Burning Pavilion Part3

日常のもろもろ

McCartneyⅢの感想

2021-01-28 12:53:30 | 私的ポール・マッカートニー史
発売から1ヶ月ほど経ったのでそろそろ耳馴染みが出たどころか聴き終わった感すらありますが、感想を書いてみたいと思います。 

McCartneyⅢは一言で、小品。ポールのかわいらしさが出てる。 

それもそのはず、ロックダウンの中、娘家族と生活しながら、過去に作ってそのままになっていたモチーフを曲として完成させるために行った作業が最終的にアルバムになったと、そんな感じです。 
肩の力が抜けた時のポールが良いと書物でよく読むわけですが、危機状態にあるポールが緊張感をもって作った方が完成度が高いとも書いてたりして、どっちだ!?という話ですが、McCartneyⅢは前者かと思います。精神的には後者の性質も入ってるかもしれませんが、ちょっとでしょう。 

1人でコツコツ家で作ったといっても、いつも使ってるプロ仕様のスタジオなので荒さはなく、機材の近代化によりショボさは一切ありません。 
音を聴いてるとポールは他のミュージシャンや今流行っている音楽もちゃんと聴いている感じがします。それが良いかと言えばそうも言い切れないですが。 

若干ゴージャスさと、とっ散らかった感のある前作より断然好きです。前作はさらにセンチメンタル過剰な悲しい曲も一定量入っていて(I don't knowは傑作)、好きな曲は2、3曲くらいでしょうか。今作は好きな曲はもっとあります。 

ただ、この好きな曲がいい曲かというと、必ずしもそうでもない。 
私がこの10数年で枯れを許容できるようになったから好きなのかもしれない。Flaming Pieから顕著に現れたポールの枯れは明らかに進行している。それでも今作は光るものが多く感じられました。 

シングル的な扱いのFIND MY WAYは文句なし。WINGSを感じるシンプルながらポップなロック。 
意外と好きなのがLAVATORY LIL。シンプルなロックですがほんとにかっこいい。これもWINGS的であり、BEATLESのSHE'S A WOMANみたいな感じもします。 

このアルバムで最高に好きなのはDEEP DEEP FEELING。 
8分を越える大作ですが、まるで夢から覚めるようにいつの間にか終わり、飽きることなく聴けます。実験的と言えばそれまでですが、こういうポールが聴きたいと思っていたものがここにきて目の前に現れました。 
こういうのを聴こうと思ったら80年以前の作品で感じるしかなかったのですが。 

THE KISS OF VENUSも好きですが、本当の良さがわかるまで、私の名曲フィルターに本当に引っかかってるか見極めにもう少しかかりそうなのでまだ書きませんが、ビートルズ級の曲(ただし超小品の)との印象を受けました。 

そしてアルバムを締め括るWHEN WINTERS COME。 
文句なしの一曲(ただし小品)。 
この曲はFlaming Pie期の録音(なんと25年以上前)。10年前なら大したことない曲だな、おまけだな、などと思ったでしょうが、昨今の枯れ方を思うと、相当芳醇なメロディに感じます。 
アルバムの締めとしてこれほど感動的なものはありません。 
この曲をモチーフにしたアニメ作品は70年代初頭のポール一家と思われる家族が出てきて、今はもういないリンダもこの世界では幼い子供たちと居ます。 
この子供たちも現在では歳をとり、ここに描かれた家族は今は思い出の中、アニメの最後には光の中に消えていくのですが(笑)、切なくも美しく、泣けてきます。 

このアルバムはセンスの良い小品が多いけど、大作もあり、しかしスペクタクルなアレンジではないところが良い、そう思います。 
まだ全貌は見え切れてないですが、1ヶ月聴いていての感想はこんなところです。