Randonneur旅日記

おじいちゃんの自転車一人旅
輪行サイクリングと
のんびりポタリング

古い写真が出てきたよ        2013年4月6日 土曜日

2013-04-06 15:11:19 | サイクリング・自転車旅
 クローゼットの中をあさっていたら思いがけなく古い写真が出てきたんだ。47、8年くらい前のものだよ。

              

 当時は今みたいにナビなんてものはなくて、たった1枚の地図を頼りに心細い思いで登った峠のトンネルだ。暗くて長いトンネルだった。トンネルの中は明かりもなく、天井からは絶えず水滴がぽたぽた落ちてきていて、水たまりが連続していたんだ。そしてトンネルを出たときの明るい空を思い出すよ。この写真を見ているとなんだかとても感慨深いものがあるんだ。誰でもこんな峠やトンネルを心の中にひとつくらいは持っているんじゃないかね。そんな気がするよ。
 みみ爺も若いころは、ご多分にもれずいろいろなものを背負っていたさ。悲しさ、苦しさ、孤独、あこがれ。そうした重みをしばしでも忘れたいと思って、きっと一人で旅に出たんだよ。古い写真を見ていると、次から次といろんなことを思い出すねえ。

        

 家のテレビがまだ白黒だった頃、自転車のCMがあったんだ。確かブリジストンのランドナーのCMだったと思う。山道を若い男の乗った自転車がやってくる。フロントバッグをつけた旅姿だ。自転車は次第に近づいてくるとカーブに差し掛かる。そこでカメラは急に自転車の変速機あたりを大きく映し出し、同時にガチャガチャという音と共にリアーの変速機のアームが動く。そして、“にくい男が遠くへ行くよ”なんていうナレーションと共に自転車と男の後ろ姿が遠ざかっていくんだ。確か自転車に乗っていた若い男は千葉真一だったと記憶している。なにしろ古い記憶なので曖昧なんだけどね。みみ爺は、変速機のアームが動きチェーンが移動する場面がたまらなく好きで、食い入るように画面に見入ったんだ。そのころはまだ録画機がなかったからね、CMが始まるとテレビの前に飛んで行ったのさ。自転車に乗った男の一人旅がこれほどカッコイイと思ったことはなかったね。それがみみ爺の、自転車旅へのあこがれの始まりだよ。
 みみ爺の家は決して裕福ではなかったんだ。だから無理を言って買ってもらったのは中古の富士自転車だったよ。それをフロント2段に改造して、キャリア―を付けて旅自転車にしたんだ。
 でもその自転車は大学に入ると共に人に譲ってしまった。それ以来今日まで自転車とは縁がなかったんだ。

          

 初めて一人で自転車旅をしたときの写真だよ。旅先で、とおりすがりの見知らぬ老人に写してもらったんだ。お礼に老人も写してあげて、後でその写真を送ってあげたら、まだ鼻たれ小僧だった自分に対して80近い年配の老人から、とても改まった丁寧なお礼の手紙が届いてびっくりした。みみ爺はこの手紙によって、人に感謝されることがすごくうれしいことだと知ったよ。でも残念ながら、この時ほどに感謝されるようなことを、みみ爺は未だにしてないような気がするよ。
 また旅に出よう、はじめて旅をしたときのような新鮮な気持ちで。大好きな自転車に乗ってさ。
コメント
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