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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

7月21日・マクルーハンの警鐘

2024-07-21 | 歴史と人生
7月21日は、文豪、アーネスト・ヘミングウェイが生まれた日(1899年)だが、メディア理論のマーシャル・マクルーハンの誕生日でもある。

ハーバート・マーシャル・マクルーハンは、1911年、カナダのアルバータ州エドモントンで生まれた。父親は不動産業者で、第一次大戦中は従軍していた。母親は学校教師で、後に女優になった。ハーバートには二つ年下の弟がいた。
はじめ工学を学んでいたハーバートは、英語学に専攻を変え、22歳のとき、カナダのマニトバ大学を卒業した。そして、英国イングランドへ渡り、ケンブリッジ大学をへて、25歳のとき帰国。カナダで思うような就職口が見つからなかったため、米国のウィスコンシン大学に勤務した。
以後、セントルイス大学、トロント大学などの大学で教鞭をとり、雑誌の編集に関わりながら、メディア論についてマスメディア上で多く発言し、1950年代から1960年代にかけて、メディア理論の論者として有名になった。1960年代米国のジャーナリズム上で活躍した代表的知識人のひとりだった。
68歳のとき脳卒中に襲われ、話すのが困難になり、容態が回復しないまま、翌年の1980年12月にトロントで没した。69歳だった。
著書に『機械の花嫁』『グーテンベルクの銀河系』『人間拡張の原理――メディアの理解』『メディアの法則』などがある。

「メディアはメッセージである」
それがマクルーハンの主張だった。マクルーハンがここで言う「メディア」とは、テレビや新聞などのいわゆるマスメディアだけではなくて、人間が発明、製造した技術すべてを含んでいる。電話、時計、家屋、貨幣などすべて、彼に言わせれば兵器といったものまで、現実世界に満ちている人工物はみんなメディアだ、ということになる。人と人とが意思を伝え合うことばなどは、もっとも基本的なメディアである。
たとえば、電話が人間の耳の機能を外に大きく伸ばした「耳の拡張」であるとするなら、同様に、現実を構成しているメディアはすべて、人間の存在を外に伸ばした「人間の拡張」である。
同じニュースでも、ラジで聴く、テレビで観る、電話で聞く、手紙で読む、とそれぞれ印象がちがうように、情報源は同じでも、メディアがちがえば、そこから伝えられるメッセージはちがったものになる。つまり、メディアとメッセージとは切り離せるものではなく、メディアはメッセージなのである。
それぞれのメディアはそれぞれ固有の文法をもっていて、人間はそれを変えることはできない。したがうしかない。だから、人間はメディアごとの文法を理解しなくてはならない。

われわれがふだん何気なく見聞きしているテレビ、ラジオ、新聞、インターネット情報やSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などにも、それぞれ固有の文法がある。ツイッターにはツイッターの、ラインにはラインの、首相官邸のフェイスブックページにはそれ独自の文法があるわけで、それを理解せずにただつきあっていると、いつかとんでもない目にあう。マクルーハンが警鐘を鳴らしていたのは、そういうことだ。
(2024年7月21日)



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