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『花はどこへ行った』

『花はどこへ行った』
Where have all the flowers gone

ベトナム戦争当時、平和への祈りを込めて歌われた
「Where have all flowers gone」
邦題「花はどこへ行った」・

1955年、アメリカのフォークシンガー、ピート・シーガーによって作られた
この曲、ピーター・ポール&マリーや、女優のマレーネ・デートリッヒらに
よって歌われ、その後も静かなる反戦歌として、世界中で愛されている。

マレーネ・デートリッヒのこの歌も、映像を見ると、もちろん胸に迫るもの
があるのだが、私の中ではフィギュア・スケートのカタリーナ・ビットが氷
の上で舞ったときのこの歌が、いつまでも忘れられない。

1984年のサラエボ五輪、1988年カルガリー五輪で金メダルを獲ったカタリーナ・
ビット。優雅で美しく力強い彼女のスケートだけれど、確かカルガリーでのカルメンは、
とりわけ本当~に美しかった記憶がある。

そして、1994年。当時、内戦の戦火に曝されていたサラエボの現状に対して黙祷を
ささげることから始まったリレハンメル五輪。サラエボはその10年前に、ビットが
金メダルを獲った国だ。
すでにプロに転向し、もちろん第一線での戦いは無理、金メダルもウクライナの選
手に決まっていた。彼女はメダルのためではなく、サラエボの平和のために
リレハンメルの銀盤に立ったのだった。
フリーの最後の選手として氷の舞台へ立った彼女の選んだ曲は
「Where have all the flowers gone」。

大きな技があったわけでも、すばらしいジャンプがあったわけでもなかった。
ただただ、あの美しい、悲しい音楽に乗せて、彼女は指先からつま先まで平和の祈
りを込めて演技をした。

真っ赤なコスチュームを着て美しく悲しく舞う彼女の姿と、あのメロディ。
胸がいっぱいになった。会場もシーンとしていたと記憶している。 
結果は7位。
観客席からのブーイング。やがてその声はビットをたたえる拍手に変わり、声援に変わった。

彼女の平和への祈りは、間違いなく世界中に届いたことだろう。と信じたい。

終戦記念日に、平和への祈りを込めて。
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