えるもんだよ。
神戸の集落だ。
午後2時ごろなのに夕暮れのようになってきたよ。秋の日は暮れるのが速いからなあ。
もうすぐ都道205号だよ。道がずいぶん広くなったね、日差しも傾いてきた。
ここから都道205号だ。右へ行くと風張林道の方だよ。
北秋川に沿って下って行くよ。車は少ない。日暮れが近い静かなひと時だ。
中里橋からの眺めだ。北秋川のきれいな流れに臨む家がすごい。下から数えたら何層になるだろう。
檜原村の集落だ。檜原村と聞くと、みみ爺はホッとするようなとても懐かしい響きを感じるんだ。何故だろ。
とうげん橋の上から見る北秋川の眺めだ。紅葉が進んでいるよ。
払沢の滝(ほっさわのたき)入口バス停横にあるお地蔵さんだ。(ピンボケ)
時間が早いので滝を見に行くことにしたよ。この橋を渡って行くんだね。
狭い山道を上って行く。自転車は降りたほうがいいね。歩行者がいるからね。
これより先は自転車を押して行くのは無理だ。歩いても、ここから滝までは目と鼻の距離だよ。
これが払沢の滝なんだ。水量もあり、なかなかいい滝だね。4つの段からなっていて、合わせると落差60メートル。もっとも、上の方は木々に覆われていて全容は見渡せないけど、日本の滝百選の一つにもなっているらしいよ。
ますます日が傾いていくよ。なんとなく心細くなってくる時間帯だ。
檜原街道の静かな風景だ。
街道沿いのトイレだよ。きれいなトイレだ。もちろん利用したよ。
きれいな渓谷だなあ。紅葉もいい。
檜原街道からそれて裏道を行くことにしようか。秋川と並行して北側に続く道だよ。ここから入るんだね。
ガードレールもない急な下りだ。ゆっくり走ろう。
秋川の豊かな水面が下に見える。水の色がきれいな優しい色だよ。
こんな小さなお地蔵さんがあったよ。日本っていいなあって、わけもなく思ったりする。そういえば、さっき山の景色にみとれていたときも、そんなふうに思ったなあ。ようするにみみ爺は日本の風土や文化が好きなのさ。
この吊り橋を渡って、対岸に回るんだね。
吊り橋の下の秋川だよ。
これは帆掛け舟だね。
街道は車が多いけど、こちらはほとんど車に出会わない。のんびり走れるよ。
しかし、けっこうきついアップダウンがいくつもあるんだ。
製材所だね。檜原村らしいね。表の街道と違って、生活のにおいがしてホッとするんだよ、裏道というのは。
カラフルなトーテンポールだね。
また上り坂だ。
いい眺めだなあ。なぜか心が静かになってくる風景だよ。
そしてまた上りだ。今日は距離を走ってないから余裕がある。がつがつ走るよりはるかに旅を楽しむことができたよ。
さあ、駅は近い。日暮れも近い。
今日は一日中、いいなあ、きれいだなあばかり繰り返していたよ。他に言葉が見つからないほど、本当によかったんだよ、鋸山林道の旅は。上り勾配は評判通りきつかったけれど、その何倍もよかったよ、山も道も空気も空も。
旅がまた一つ終わるよ。しかし、まだまだ終わらせないぞ、みみ爺の旅は。くたばってたまるか。次はどこへ行こう。
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