リカコの、これは「ゴミのようなブログ」か「ブログのようなゴミ」か

今までの人生は挫折つづきでサボテンのぴょん太さんもベランダで干からびているけど、最近ようやく自分を肯定できてきてるかも…

彼を忘れるために

2021-03-06 01:24:10 | 日記
かつてつきあって、そして別れて、心の奥底にずっとしまって、押さえつけて押さえつけて、なかったことにして忘れようと努めていたあのホルン吹きの彼の話です。

彼のことを思い出しちゃったいきさつについてはこちらをご覧ください↓

2020-09-20 太陽が輝く日はなんと美しいのだろう。
https://blog.goo.ne.jp/pieluszka/e/5fd644aeda8977b0378491fb1e4bf33c


別れるからには私もそれなりに
「無理!もう、ないから!」
と愛想をつかして別れるに至っているわけですから、「やっぱりもう一度どうにかなっちゃいたい」とか未練がましいことは、普段の私なら絶対に思わないはずなんです。

でも、「相手がホルン吹く人」という事実が本当に厄介なもので…。

自分がホルンを大好きなものだから、ホルンを贔屓にしている人にはどうしても採点が甘くなっちゃう。
単純に言うと、100点満点中85点以上くらいで「この人とつきあってもいいかなぁ?」と思うのに、その人がホルン吹きだといきなり5億点あげちゃって、他のマイナスポイントが一切見えなくなっちゃってる。

こんなことになるんだったらもっと色んなホルン吹きと付き合って 免疫つけとくんだったなぁと反省するしかないんですけど、つくづくバカだよね私。


で、何から話そうか。
…とりあえず、現在のこと。

20年以上たつけど、私はまだ彼の電話番号を覚えてた。というか、私の指が覚えていた。
パヴァロッティの映画を観たあと、息のつまるほどの苦しい衝動にかられて、半分放心状態のまま、おそるおそる電話をかけてみて、えっまだ繋がるの?この番号使い続けてるの?と思って我に返りとっさにワンギリしてしまった。つながると思ってなかったから非通知にしてなくて、すぐに彼から着信があったけど、ごめんなさい、ごめんなさい、今さらどの面さげて会えばいいのかわからなくて、スマホを握りしめながら着信が鳴り止むのを祈りながら待った。

そのあとは、Facebook。
じつは、自分が精神的にやられていて寂しいときに昔のカレシたちのことを検索してますます落ち込んだりとかすることがたまに(いや頻繁に、笑)あるんだけど、昔そんな感じに彼のことも検索して、あ、Twitterやってるんだ…、あ、Facebookもやってるんだ…と発見したことがあって、職場の子にFacebookについて教わって、アカウントを作って、おそるおそる覗いてみた。

誰かの投稿をシェアするばかりのタイムライン。
でも、毎日なにかしら投稿やシェアをしていて、なかなかヘビーなアクティブユーザー。
友達は、誰彼かまわず承認しちゃってる感じ。多すぎ。
友達限定の投稿は見られないので断言はできないけど、全くの他人から見て、この人がFacebookを楽しんでやっているようにはあまりみえなかった。
そして、プロフィール。
勤務先は、つきあっていた20数年前と一緒。まだずっとあそこで働き続けてたんだ。
恋愛対象、女性。
交際ステータス、独身。


1週間以上ストーカーのように彼のタイムラインを掘り返して、しかし本当に非モテな感じのアカウントだなーと思いながら、どんなタイミングで彼に何を伝えようか模索した。
いや、最初にかけるひと声は決めていた。つきあっていた当時、電話をかけたときに必ず交わす合言葉が私たちにはあって、それを言ったあとに、昔の非礼を詫びて、それで終わろうと思ってた。
というか、何かコメントして彼からのレスポンスがあればの話だけど…。


そしてある日、あ、この投稿にならコメントつけても大丈夫かな?と思って、その前に家事とか入浴とか済ませて寝るだけになってからゆっくりやろう…なんてスマホをを置いた5分後、なんだかすさまじくバイブが鳴り始めた。えっ?えっ?と画面を開くと、どうやら間違えて私は友達申請ボタンを押してしまっていたらしく、友達承認、ついで私が自分のタイムラインに投稿したものに続々と彼のいいね!がついて、Messengerアプリでメッセージが届いたところだった。


彼「リカコ?リカコだよね?」
彼「久しぶり。」
彼「元気だった?今どこにいるの?」
彼「いま、幸せか?」
彼「突然君を見つけて驚いたよ」
彼「ていうか、なんか返信よこせ」


あ~、えーと、えーと、(←合言葉を言うタイミングを完全に逸してる)

私「お久しぶりです。元気です。幸せにくらしてます。」


彼「幸せなんだ、よかった。連絡もらえて嬉しいよ。」


彼「結婚した?」



私はすぐには返事をかえさない。いつも時間をかけて、ぽつりぽつりと答える。


私「したよ。」
私「ごめんね。」
私「男の子がふたり生まれたよ。」
私「もう小学生だけど。」
私「あなたは?」


彼「俺?俺はずっと独りだよ。あのあと、誰ともつきあわなかった。ずっとホルン吹いてた。」


私「なに、独りって。いつもたくさんの友達に囲まれてたじゃん。その中につきあってくれる女子はいなかったの?」


彼「うーん、そういう関係になるような子は現われなかったなぁ。」
彼「夜とか、ひとりで寂しいなーとか思うときは、君の写真とか見てた。」
彼「初めてキスした時のこと、覚えてるか?」


私「うん。あれは、びっくりしたからね。」


彼「あと、シューマンの演奏会のあとのキス。」


私「もちろん。」


彼「デリカシーないこと言うけどごめんな。俺、ひとりで抜くとき、あの2回のキスを必ず思い出すんだ」


私「え。そこなんだ?私たち、もっとあとになってHなこと散々したよね?」
私「それにあのキスの時って、それ以上のことは何もしなかったよね。」


彼「リカコ超こわがってたからな。でもあのときは、自分の想いが通じて、君も同じ気持ちだったとわかって、本当に嬉しかったんだよ。」



えーと、彼にキスされたとき私は19歳でした。彼はたしか32歳くらい。出会った翌々日くらいに突然キスされて、だって私まだこの人のこと何にも知らないのに!どうしようどうしよう!ってすごく戸惑って泣きそうになってた。

もう、25年も前の話ですよ。25年前のキスを思い出してオナってるって、どうしよう、なんかカワイイ。この人もしかしてものすごくピュアな人なのかもしれない。ちょっと嬉しくなっちゃった。



LINE電話ならぬ、Messenger電話がかかってくる。
でも、でない。

私「ごめんね。電話には出ないよ。里心ついちゃうといけないから。」


彼「里心ってなんだよ。里心ついたから連絡よこしてるんじゃないのか?」
彼「君の声がききたい。」


私「ごめんね。」


彼「写真送ってよ。」


私「だって、もう持ってるでしょ」


彼「今のリカコが見たい。」


私「いやいやいや…、それはやめようよ。私もう40代で、小太りオバサンだよ。それに、自分の写真とかもう20年くらい撮ってないし。」


彼「俺の写真はFacebook漁って散々見たんだろ?すっかりじいさんになってるだろ。いいじゃん、子どもと撮った写真をタイムラインに上げろよ。」


私「いたしません。」


彼「じゃあビデオチャットしよ。」


私「絶対ムリ、ごめん。」
私「私ね、あなたに謝りたくて連絡したの。私たちはきちんととケジメをつけて別れなかったから、あなたは私のことをこんなに長い間引きずることになってしまって、ごめんなさい。」
私「私、あなたと一緒にいるとき、あなたに迷惑をかけつづけた。まだ学生で、まだ全然子どもだったから、あなたが厳しい世界で頑張って仕事してることを理解しきれてなくて、ワガママばかり言ってあなたを困らせた。ほんとごめんなさい。すごく怒ってたよね。あなたの人生に私は全然要らなかった。ジャマにしかならないカノジョなんていない方がいいと思って、私消えたんだ。」
私「でも、うれしい。こんなに長い間私のこと忘れないでいてくれたなんて、うれしかった。」


彼「会おうよ」


私「だめだよ。」


彼「わかってる、コロナだからだろ?コロナ終わったら俺たち会おうよ。」


私「だめだよ。コロナには関係なく、会わないよ。」


彼「さっきからダメしか言わないんだな。じゃあわかった。一緒にホルン吹こう。何がいい?モーツァルト?ワーグナー?退屈な練習曲みたいなのはやめろよな。楽譜持っておいで。」


それから彼のホルン吹いてる動画がたくさん届くようになり、こっちの判断力がどんどん鈍っていく。
ちがうの、ホルンを吹いていない彼は全然カッコよくないの。一般常識なくて、ダサくて、金銭感覚メチャクチャで、気分屋で、抑制心が効かなくて食べ過ぎてブヨブヨの体してるし、良いところがないの。

でも、ヤバい。

陥落してる、私。

完全に相手のペースだ。

もちろん、まだ会ってないし、ビデオチャットもしてない。でも「君が好きだ」「会いたい」というメッセージはこの日から毎日送られてきて、十数年間色恋沙汰とは無縁な生活をおくってきた私にはもうこの状況をどうマネージすればよいのかが全くわからなくなっている。ただただ彼の勢いにおされて、おろおろして、いつの間にか自分もその気になっている。
想像できる。近い将来、ホルンケースをかついで彼に会いに行って、ケースから楽器を出すことなく、彼に抱かれて何時間も過ごす自分の姿が容易に鮮明にイメージできる。
どうしよう。