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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

4月3日・マーロン・ブランドの青春

2024-04-03 | 映画

4月3日は、雑誌「タイム」を創刊したヘンリー・ルースが生まれた日(1898年)だが、映画俳優のマーロン・ブランドが生まれた日でもある。

マーロン・ブランドは、1924年、米国ネブラスカ州オマハで生まれた。ドイツ移民の家系で、父親は化学飼料の製造販売をしていた。母親はたばこを吸い、ズボンをはき、クルマを運転し、バーで飲んだくれる、当時としては常識破りの女性だった。マーロンは3人きょうだいの末っ子で、上に2人の姉がいた。反抗的なマーロン少年は、学校では教師ににらまれる問題児だったが、黒人差別がひどかった当時にあって、黒人の生徒とも仲良くつきあう、反人種差別的な考えをもった白人少年だった。
高校を中退し、16歳のときに入れられた陸軍士官学校でも反抗的な態度が原因で追いだされた。
ブランドは、溝掘りの仕事についた後、軍隊に入ろうとしたこともあったが、以前フットボールでいためたひざのケガのため、入隊はかなわなかった。
ブランドは、2人の姉たちがいるニューヨークに出て、女優志望だった姉にすすめられ、俳優を目指した。専門学校で演技を学んだ後、23歳のとき、ブロードウェイの舞台劇「欲望という名の電車」に出演し、注目されるようになった。
その後、ブランドは映画に進出し、27歳のとき、映画「欲望という名の電車」に出演。この映画の野性的な反逆児を演じて、一気に世界的なスターとなった。
以後、「乱暴者」「波止場」「戦艦バウンティ」「キャンディ」「ゴッドファーザー」「ラストタンゴ・イン・パリ」「スーパーマン」「地獄の黙示録」などに出演した後、2004年7月、心不全を伴う呼吸不全のため、ロサンゼルスの入院先で没した。80歳だった。
ほかの映画男優たちとは、まったく異質な雰囲気をもった強烈な個性。若いエネルギーと、若さのてらい。20世紀の青春像スタイルを打ち立てた俳優で、エルビス・プレスリー、ジェームズ・ディーンなど、彼の後代のヒーローたちはみなマーロン・ブランドのエピゴーネンとも言える、強烈な演技者だった。

48歳のとき、マーロン・ブランドは映画「ゴッドファーザー」でマフィアの首領、ドン・コルレオーネ役を演じて、アカデミー賞主演男優賞を受賞した。そのときのアカデミー賞の授与式の模様を、テレビの衛星生中継で見ていてよく覚えている。プレゼンターが、受賞者の名を読み上げると、本人のブランドは現れず、彼の代理人だというネイティブ・アメリカンの女性がステージに上ってきた。その女性は紙をとりだし、ブランドの声明を読み上げた。ネイティブ・アメリカンに対する人種差別に抗議し、受賞を拒否する、という内容に、場内は騒然となった。
その後で、べつの賞を受賞した人たちが受賞スピーチのなかで、
「こういう席に、ああいう政治的を主張を持ち込むのはよくない」
とブランドを批判し、拍手が起こっていた。

マーロン・ブランドのプロフィールを見ると、その反差別主義は少年時代からのもので、筋金入りとわかる。
「反抗の象徴」だったこのスターは、世間に迎合しない、ぶれない人だった。
(2024年4月3日)



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