Randonneur旅日記

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福満寺へ行ってみたよ              2018年8月30日 木曜日

2018-09-02 11:50:17 | サイクリング・自転車旅
 一時涼しい空気に包まれ、秋の気配を感じたけれど、ふたたび暑さが戻ってきたよ。しかし、7月から 8月半ばにかけての殺人的な猛暑ではない。熱中症のニュースも少なくなってきた。
 先日、弘誓院という寺を見つけて気をよくしたので、今日は福満寺という、手賀沼西南岸の台地に囲まれた天台宗のお寺を訪ねてみようと思ったんだ。
 大津川の、手賀沼に近い二子橋のところから行く。



 空にはうっとうしい雲がかかっている。蒸し暑い。



 この道を上っていくと台地の上に出るよ。民家や畑が普通に見られる高台だ。



 そうした畑のはずれ、こんもりと茂った樹木の根方に「車の前五輪塔」というのがあったんだ。



 「車の前」とは、平安時代、一時この地を支配した平将門の側室の名前だという。
 この地域には平将門ゆかりの史跡などが多い。歴史に疎いみみ爺はもちろんよくは知らないけれど、平将門は他の国司たちと異なり厳しい税の取立てもせず、農民たちにも人気があったらしい。将門の乱は、そもそも地方の状況を無視した貴族政治への反抗でもあったという。今も残る将門伝説や史跡の数々は、民衆の人気が彼に集まっていたことを物語っているのだろうね。







 車の前五輪塔からさほど遠くないところに、今日の目的の福満寺はあった。



 教永山福満寺というんだね。福満寺は奈良時代の創建と伝えられる古刹だ。
 時代を思わせる深みのある落ち着いた感じの山門だ。いや、鐘楼門というのかな。二階が鐘楼になっている。「大井の晩鐘」とも呼ばれているそうだ。





 門の前には5体の如意輪観音像があるよ。ここでも念仏講が広く信仰されていたんだね。





 楼門を抜け、急な坂を下っていく。



 小さなお堂がたくさん並んでいるよ。





 六地蔵だね。







 六地蔵の両脇には、上部に観音坐像の刻まれた古い燈籠(?)が立っている。





 この寺へ来て、みみ爺が一番目をみはったのは、境内の山の斜面に所狭しと並んでいる小さなお堂の数々だよ。これだけたくさん並ぶと実に壮観だ。









 准四国八十八ヶ所のお堂なんだね。だからお堂は88あるんだ。



 境内にはほかに馬頭観音堂や太子堂、それに金比羅大権現などもあるよ。





 また、みみじいは知らないが、この地では有名人だったらしい日暮玄蕃の墓があった。
 なんでも、日暮玄蕃とは、水戸街道の小金宿(松戸市)に水戸家の本陣・水戸御殿があり、そこを世襲で管理していた人物だそうだ。



 観音堂だね。こちらには聖観音菩薩像が安置されているという。幾多の火難を逃れたことから「火防観音」とも言われているそうだよ。見てみたいなあ。



 観音堂の回廊左手には、こんな仏像が4体。



 小さな鳥居と朱色の欄干の太鼓橋。



 弁天池と弁財天。





 これが福満寺の本堂だね。堂々としているよ。





 境内にはまたこんな霊石があった。



 竹林に囲まれた、とても静かな福満寺だったよ。来てよかったね。





 手賀沼の暑い自転車道をいつものように走って家に帰って行く。





 まだ厳しい残暑の中、早くも稲刈りが始まっている。秋も近い。

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手賀沼、つかの間の秋の気配          2018年8月19日 日曜日

2018-08-24 08:05:13 | サイクリング・自転車旅
 殺人的な猛暑が一段落したよ。久しぶりに涼しい空気の中、手賀沼へ向かった。ペダルが軽い。


 
 大津川沿いの土手道から手賀沼の自転車道へ出たが、少し走ると通行止めになってしまったんだ。なんでも、トライアスロンの大会を行っている最中だという。手賀曙橋まで通ることができないそうだ。仕方なく、自転車道と平行に走る一般道を行くことにしたよ。
 「満天の湯」を過ぎてしばらく行ったところから南側の丘陵地帯へ入っていったんだ。

 不意に大きな銀杏の木が目の前に現れたよ。



 ここは柳戸観音谷にある弘誓院福満寺という、江戸時代初期建立の真言宗の古刹だ。下総観音霊場33番の第33番札所になっている。





 入り口にある手水鉢は、今から250年以上も前、1765年に商人たちに寄贈されたものだそうだ。それが今も現役で使われている。真っ白いタオルがかけられているのも印象的だ。



 赤い太鼓橋と弁天池。



 そして弁財天だよ。



 これは足の指先まできれいに彫られた丸彫りの如意輪観音像だ。



 地蔵堂だね。そして中には延命地蔵尊が祀られているよ。





 地蔵堂の隣には不動明王。



 本堂手前右手の聖観音像。



 ちなみに、この寺のご本尊は木彫りの聖観音坐像で、60年にたった一度の御開帳という秘仏なのだそうだよ。



 本堂正面の階段を上がった回廊の右手に、朽ちかけたような木彫りの仏像があった。どういった仏像なのかよくわからないが、なんとなくかわいらしい。



 境内にそびえる巨大な2本の銀杏は、いずれも樹齢500年以上で、幹まわりが4メートルを超えている。柏市指定の文化財(天然記念物)となっているそうだ。
 本堂南側のものが雄樹だよ。



 西側のものが雌樹だ。



 雌樹には乳柱が発生していて、母乳の少ない婦人がこれを削り煎じて飲むと乳に恵まれるという言い伝えがあるそうだ。



 鐘楼はこの石段の上の高台にあった。





 思いがけなく立派な寺に出会って気分がよくなったよ。
 県道282号を渡り、この細い道を下る。



 金色の稲穂が広がる。



 秋の気配を感じさせる空の色と雲だ。
 このまま涼しくなってくれればいいんだけれど、また暑さが戻ってくるらしいよ。

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激暑の手賀沼…みみ爺、夏の一日        2018年7月18日 水曜日

2018-07-21 07:30:14 | サイクリング・自転車旅
 暑いねえ。高い山に登ればいくらか涼しいんだがね。
 房総半島まで行けば山はあるが、標高300メートル~400メートルくらいの低い山ばかりだ。もともと千葉県には高い山がないんだ。
 手賀沼までは家から往復50数キロ。普段の足慣らしで自転車に乗るには、みみ爺には手ごろな距離だよ。
 しかし、暑いよ。水辺だけど、まったく涼しくない。猛暑日だというが、この暑さは激暑と言ったほうがぴったりだよ。





 自転車専用道にもほとんど自転車は走っていないよ。ペダルを濃いでも、追い風なのか涼しくない。



 群生する蓮の中に、一輪だけ咲いている花を見つけたよ。花の色だけは涼しげでホッとする。





 道端のカンナの花の色は暑苦しい。
 逃げ水の中を車が走ってくる。



 体中が汗でびしょびしょだ。
 ペットボトル2本ではとても足りない。
 家に戻ると、熱中症のなりかかりか、足が攣った。
 ちなみに、熱中症の症状で病院に搬送された人は、今日一日全国で2000
人を超えたそうだよ。先週1週間では約10000人が搬送されているという。
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二本木峠、粥仁田峠、そして牛さんに出会った  2018年6月22日 金曜日

2018-06-27 12:38:36 | サイクリング・自転車旅
 梅雨の晴れ間の貴重な一日、昨夜あわただしく支度をして、今朝早く出てきた。
 梅雨の晴れ間の空は、晴れと言ってもこのあいだの堂平山の山頂の空のような青さはない。薄く刷いたような雲が広がっているよ。




 東武東上線の小川町を出発してゆるい上り坂を上っていくと、道はそのまま石の鳥居の下を通って続いているよ。郷社八幡神社の参道になっているんだね。





 神社を過ぎると、次は、小さな古墳の前に出たよ。案内板には穴八幡古墳と書いてある。誰が埋葬されたのかは不明だ。
 石段を上がって入り口を覗いて見たが、鉄の格子で塞がれていたよ。







 車がほとんど通らない道を選んでいくよ。静かな朝だよ。





 県道11号に出ても車はあまり走っていない。





 県道11号からの眺めだよ。山がきれいだ。町並みが静かだ。





 いったん県道を離れ、“和紙の里”のほうへ向かってみた。



 平成28年にオープンしたばかりの、まだ新しい「道の駅 和紙の里ひがしちちぶ」だ。



 バスの待合所がすごい造りだ。



 そのまま槻川の右岸の道を進んでいくよ。空がだいぶ青くなってきたね。



 杉並木の木洩れ日の道だ。いいねえ。



 向堀という小さな集落を抜け、さらに進む。この先でふたたび県道へ出られるのかね。ちょっと心配だね。





 おや、ここから行けそうだよ。



 この橋を渡るのかね。怖いね。もちろん自転車からは降りて渡るよ。それでも怖い。



 川はこんな感じだ。



 渡った先には、花が供えられた二十二夜塔が立っていたよ。



 落合橋を渡り、槻川に沿ってさらに県道11号を行く。





 槻川を渡り、いよいよ林道二本木峠線へ。



 ……ところがどうも様子が変なんだ。





 いつまで上っても林道っぽくならないんだよ???



 あれっ?! 県道361号だって!



 林道二本木峠線への入り口を通り過ぎて、一本先の橋を渡ってしまったんだ。
 ちょっと悔しいが、もうだいぶ上ってきてしまったので、そのまま県道361号を行くことにしたよ。車もほとんど来ないし、まあいいか。



 それにしてもこの県道の斜度は半端じゃないよ。距離4キロ以上、ほぼ10%の勾配が続くんだ。こんな感じの勾配がずっと続くんだよ。





 だいぶ上ってきたね。日差しはかなり暑い。いつものように汗が目にしみるよ。





 やっと上りきったね。山の上からの景色はやっぱりいいなあ。遠くに光って見えるのは西武ドームだろうか。



 “ふれあい牧場”のミルクハウスはしまっているよ。平日で観光客がほとんどいないからだろうね。ソフトクリームを食べたかったんだが残念だ。



 ゲートは開いているよ。入ってみよう。
 ヤギさんたちがいるよ。



 おや、仲がいいね。夫婦だろうか、恋人同士だろうか。(この場合恋ヤギ同士というのかな)見ているだけでホッコリするね。



 今日は本来、二本木峠を目指していたんだから、これから二本木峠へ向かうよ。
 上りきった稜線伝いだからきつい上り坂はほとんどないよ。





 峠には夏のような日差しが降り注いでいる。しかし木陰に入ると、標高のおかげで涼しい。



 タニタのインスタント味噌汁で、お昼のおにぎりを食べる。この味噌汁は結構おいしいよ。



 食事のあとはコーヒーだ。久しぶりの山コーヒーだね。今日は時間に余裕があるのでのんびりできるよ。



 至福の時間だね。



 もともとはこの道を上ってくるつもりだったんだよ。ちょっと惜しいことをした。が、また来ればいいさ。



 道を戻って、“モーモーハウス”へ立ち寄る。営業はしていないようだが、扉は開いていて自由に中へ入ることができる。
 自動販売機で牛乳を買って飲んだ。よく冷えていておいしい。



 テラスからの展望は最高だよ。





 さて、粥仁田峠へ向かうよ。こちらも稜線伝いでほとんど上りはない。



 途中の景色だよ。あんなに高い山の上にも集落があるよ。





 粥仁田峠までは下り坂だね。





 少し上り返すとあっけなく峠に着いたよ。





 峠には粥仁田地蔵尊があったよ。こんな淋しい山の中の峠なのに、お地蔵様の前には瑞々しいきれいな花が供えられている。





 “天空のポピー”のあるふれあい牧場の道のほうが景色がよいのだろうが、みみ爺はあえてマイナーなこちらの牧場道路を選んだ。
 こちらも牧場の中を抜けていくのだが、林道のように狭い道には、車はまったくこない。





 下のほうに牛さんたちが見えるよ。



 さらに道を下っていく。



 自転車を止めると、牛さんたちが挨拶に来てくれたよ。なんだかうれしい。
 牛の目はきれいだなあ。邪悪な心を一切持たない目だ。この牛たちは、人間に乳を搾り取られ、肉にされて食べられてしまう。自分も含め、人間というのはなんと業の深い残酷な生き物だろうね。南無阿弥陀仏。念仏を唱えれば地獄に落ちないですむかな。親鸞が言ってた。信じて念仏すれば、どんな極悪人でも救われると。







 道の舗装が切れて、ダートになったよ。林道みたいでいいねえ。



 しかしダートの区間はそう長くはなかった。



 彼方に武甲山と秩父の町が見えるよ。





 静かな牧場道を下っていく。






 これから向かう曽根坂の山村集落だろうか。素晴らしい景色だ。



 だいぶ下ってきたよ。空気がなんとなく暑くなって来たね。山の上は涼しかったけれど。





 長閑な景色だよ。





 県道82号を横切り、ふたたび上り坂だ。



 県道を隔てた向こうに、粥仁田峠から下ってきた道が見えるよ。





 この道は林道雨乞曽根坂線に合流するはずだ。距離は1キロもないのだが、勾配がとんでもなく急だよ。平均斜度12%ほどだが、20%を超えるところもあるんだよ。



 はじめのうちは、よいしょよいしょと頑張っていたけれど…。
 ああ、もうペダルをこぐのがいやになっちゃったよ。自転車を押すのも辛い。







 この坂を上ってきたんだ。
 向こうに見えるのは、高原牧場のあった山並みだよ。



 曽根坂峠に続く雨乞曽根坂林道だ。林道はやっぱり涼しい。しかも下りだ。





 坂を下った先の集落の中にある峠から、瑞岩寺の方へ下っていくよ。この道も林道っぽいが、林道なのかどうなのかよくわからない。



 一般道に出ると、武甲山が迫ってきた。武甲山を見ると秩父に下りて来たという感じがする。



 県道11号を少し進む。車が少ないね。



 県道82号の横瀬川に架かる高篠橋だよ。



 橋の上からの川の様子だ。



 県道を離れ、常泉寺の方へ向かう。





 これが秩父観音霊場の札所三番・常泉寺なんだね。
 去年の10月に文殊峠を走った帰りに近くの金昌寺へは寄ったが、時間の都合でこちらには寄らなかった。それでとても気になっていたんだ。



 本堂の中には金色の薬師如来像が祀られている。



 蓮池と文殊堂だ。



 文殊堂の中の文殊菩薩像だよ。



 文殊堂脇の六地蔵。



 六地蔵の横に並ぶ石塔と石仏。
 左端の三角にとがった石塔は不睡石という眼病平癒に効能があるという伝説の石だ。



 そして立派な観音堂だよ。こちらには聖観音立像が収められているそうだ。









 金昌寺へ向かう。金昌寺にはもう一度見ておきたい観音像があるんだ。
 横瀬川を渡るこの橋は「ふるさと歩道橋」というそうだ。こんな小さな橋を自転車で渡るのはちょっとワクワクする。



 橋の上からの川の景色だよ。苔むした岩の間を涼しげに水が流れている。





 見覚えのある金昌寺の山門だ。



 境内に一歩足を踏み入れると、たくさんの石仏たちが所狭しと並んだ独特の雰囲気に包まれる。



 みみ爺は早足で石段を昇る。
 現在は本堂となっている観音堂はもうすぐだ。
 観音堂の前まで来て、みみ爺は思わず急ぎ足の足を緩めた。先に観音像の前で祈っている人を見つけたからだよ。ほかには誰もいない。静まり返っている。
 その女性は、正面の階段を上がった回廊の右手の、みみ爺がもう一度見たいと思っていた観音像の前で、手を合わせじっと祈り続けていたんだ。その姿を目にしたときみみ爺は、これは邪魔をしてはいけないと思った。みみ爺はただその観音像を一度拝み、写真を撮らせていただきたいだけだったからね。
 みみ爺は、女性が祈るのを終え立ち去るまでの間、観音堂の周囲に立ち並ぶ石仏たちを所在無く一つ一つ眺めて時間をつぶしていた。
 ときどき回廊に立つ女性の姿を振り返ってみたが、その女性はいつまでも同じように不動の姿勢で祈り続けていたんだ。
 何をそんなに祈ることがあるのだろう。みみ爺はそう思いながらも女性が立ち去るのを待った。みみ爺がここへ来てから、もうかれこれ5分以上は経過しているよ。
 それからしばらくしてふたたび振り返ったとき、女性はようやくそれまで祈り続けていた観音像の前に深々とお辞儀をして、足元のバッグを手に取り、中から白いハンカチを取り出して目頭に押し当てたんだ。みみ爺はなぜかドキッとして目を見張った。女性は祈りながら泣いていたのだ。
 女性は静かに階段を下りると、下に立っていたみみ爺に小さく無言で頭を下げて立ち去っていった。女性は意外と若かった。30前後だったようだよ。
 みみ爺はなんだか複雑な気持ちのまま階段を上り、もう一度見たいと思っていたその観音像の前で手を合わせ、写真を撮らせていただいた。女性が長いこと祈っていたその観音像、金昌寺の慈母観音だよ。





 みみ爺は、心の中に何か重い鉄の玉でも転がり込んだような気持ちだった。女性はあれほど長い時間、涙を流しながら一体何を祈り何を願っていたんだろう。きっと何か複雑な深い事情を抱えていたのだろう。そんな思いがずっと頭の隅に引っかかったまま、一日の旅の終わりの、夕方の穏やかな風景の中を西武秩父駅に向かってのろのろとペダルをこいだ。



 そんなみみ爺の目の前には、巨大な武甲山が立ちはだかっている。戦国時代の武将のように。なんだか、「お前はのんきだ」とでも言っているようだったよ。

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奥武蔵の林道を走ってきたよ…みみ爺一人旅   2018年6月3日 日曜日

2018-06-07 11:25:21 | サイクリング・自転車旅
 今日は朝からいい天気だよ。今週中には梅雨入り宣言が出されるかもしれない。だからこの天気は貴重だ。
 横瀬に着いたのは8時10分だ。いつものように4時に起きて家を出てきたんだが、何しろ電車で2時間半もかかるからね。
 自転車を組んでいると、これから武甲山に登るという男性が熱心にみみ爺の自転車を見ていた。
「こんな正統派のランドナーで輪行しているなんて…」
「そんなに高級な自転車ではないですよ」
「きれいに乗られているんですね。傷がほとんどついていませんから。輪行が上手ですね」
「暇があると磨いていますから」
「ピカールで磨くんですよね。ガードがピカピカしています」
 自転車のことをよく知っている人だね。
「私も自転車に乗っていたんですが、今は山歩きばかりです」
「そういう人多いですね。自転車が好きな人はけっこう山歩きが好きだという…」
「写真撮ってもいいですか」
 男性は組み上がったみみ爺の自転車を何枚かスマートホンで映していた。そんなに高い自転車ではないので、なんとなく申し訳ない思いだったよ。

<横瀬→林道丸山線→堂平山天文台→剣ヶ峰七重線→赤木慈光線→雲河原線→雀川上雲線→小川町>



 武甲山の足元から出発したんだ。真っ青な空に武甲山が大迫力で迫ってくるよ。武甲山はいつ見ても力強い姿で堂々としている。



 国道299号沿いにあるコンビニで水とおにぎりを仕入れ、林道の起点へ向かう。
 途中、法長寺という寺の前を通ったんだ。ちょっとのぞいて見たよ。



 札所7番。大きな本堂の建物だね。秩父札所では最大だそうだよ。別名牛伏堂と呼ばれているという。そういえば本堂に向かって左手に小さく伏した牛の石像が写っているよ。



 境内には、豊川稲荷を祀る社がある。



 さあ、いよいよここから林道丸山線に入るよ。どんな林道だろうね。距離およそ11キロ。上りきれるかな。



 上り始めてすぐ、右手に広々としたきれいな棚田が現れたよ。埼玉県内では最大級の寺坂棚田だ。いつまでも残っていてほしい美しい棚田だよ。だが、近年は農業従事者の高齢化や後継者不足などいろいろな問題を抱えているそうだ。日本中どこも一緒だね。



武甲山を背に広がる棚田の景色はとても素晴らしい。



 メジャーな林道だけあって道幅が広い。時々ロードバイクが追い越していくが、とても静かだよ。やっぱり林道はいいね。



 風がひんやりとしていてとても気持ちがいい。



 山の南斜面を進んでいるので強い日差しが降り注いでいたが、ほとんど暑さは感じられなかったよ。



 道に覆いかぶさるように茂った木々のおかげで、大部分は日陰の中を進むんだ。





 耳元を吹き抜ける涼しい風の音に混じって、ときどき山鶯の澄んだ声が聞こえる。





 谷の向こうが開けた。もうずいぶん上ってきたんだね。



 日陰は続く。快適な林道だよ。





 道の脇に所々で見かけ、祠かと思って気になっていたが、冬場のスリップ防止用の砂が置かれるところだとわかった。どおりで石仏も何も納められていないわけだね。



 この熊の顔はとても恐ろしいよ。こんなのに出っくわしたらどうしようかね。



 臆病者のみみ爺は念のためにさっそく熊除け鈴をつけたよ。これがまたいい音色なんだ。鶯の声と風のそよぎと熊除け鈴の音色が混ざり合ってとてもいい。 (しかし、この日みみ爺のように熊除け鈴をつけているものには一人も出会わなかったよ)



 下りというものがまったくない。ずっと上りっぱなしだよ。この林道の平均勾配は6~7%。一箇所13%くらいのところもあるよ。



 たまに梢越しの眺望も見られるが、ほんとにたまにだ。ほとんど樹木の中を進む林道だよ。





 それでこんなに涼しいんだね。暑い夏には最適な林道だよ。
 林道はやっぱり静かだなあ。
 ここはかなり急勾配だね。



 県民の森入り口だね。このあたりが丸山の山頂に一番近いところだろう。この林道のピーク付近だね。標高は880メートルくらいあるよ。
 やっと下りだ!ここからは、奥武蔵グリーンラインの大野峠まで下りだよ。



 おや、今日は奥武蔵ウルトラマラソンの開催日なんだね。





 後で調べたら、この奥武蔵ウルトラマラソンというのは奥武蔵の林道を78キロも走るかなり過酷なレースだったそうだよ。参加者は男女合わせて1580人もいたそうだ。コースのルートは、みみ爺が自転車で走ったら、一日かかってへとへとになるだろう。

 大野峠に着いたよ。ここで林道丸山線は終点だ。ここからはグリーンラインの奥武蔵1号線だ。



 大野峠から一気に下っていく。



 下りきったところが高篠峠だ。明るい静かな峠だよ。



 さあここからはまた一のぼり。





 そして下る。



 白石峠だ。この峠には派手な衣装のロードバイクの若者たちが日陰で何人も休んでいたよ。 



 みみ爺はここから林道堂平山線を天文台のある山頂まで行くよ。2キロほどの上りだ。



 パラグライダーの滑空場だね。いい景色だよ。





 堂平山の山頂からの展望は最高だ!





 展望の開けた斜面の前、草の上に腰を下ろして休んでいた青年がいたよ。その横にみみ爺も腰を下ろした。
 絶景の展望を前に、
「いい景色ですねえ」
 と、みみ爺。
「ええ、風が気持ちいいです」
 ほんとうにそうだよ。山頂に向かって吹き上げてくる風がとても涼しくて気持ちがいい。
「何時ごろから登り始めたんですか?」
「9時頃です」
「おや、私も9時に横瀬を出発してきたんですが、この時間になってしまいました。ハハハ。ずっと上りで、歩く速度と大して変わらないスピードだったからね。自転車より歩いたほうが楽かもしれない」
 みみ爺はおにぎりを食べ始めた。お腹がすいたよ。
「今週から梅雨に入るというので、今日来てよかったです。梅雨入り前で、こんなにいい天気はもう最後でしょうから」
「ここにこうしていると、もう動くのがいやになっちゃうね。ずっとここにいたい」
 と、みみ爺。
「そうですね。…でも、私はそろそろ行かないと。もう30分も休んでいますから」
 リュックを背負って立ち上がると、
「では気をつけて」
 と、青年は立ち去って行ったよ。礼儀正しい好青年だった。一人で山歩きをして自然を楽しむ青年に、みみ爺はとても好感が持てたよ。きっと純粋で正直な心を持った青年なんだね。
 みみ爺の右隣の斜面には、ロードバイクで上って来た若者が、同じように草の上に腰を下ろして景色を眺めていた。自転車は若者の傍に横たわっている。こちらの若者も一人のようだ。とても静かな様子だよ。静かに景色を味わっている感じだった。
「中学のときから始めました。自転車を始めて3年です」
 高校2年生だという。
「おや!てっきり大学生かと思ったよ」
 受け答えがとてもしっかりしていて驚いた。
「父に今の自転車を買ってもらって、それから始めました。大学に入ったらアルバイトをして、もっといい自転車を買おうと思っているんです」
 若者の傍らに横たわっている自転車を見ると、ダウンチューブに“スペシャライズド”とある。有名なブランドの自転車だ。みみ爺には十分いい自転車に見えるよ。
「ヒルクライムをやっているの?」
 と、きいてみた。
「……」
「どっちかというと、平らな道を走るより、上り坂がすきなんだね」
「はい。景色がいいですから」
 同感だね。青空の下で、素晴らしい展望を目の前に、涼しくて気持ちのいい風を受けていると帰りたくなくなる。こんな気持ちを味わえるから、みみ爺も上り坂を目指すんだよ。





 これが高校2年生の若者だ。



 そして、若者に写してもらったみみ爺だ。この写真では、見た目が若く足も長く見えるが、実際は違うんだ。足も短い69才のお爺ちゃんだよ。



 本当に気持ちがいい。ここは標高876メートルだ。
 飛行機雲がくっきりと見られる。空は真っ青だ。



 そこを発つとき、
「気をつけて行ってください」
 と、みみ爺を送ってくれた。
 登山の青年といい、ロードバイクの高校生といい、実にステキな若者に出会えてよかった。
 
 さっき上って来た道を途中まで戻る。



 いよいよここから、今日一番気になっていた林道だよ。林道剣ヶ峰七重線というらしい。平均7~8%の下り坂のダートだ。場所によっては10%くらいの急な下りもある。





 あまり荒らされていない、いい雰囲気の林道だよ。木漏れ日が素敵で気持ちがいい。



 道は、はじめのうち走りやすいかなと思ったが、すぐにガレた路面に変わったんだ。







 下りだから、たとえダートでもそこそこスピードは出せるかと考えていたが、まるで違っていた。あまりにもガレたダートなので、歩く速度ほどにブレーキでスピードを殺して下って行かないとならなかったよ。







 新緑に包まれた静かな道は最高だが、かなり厳しいダートだ。去年の11月に走った御岳山林道のダートを思い出した。あのときのダートもハードだったが、こちらも負けないくらいハードだよ。三角にとがった石もごろごろ混ざっていて最悪だね。パンクだけはしないでほしいよ。



 おや、舗装されているよ。



 しかし、20~30メートルも進むとまた元のようにダートに変わってしまったんだ。





 でも、ほんとにいい感じの道だよ。こんな道が大好きだ。ランドナーだから走れる道だね。





 そろそろ終点かな。この林道は全線未舗装のダートだったね。オフロードのオートバイに出会わずにすんでよかったよ。きついがとても楽しい下りだった。



 林道栗山七重線との合流地点にこんな休憩所があった。しかし“注意”と書いてあるので読んでみると、“腐食が進んでいるため、腰かけたり寄りかかったりすると危険です”とあったんだ。



 林道栗山七重線を下る。





 栗山七重線が終わったところからは、七重休憩所の前を通って赤木七重線を碑原峠までふたたび上っていくよ。





 ここが碑原峠だね。何もない淋しい峠だよ。



 ここからは、情報があまりなくて気になっていた林道の二つ目だよ。どうやら通行止めにはなっていないので安心した。





 おや、いい景色だ。山がきれいだね。



 はじめのうち道はきれいに舗装されていたが、こちらもすぐに未舗装に変わってしまったよ。





 でも、剣ヶ峰七重線ほどのガレた路面ではないね。砂利も粒が小さく、しまっていて走りやすい。





 ゆるい上りが続く。





 きつい上りではないので楽しい。





 ようやく下りになったよ。



 午後の日差しはまともに受けると暑いよ。日陰に入りたい。



 都幾山山頂の近くまででダートは終わりだ。そこからは真新しい舗装の道になる。下りだ。顔に当たる風が気持ちいい。





 カーブミラーのところで赤木慈光線はおしまいだよ。



 ここからは慈光寺まで、急勾配の上りになるらしい。道が細く、暗い雰囲気が漂ってきたよ。



 急勾配の始まりだ。15%ほどだろうか。場所によっては20%近いところもありそうだよ。きついね。





 みみ爺は途中で諦めて自転車を押すことにした。





 ピークを超えたようだよ。ああ、よかった。



 とうとう着いた。
 この急な石段の上に慈光寺の観音堂があるんだね。



 長い急な石段で太ももが痛い。やっとのことで上り詰めたよ。



 この観音堂の本尊は千手観音立像の秘仏で、毎年4月に拝観することができるそうだよ。さすが1300年の歴史を持つ名刹、関東最古の山岳寺院だ。時の重さを感じさせる重厚なたたずまいの見事な観音堂だね。





 木陰に石塔が並んでいるよ。



 さあ、勇気を出してこの恐ろしく急で高い石段を引き返そう。躓かないように、手すりにつかまりながらね。



 次は慈光寺の本堂を訪ねてみるよ。ひっそりとした山の中だ。





 石段を登り始めるとすぐ鐘楼があったよ。この梵鐘は銅製で、国指定の重要文化財になっているそうだ。



 さらに登っていくと、静かな山の中の、雰囲気のいい石段の先に古びた山門が現れたよ。





 こちらが阿弥陀堂(本堂)だね。坂東九番札所と書かれてある。



 おや、本堂の右手の奥にもう一つ鐘楼のようなものが見えるよ。こちらの鐘楼が“時の鐘”というんだね。大晦日の夜には都幾川の山々にこの慈光寺の除夜の鐘がろうろうと響き渡るのだろう。そのときは一般の人も鐘を撞かせていただけるらしいよ。
 参道からの夜景も素晴らしいらしい。見てみたいね。



 こちらは開山堂。国指定重要文化財の木造の宝塔が納められているそうだ。







 なんとなく心が晴れ晴れとした気持ちで道を下っていく。ちなみにこの道も林道で、都幾山線というらしい。



 なんだろう。珍しい石塔が並んでいるよ。



 “慈光寺青石塔婆”というんだね。鎌倉時代から室町時代にかけて、秩父産の青石(緑泥片岩)で造られた板碑群だよ。





 都幾川に沿って、のどかな県道172号を東へ下っていく。





 県道を離れ、別所橋から都幾川を眺める。



 林道雲河原線へ向かうんだよ。
 だが、みみ爺の足はもうだいぶ限界に近づいている。走りきれるかね。



 途中、こんな庚申塔があった。



 ここからいよいよ雲河原線だね。がんばろう。



 木々に囲まれた林道だが、標高が低いせいかちょっと暑いね。





 路面は走りやすく、それほどきつい上り坂ではない。なんとかなりそうだよ。





 眺めのいいところで一休み。地元の老人が原付バイクを止めて、一服しながら景色を眺めていたよ。
「いい景色ですね」
「ちょっと霞んでるけどね」
「林道雲河原線とか、雀川上雲線とか、珍しい名前ですね。読み方がいまひとつよくわからなくて」
「地元の者は慣れているけど、そうじゃない者には読みにくいかもしれないね」
「雀川上雲線はこの先ですよね」
「この先を右へ入っていくところがある。雀川ダムへつながっているよ」
「そっちへ行くつもりなんです」



 ここで雲河原線は終わるんだね。



 もうすぐ4時だ。日差しが弱まってきたね。今日は一日いい天気が続いたよ。



 ここから、いよいよ今日最後の林道、雀川上雲線だね。



 いきなり急勾配だ!しかし距離はないはずだよ。





 350~360メートルも進むとあっけなくピークに着いたよ。ここからは雀川ダムまで下り基調のはずだ。よかったね。
 下り最高!



 山々の眺めのいい場所に、売店と休憩所のような建物があったよ。しかし誰もいないね。





 アップダウンはあるが、たいしたことはない。ほとんど下りだよ。





 林道はここまでだ。なんとか走りきれたよ。この雀川上雲線は、距離は短いが走りやすくて明るく、付近の静かな山々の景色も見られるところがあり、いい林道だったね。





 さあ、雀川ダムを見に行こう。また一上りだ。



 大きな砂防ダムだね。



 水は深い緑色をしているよ。なかなか静かでいいね。





 ここは公園になっていて、ダム湖を一回りすることができる。
 しかし、遊歩道は先へいくと未舗装になったよ。砂利道で草が生えている。



 対岸へ回ると石畳に変わった。ここはいい散歩道だね。







 この石の階段は仕方なく自転車を担いで降りてきたたよ。左足の太ももが痛い。



 また階段だよ。やれやれ。



 後は駅へ向かうだけだよ。楽しかったね。でも疲れた。



 八高線沿いの県道30号だ。だいぶ日が傾いてきたね。



 

 八高線の電車には会わなかった。
 県道をそれて横道へ入るよ。こんな道はけっこう好きだ。





 さらに細い路地を行く。



 これは栃本親水公園だ。夕方で人影も少ない。



 この先が東武東上線の小川町駅だ。お疲れさん、みみ爺。



 今日はたくさん林道を走ったね。
 長い上り坂の林道やガレたダートのきつい林道があった。
 堂平山の絶景展望と涼しい風は最高だった。
 歴史のある慈光寺や静かな雀川ダムもよかった。
 とても充実したサイクリングで、本当に楽しい一日だったよ。
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