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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

3月30日・エリック・クラプトンの美神

2024-03-30 | 音楽

3月30日は、炎の画家ゴッホが生まれた日(1853年)だが、ロック・ギタリストのエリック・クラプトンの誕生日でもある。

エリック・パトリック・クラプトンは、1945年、英国イングランドのリプリーで生まれた。母親は未婚の16歳で彼を産んだ。父親は25歳のカナダの軍人で、エリックが誕生する前にカナダへ帰ってしまっていた。ティーンエイジャーの母親は、息子を母親(エリックの祖母)に預け、べつのカナダ軍人と結婚してドイツへ行ってしまった。残されたエリックは、祖母と祖母の再婚相手である義理の祖父に育てられた。
13歳の誕生日にアコースティックギターを買ってもらったエリックは、それを15歳のころから猛烈に練習しだし、とくにブルース・ギターに熱中した。
クラプトンは16歳でアート・カレッジに入学。しかし、学業はそっちのけで、音楽に入れ込んだ。17歳であちこちの路上で演奏するようになり、「ルースターズ」というリズム・アンド・ブルースのバンドに入った。
18歳のとき、ロック・バンド「ヤードバーズ」に加入。「フォー・ユア・ラブ」をヒットさせ、クラプトンはその卓越したギター演奏により「スロー・ハンド」「ギターの神様」と呼ばれるようになった。
20歳のとき、バンドのメンバーと意見が対立し、ヤードバーズを脱退。
その後「クリーム」「ブラインド・フェイス」などのバンドをへて、25歳のとき「デレク・アンド・ザ・ドミノス」を結成。「レイラ」「アイ・ショット・ザ・シェリフ」などの大ヒットを放った。クラプトンはザ・ビートルズのほか、さまざまなミュージシャンたちとセッションをし、ソロとしても多くのヒット・シングルやアルバムを発表している。

ビートルズの名曲「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」の印象的なリードギターを弾いているのは、エリック・クラプトンである。
ビートルズのジョージ・ハリスンは当時パティ・ボイドと結婚していて、「サムシング」「ヒア・カムズ・ザ・サン」などの名曲を書いた。
一方、クラブトンは、親友ジョージの妻パティに思いを寄せ、パティへの思いをこめて名曲「レイラ」を書いた。思う相手のパティは、ロン・ウッド(当時フェイセズ所属)との浮気が発覚し、ジョージと別居した。すると今度は夫ジョージとモーリン(リンゴ・スターの妻)との不倫が発覚し、パティとジョージはついに離婚。エリック・クラプトンは34歳のとき、独身となったパティと晴れて結婚した。しかし結婚後、クラプトンは妻に暴力をふるい、外ではあちこちで愛人や子どもを作り、結局、クラプトンが43歳のとき二人は離婚した。
名曲の豊かな水源。パティこそ「ミューズ(芸術の女神)」だった。

「ギターの神様」クラプトンは、風貌もその演奏ぶりも真摯だけれど、彼の私生活は痴情事件のオンパレードである。46歳のとき、彼がイタリア人モデルとのあいだにもうけた4歳の息子が、ニューヨーク・マンハッタンの53階の窓から転落死した。クラプトンは息子の死を悼み「ティアーズ・イン・ヘヴン」という名曲を書いた。パティとの離婚の直接の引き金になったのは、この事故死した不倫の息子の誕生だった。
クラプトンのギター演奏は、何度聴いてもうっとりする艶がある。それは父親の顔も知らずに生まれ育ったギタリストの「オイディプス王」の奏でる宿命の響きである。
(2024年3月30日)



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