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『死日記』 桂望実

『死日記』
小学館文庫
桂望実

子供が殺される事件が後をたたない。
特に、すべてを信頼して命をゆだねている親に殺される。
産んでおいて食事を与えない、教育を与えない・・・・。
ニュースを見るたびに、心から思う。どうして???

そんな中読んだこの『死日記』。
児童虐待されている14歳の少年の日記、という形で物語
は進んでいくのだけれど、本の題名とテーマからいって、
ありがちな、救いようのない、重すぎる話だと思っていた。

確かに、あまりに悲しくて重いのだけれど、本書には、
「救い」がたくさんあった。彼をとりまく環境は酷いものだ
ったけど、それを支える友達とその家族、学校の教師、
新聞配達のアルバイト先のおじさん、遠くに住むおばさん、
隣のおばさん・・・・そして何よりも、非行に走るわけでも、
ひねくれて育ったわけでもないこの14歳の少年の純粋さ。

あまりによく出来すぎた子なのではないか?などと思った
のだけれど、本書の最後 「文庫版あとがき」を読んで、
納得した。そして、このあとがきには、涙してしまった。

親は子供を選べないのだから・・・・とよく言われるけれど、
それだけではない、親から逃げることを知らない。
大人は逃げることができる。
逃げる術を知っている。だけど、子供は守ってくれるはず
の親から、一体どこへ逃げればよいのだろうか?

やるせない気持ちは残るけれど、どこか優しい救いの光
の見える本。
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