ターコイズ別館・読書録

――図書館へ行こう。

132 笑うふたり 高田文夫

2010-08-10 06:58:20 | た行
 図書館より。中央公論。

 対談本。どこからか人物をコピーしてみよう。伊東四朗、三木のり平、イッセー尾形、萩本欽一、谷啓、春風亭小朝、青島幸男、三宅裕司、立川談志。なんと豪華なメンバー。
 コメディアンは舞台に立ち、お客に鍛えられるものだという共通意識を感じる。

*お前は警官の役、お前は泥棒の役、はい舞台に上がって、と言われたことがある。(欽ちゃん)

 また、談志の言うことがめちゃくちゃである。もともとなのか、弟子に対してまじめにしゃべれるかという照れなのか。
 表紙絵はビートたけし。

121 赤めだか 立川談春

2010-07-02 05:52:57 | た行
 図書館より。扶桑社。

 談春師の、入門から前座、二つ目時代を書いた半生記。傑作。
 お笑いには笑いに関係ない部分をそぐという作業が必要だが、これが徹底している。まず書き出しが凄い。
#本当は競艇選手になりたかった。
 まずこれでつかむ。唸らされる。

 会話の再現力が凄い。談志家本との会話が一つ一つおもしろい。
 また落語会は狭いのか、私が最近読んだ、談四楼師、花緑師などが登場してからむのも楽しい。
 赤めだかとは家本の飼っている金魚のこと。大きくならないからそう陰で呼ばれている。育てても育てても大きくならない金魚。それは談志と談春たち前座のことだ。この本のテーマは師弟関係の深遠さだ。

#よく芸は盗むものだと云うがあれは嘘だ。盗む方にもキャリアが必要なんだ。最初は俺が教えたとおり覚えればいい。盗めるようになれば一人前だ。時間がかかるんだ。教える方に論理がないからそういういいかげんなことを云うんだ。いいか、落語を語るのに必要なのはリズムとメロディだ。それが基本だ。

109 史上最強のロボット 高橋智隆・柳田理科雄

2010-05-23 13:36:00 | た行
 図書館より。メディアファクトリー。

 ロボット屋さんと科学ライターの対談。二人ともオタクでアニメネタをいちいちを拾ってくるのが、はまる人にははまるでしょう。

#プロレスにおいては、相手の技を積極的に受けるのが基本である。これを指して「八百長」と批判する人がいるが、相手も自分の技を受けてくれるのだから、公平である。

 イラストの近藤ゆたかのトカゲ目が気になってどうも好きになれない。時代劇エッセイ漫画のときは気にならなかったのだが。

104 寿限無のささやき 立川談四楼

2010-04-29 17:14:40 | た行
 図書館より。暮しの手帖社。

 前三分一が自分史になっており、楽しい(後半も楽しいです)。談志が好きで弟子になったこと。鞄持ちでスナックに行ったら有名人ばかりだったこと。二つ目貧乏時代。なんと言っても三遊協会騒動、立川流独立のくだりがおかしい。当事者からの視点は新鮮である。
 無駄を削ぎ取った文体も爽やかである。

#(古今亭右朝を悼んで)寄席文字を書いていて、年上で、よくご馳走してくれて、それが落語家になってオレの後輩になっちまったんだもんな、驚いたよ。ほら、あんたよく言ってたじゃないか、「落語は大衆芸能じゃない」って。あれどういう意味だ? 古典一筋で、売れるのを拒否してるようにも見えたけど、あの姿勢と何か関係があるのか? ……ダンマリかよ、何か言ってくれよ。

97 字幕の花園 戸田奈津子

2010-04-03 16:51:57 | た行
 図書館より。集英社。

 なくなってしまった雑誌「ROADSHOW」の連載。見開きで一本の映画を紹介し、いくつかの英文と字幕をピックアップするスタイル。
 私は彼女の字幕はあまり好きではないのであるが、この本を見ると目からうろこが連続して落ちる。こんな言い方があったのか、の連続。流行りの英語を勉強しているのだなあ、と感心。

*awesomeすごい wicked最高(逆の意味になる) tottalyとても hit口説く dumpふる super fun超楽しい cool最高・賛成・大丈夫 two of a kind同類

 スターの素顔や、豊富な写真も楽しい。

*リチャード・ギアは京都好き
*キャメロン・ディアスはインタビューのあとカップを片付けた
*ブラッド・ピットは若いころ一人でインタビューができずに監督にいてもらった
*ティム・バートンはやはりオタク
*ヒュー・グラントは本物も軽い男。好きな音は「ホテルのミニバーの扉が開く音」、嫌いな音は「それが閉まる音」。

95 字幕の中に人生 戸田奈津子

2010-03-21 16:39:40 | た行
 図書館より。白水社。

 おもしろい! びっくりマークをつけてしまうほどだ。構成もいい。まず一章で日本における字幕の立ち位置を概観し、二章で仕事に就くまでの経歴に触れる。三章は字幕翻訳の実際。四章は名台詞、名字幕。完璧である。

 字幕翻訳の個々の技術には触れない、としながらも、流れるように出てくる現物の数々。貴重である。下記、引用や要約が多いことで、私の関心の高さがわかるであろう。

*「(部屋が)殺風景ね」と言われて"Less to miss." これを「そこがいい」と訳す。
*"Hit the air!"は、「宙を撃て」ではなく、「逃げろ」。
#「キューブリックは字幕翻訳の逆翻訳を要求する。バカげたことをなさる大先生だ」(高瀬鎮夫) 根本的な言語の違いを考慮に入れず、逆翻訳の文字づらだけを見て、満足のゆくはずはない。
*字幕を読みきれなければ何度も見ればよいと言った批評家がいたが、タダで試写を見られる批評家と一般観客は違う。
#字幕はチラッと目を走らせただけで、なんなく内容のつかめる文章でなければならない。
#二行二十字
*一秒に三、四文字
*新聞並みに当用漢字を遵守して、「僕」は使うが「俺」は使わない。
#出だしのせりふは字数を抑え加減にする。
#「ドクター・ペッパー」で(飲み物だと知らなくて)悩んだことがある。
#「オス、メスが違っていましたよ」(男なら「映画は好きでしょ?」でなく「映画は好きかい?」と言わせた方が誤解がない)
#「ガイトーがあるので、ボンドで見てください」(法令違反に該当する部分があったので、税関に保税状態にされているものを試写の特別許可をもらって見てください)
#「ここからここまでが一つの字幕ですよ」という区切りを、原文のシナリオに記してゆく(のを、「箱書き」という。)
#"Go!"が「行け!」か「逃げろ!」かは、画面を見なくてはわからない。
*ヒアリングはネイティブにしてもらう。(昔は自分でやったこともある)
*ターザンもウディ・アレン作品もギャラは同じ。

 個人的には彼女の字幕は好きではない。始めに名前が出ると、「あーあ」と思う。終わってから名前を見ると、「やっぱりな」と思う。ごめんなさい。
 私は字幕を見るのに慣れているから、彼女の字幕は、簡単にしすぎて内容が削られた印象がどうしてもあるのだ。

79 チョコレート革命 俵万智

2010-02-06 19:33:43 | た行
 図書館より。河出書房新社。

 三つ目の歌集。瑞々しい感覚、国語教員らしい豊富な知識、よき師匠との出会い、と恵まれているはずの歌人は、どろどろの不倫に走る。
 『サラダ記念日』の路線でいけば、国語の教科書にも載ったろうに。もう載っているかもしれませんが。
 筆者の頭にはきっと与謝野晶子が浮かんでいるのではないでしょうか。

#ゆりかもめゆるゆる走る週末を漂っているただ酔っている
#幾千の種子の眠りを覚まされて発芽していくわれの肉体
#生えぎわを爪弾きおれば君という楽器に満ちてくる力あり

#水蜜桃(すいみつ)の汁吸うごとく愛されて前世も我は女と思う

#「学校」という語を甘きキャンディーのように発音する子どもたち


73 短歌をよむ 俵万智

2010-01-23 06:35:09 | た行
 図書館より。岩波新書。

 いい本だ。
 「よむ」が平仮名になっているのは、「詠む」と「読む」の両方を意味している。
 まず古典から引用し、大らかな愛や音の連続の技術を紹介する。これが「読む」。
 続いては自分の作歌の方法を紹介する。これが「詠む」。俵さんはノートに記録しているので、途中経過がわかっておもしろい。

 カレー味のからあげ君がおいしいと言った記念日六月七日
 「カレー味がいいね」と君が言ったから今日はからあげ記念日とする
(カレー味却下、しお味、この味を経て、サラダになる。俵さんはS音が好きだ。日付も変わった。七夕では愛の歌とわかりすぎる。)
 「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日

 ドッグイアー。

#短歌は、一人称の文学と言われる。
#私の場合、何かでこぼこした感じのところをなくしたくて、推敲をする。(略)言葉のなめらかさが足りずに、リズムがぎくしゃくしている、という意味の「でこぼこ」。不自然な言葉が混ざっているために、そこだけがどうもしっくりしないという「でこぼこ」。あるいは、自分の表現したい心の揺れと、今ひとつぴったりせず、ズレを感じさせるという「でこぼこ」。いかにも凝った表現、というのが前面に出すぎて、読む人の重荷になってしまうような「でこぼこ」……。
 

68 どんどん釣れるひっかけマージャン 田村光昭

2009-10-10 19:15:37 | た行
 KKベストセラーズ・ワニの本。

 覚えている。大学に入って、マージャンに強くなろうと思い、東久留米駅近くの本屋で買ったのだ。

 結果から言うと、大失敗である。この本は基本がわかっていて、相手を引っかけるために、もっと言うと出さない相手からロン上がりを出すためにどうするかの本だ。
 ホンイツ、チンイツで上がり牌を悩むようなレベルでは、この本を読む資格はない。

 実際に、負け続けだった私が、井出洋介さんの本を読んでから、基本を理解することができ(た気がする)、メンタンピンを狙うようになった。

 だのにこの本を今まで持っていた理由は何か。それはひとえに、洒脱な文体による。