ぴかりんの頭の中味

主に食べ歩きの記録。北海道室蘭市在住。

【本】へんな虫はすごい虫

2011年03月02日 19時30分12秒 | 読書記録
へんな虫はすごい虫 もう "虫けら" とは呼ばせない!, 安富和男, 講談社ブルーバックス B-1073, 1995年
・不思議な昆虫の生態について紹介する、一編につき2~3ページの短編を計72編収録。虫についての興味深い話は随所に見られるものの、他の文献より "面白話" を寄せ集めてまとめただけというような印象も強く、オリジナリティはあまり感じられない内容です。情報の鮮度という点では今一歩。
・常人なら見向きもしないような小さな虫を、よくこれだけ微細に渡って調べる人間がいたものだと感心させられます。私も子供の頃は虫好きで、"昆虫博士" の異名をとったものですが、年を重ねるとともに虫から遠ざかり、今ではほどんど触ることすらできなくなってしまいました。
・「松本零士作のアニメ映画「1000年女王」にはおよばないが、オーストラリアにすむナルティテルメス・シロアリの女王は成虫になってから100年も生きる。百獣の王・ライオンが30年の寿命しかないことを考えれば、人類の平均寿命をこえるこの100年女王はとても昆虫とは思えない長寿者である。「カゲロウの命」というたとえのように、カゲロウの仲間は成虫になるとわずか一日ではかなく消え去ってしまう。ショウジョウバエの一生はたった二週間、春から夏にかけてのモンシロチョウの一生は約50日、昆虫界の王者の貫禄をもつカブトムシの成虫でさえもっとも長生きして130日というぐあいに、昆虫類は一般に寿命が短い。」p.16 本文の書き出しは寿命の話から。
・「女王は100年もの長いあいだ、命あるかぎり卵を産みつづけるので、一生の産卵総数は50億個にも達するという。これも昆虫界ナンバーワンである。」p.17
・「シロアリはアリと和名が似ているので、アリの仲間と誤解されやすいが、類縁関係は遠い。シロアリは古生代に現れた昆虫でゴキブリに近い。一方、アリの方は中生代の終わりに現れた膜翅目(ハチの仲間)の昆虫で完全変態をする。しかし、いずれも女王を中心にした社会生活を営み、役割分担を整然とおこなっている。まったく違うグループなのに、社会性昆虫として両者ともこれ以上発達しようのないところまで行きついているのは実に興味深い。」p.17
・「ウスバカゲロウの幼虫アリジゴクは2~3年がかりで育つが、そのあいだ肛門は閉じたままで一度も排泄をしない。」p.22 最近この説を覆すような発見を子供がしたとかなんとかでちょっと話題になったような。
・「人々が光源に利用する電気の周波数(サイクル)も、東日本は50ヘルツ(一秒間に50回の波をもつ交流電気)、西日本は60ヘルツという違いがある。糸魚川―静岡構造線によるホタルの地理的隔離とは異質なはずの周波数の境界がほぼ符合しているのは面白い。」p.46
・「これらの行動の引き金になった気象条件の主役は湿度の上昇、ついで気圧の変化などと考えられる。大脳が進化しなかったかわりに感覚の世界に生きる昆虫は湿度感覚も発達している。湿度の受容器は人類などの脊椎動物にはないが、昆虫では触覚上にある微細な毛(感覚子)が湿度を感知するからである。」p.74
・「ミツバチは昆虫類進化の頂点を極めているといってよいだろう。」p.91
・「単為生殖は繁殖効率では有利であるが、両性生殖にくらべて、環境への適応力につながる遺伝的な多様性を伝えてゆく点では不利であり、種族としての寿命を短くする。」p.96
・「ボウフラの語源は「棒振り」から転訛したもので、棒を振るように泳ぐことに由来するが、」p.141
・「蚊に好かれる人とそうでない人がある。その個人差には複数の要因が考えられるが、血液型もその一つだとされている。(中略)吸血した蚊を回収して吸った血液の凝集反応を調べても、O型の血液を吸った蚊が多かった。血液型物質は汗にも含まれているから、蚊は吸血前に血液型を判別しているらしい。未知のO型物質が蚊の嗅覚を刺激して誘引するのであろう。」p.174
・「自然の生態系が存続するかぎり、昆虫たちは根強く栄えてゆくだろう。昆虫は種類数で全動物の70パーセントを占め、その総数は人口の10億倍といわれている。数の上で繁栄を極めているだけではない。昆虫は大脳が進化しなかったかわりに感覚の発達がすばらしく、本書でものべてきたように、ときに、知能があると錯覚させるほどの行動をしたり、人間には不可能な "超能力" を発揮したりする。また、ミツバチ、アリ、シロアリに見られる社会生活は、これ以上は望めないほどの頂点に到達している。もっと高等な動物に見られる「烏合の衆」の集団とは違う整然とした社会構成である。人類が生物進化の頂点を極めているのはいうまでもないが、昆虫は人類の進化とは違うもう一方の頂点に立つ存在といっても過言ではあるまい。」p.185

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