京都 洛北の時計師 修理日記

時計修理工房「ヌーベル・パスティーシュ」京都の洛北に展開する時計修理物語。
夜久野高原で営業再開しました。

時計師の京都時間「地獄の時間」

2016-05-10 09:22:49 | 時計修理

5月10日火曜日。
今日はフランスブルボン王朝最後のルイ15世断頭台に消えた記念日。
地獄の日です。
今朝の日経新聞ではカルティエのリシュモングループが販売不振で従業員のリストラが始まるそうだ。
残るも地獄、行くのも地獄の時計業界。
もともと時計の神様「クロノス」の姿はいつも死神のイメージで表されるのだ。厳しいのを覚悟してこの業界に入る人は少ないが、入ってビックリ地獄の世界が待っている。

せっかく苦労して修理したビンテージ時計を中学生に使わせてあっさりと破壊されて「壊れた!どうしてくれる?」と当たり前のようにクレームが来る業界だ。
G-SHOCK世代に機械式時計。中年オヤジに背油ラーメン。絶対に壊すぞ!
私が京都名物背油ラーメンを食べると2時間後にお腹が壊れる運命。
中学生が使える機械式時計と中年オヤジのお腹にやさしい京都の背油ラーメンはない!

時計師が死んだら天国か地獄かどちらかの工房に行く話がある。
天国も地獄もなぜか同じ建物で同じ工具が置いてある。
「あら~いっしょや!」と安心してお店を開けるのです。
天国と地獄の違いは見つからない。そこで安心してはいけない。

いよいよ開店!地獄の時間の始まり。
店の前にはどちらも同じ数のお客が並んでいる。
ところが、天国のお店には京都人が、地獄のお店にはなんと大阪人だけがぞろぞろと入っていくではないか!天国のお店には笑い声が聞こえる。
地獄の店には怒鳴り声が聴こえてくる。
「おっさん!このまえ買うたロレックスな~1週間で2分も進むのや!仕事で使われへん、どうしてくれる。仕事仲間の電波時計はいつもぴったりやで~。50万もしたのに不良品か?」

「あんな~おっちゃん!電池交換不要って書いてあるのに止まった!一度も使わんと箱に入れて大切に仕舞っていたのに動かへんで~、壊れた!ここまでの電車賃、どうしてくれるの~。」
日ごろの行いは清く正しく生きましょ~!の意。大阪の時計職人の苦労には頭が下がるのだ。

 現役時代、こんなやりきれないクレームの連絡が来るたびに仕事を放り出して名古屋の本部から大阪心斎橋の店に飛んでいく地獄の日々。
また、大阪の店でせっかく採用した腕のいい時計師もすぐに辞めていくのでそのたびにバイヤーの仕事片手に土日には私が修理コーナーに張り付くことになる。
自然と近所のハートン・ホテルが常宿状態になる。
ここの朝食はお気に入りですが早く行かないと料理がなくなるぞ!大阪人地獄の大食にビックリ!

そのうちに私が会社を辞めると数ヵ月後にはこの店もあっさり閉店。先代の社長肝いりで開いたお店なので社長交代で面倒を見る人がいなくなるとあっさりと閉店。
ただ、全国にお店がある中で私のお別れ会を開いてくれたのが大阪のお店の人たちだけ!
地獄にホトケの大阪人だ。また、大阪の店で付き合いのあった時計師の皆さんとは今でもお付き合いがある。
泥の中からきれいなハスの花が咲くように大阪のドロドロから出てくる不思議な人情にはびっくりします。地獄も住めば都だ?

写真はハーバード大学のノベルティウオッチ。
各大学に普通はノベルティの時計が販売されているがこのボストン・ハーバードのモデルは希少品です。
 20年ほど前に販売されたノベルティーウオッチです。
残念ながら他の大学の卒業生には使い回しが出来ないのがつらい。学歴詐称になるか?
それにしてもリューズ回りなどきれいな使われ方をした時計です。

これが立命館の時計なら20年間ずーっと地獄のような時間を見てきたはずだ。私の時計もボロボロでいつの間にか消えた。
卒業後すぐに海外や大阪に飛ばされたりして無事に京都へ戻ってくることは奇跡でしょう。時計と共に生きてもどれ!

明日はお休みの水曜日。
今週は大型連休でタフな日が続きました。
そこでちょっと気分転換、哲学の道から銀閣寺へ、京大農学部前の松尾のチャンポン800円を食べて工房には午後から入る予定です。
やはりチャンポンは身体に入れとかないといけない。
長崎チャンポン、盛岡レーメン、名古屋味噌煮込みうどんが私の三大麺なのだ。これを切らすと情緒不安定になるのだよ~ん。

「私は水曜日だけがお休みなのでこの日に閉められては困る!」こんなお客さんが増えてきました。
なんとか13時過ぎにはだいたい戻っていますのでご利用くださいね~。














コメント
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