私が幼いころ、兄は東京の大学に通い、そのままそちらで就職したので、
夏休みには、母と一緒に東京へ遊びに行くのが恒例の行事となっていました。
当時は長野の実家から東京まで、特急列車で5時間ほどかかったため、
往復の電車内が退屈で仕方ありませんでした。
あの時は確か、東京へ向かう電車内だったと記憶しています。
出発から2時間ほどが過ぎ、中間地点である甲府も通過していない
いちばんそわそわしてしまう時間帯です。
母は窓際の席で爆睡中。
子供の頃は乗り物に酔いやすかったので、マンガを読むこともできません。
私はおもむろにハナクソをほじりだし、親指と人差し指でくるくると丸め始めました。
前の席には、見知らぬ男性の整髪料で固めた頭が少しだけ見えています。
「……あそこにハナクソ乗せたい」
そう考えた私は、母を起こさないようにそっと体を伸ばし、
ハナクソを丸め続けている右手を顔の横に構えました。
息を止め、しゅっとハナクソを放ちます。
指にくっついてしまうこともなく、大きな放物線を描いたハナクソは
何も知らない男性の頭に、すとんと乗りました。
その瞬間、「ん?」という感じで頭に手をやる男性。
私はきゅっと体を小さくして、男性の様子をうかがっていました。
やがて、なんでもないと判断した男性は元の状態に戻り、
私はしばらく身を固くしていたものの、だんだん笑いがこみ上げてきて、
ひとりで、くすくすくすくすしていました。
あの時、母の様子は確認しましたが、周りの席のことは考えていなかったので
もし、通路を挟んだ隣の席にいた人が、私のしていることに気づいていたら、
心の中で大爆笑していたんだろうなと思います。
夏休みには、母と一緒に東京へ遊びに行くのが恒例の行事となっていました。
当時は長野の実家から東京まで、特急列車で5時間ほどかかったため、
往復の電車内が退屈で仕方ありませんでした。
あの時は確か、東京へ向かう電車内だったと記憶しています。
出発から2時間ほどが過ぎ、中間地点である甲府も通過していない
いちばんそわそわしてしまう時間帯です。
母は窓際の席で爆睡中。
子供の頃は乗り物に酔いやすかったので、マンガを読むこともできません。
私はおもむろにハナクソをほじりだし、親指と人差し指でくるくると丸め始めました。
前の席には、見知らぬ男性の整髪料で固めた頭が少しだけ見えています。
「……あそこにハナクソ乗せたい」
そう考えた私は、母を起こさないようにそっと体を伸ばし、
ハナクソを丸め続けている右手を顔の横に構えました。
息を止め、しゅっとハナクソを放ちます。
指にくっついてしまうこともなく、大きな放物線を描いたハナクソは
何も知らない男性の頭に、すとんと乗りました。
その瞬間、「ん?」という感じで頭に手をやる男性。
私はきゅっと体を小さくして、男性の様子をうかがっていました。
やがて、なんでもないと判断した男性は元の状態に戻り、
私はしばらく身を固くしていたものの、だんだん笑いがこみ上げてきて、
ひとりで、くすくすくすくすしていました。
あの時、母の様子は確認しましたが、周りの席のことは考えていなかったので
もし、通路を挟んだ隣の席にいた人が、私のしていることに気づいていたら、
心の中で大爆笑していたんだろうなと思います。