6月19日は、最近なにかと話題になる理化学研究所が創設された日(1917年)。この日は、作家、太宰治が生まれた日(1909年)でもあり、天才パスカルの誕生日でもある。
自分は高校のころから『パンセ』を読んできた、パスカルの愛読者である。
ブレーズ・パスカルは、1623年、フランス中部の街、クレルモン=フェランで生まれた。父親は地方裁判所の裁判官で、ブレーズには姉と妹がひとりずついた。
ブレーズが3歳のとき、母親が没し、8歳のとき、父親は子どもを連れてパリへ引っ越した。科学や数学に秀でていた父親は、ブレーズを学校へ行かせず、家でみずから英才教育をほどこした。さらに、パスカル家にはさまざまな数学者や科学者が出入りして学者のサロンといった環境で、そんな知的刺激を受けて、ブレーズは驚くべき優秀さを発揮した。
彼は、12歳のころには幾何学に精通し、16歳で「円錐曲線試論」を書き、「パスカルの定理」を発見した。
19歳で計算機を発明し、23歳で実験によって空気の重さの現象を証明。
27歳のとき、密閉された容器のなかにある液体の一点に圧力を加えると、液体はすべての方向に向かって同じ強さの圧力を伝える、という「パスカルの原理」を発見。
39歳のとき、乗り合い馬車を考案し、その事業をはじめた。これは、当時、馬車といえば上流階級のみの交通手段だっところ、これを庶民にも利用できるものにしようという、世界初の公共交通機関となる画期的なアイディアだった。
しかし、パスカルは生来虚弱だった上に病気が重なり、乗り合い馬車の創業半年後の1662年8月に没した。39歳だった。その死因とともに、パスカルが頭痛に悩まされ、病弱だった原因もはっきりしないらしいが、脳障害、結核、胃ガンの可能性が指摘されている。
パスカルの没後、彼の遺稿が集められ、編まれて『パンセ』として出版された。パンセとは「思想、考える」という意味で、この本はフランス知識人必読の書となった。
『パンセ』の文庫本を自分はいまでもときどき開く。
「人間は、自然のうちで最も弱い一本の葦にすぎない。」
「クレオパトラの鼻、もしこれが低かったら地上の全表面は変わっていたことであろう」
「私はデカルトを許すことができない」
刺激的なことばが目白押しで、パッとてきとうに開いたすべてのページがおもしろい。天を見上げるような高い志とともに、立場をあいまいにせず明確に断言する、その伸びた背筋がすばらしいと思う。
なかには、こんなくだりもある。
「明らかに人間は考えるために作られている。これが彼の品位の一切である。彼のなすべきすべてのことは、正しく考えるということである。さて考える順序は彼自身からはじめ、彼の創造主と彼の目的からはじめる。
ところで世人は何を考えているであろうか。まるでそうは考えていない、ただ踊るとリュートを奏でること歌うこと詩を作ること輪を追うこと等々また争うこと王になることを考え、王とはどういうものか人間とはどういうものかは考えない」(以上、津田穣訳『パンセ』新潮文庫)
耳が痛い。あたかもパスカルが亡くなってから人類は一歩も歩みを進めていないような、否、むしろ後退してきた気さえする。
(2014年6月19日)
●おすすめの電子書籍!
『オーロヴィル』(金原義明)
南インドの巨大コミュニティー「オーロヴィル」の全貌を紹介する探訪ドキュメント。オーロヴィルとは、いったいどんなところで、そこはどんな仕組みで動き、どんな人たちが、どんな様子で暮らしているのか? 現地滞在記。あるいはパスポート紛失記。南インドの太陽がまぶしい、死と再生の物語。
●電子書籍なら明鏡舎。
http://www.meikyosha.com
自分は高校のころから『パンセ』を読んできた、パスカルの愛読者である。
ブレーズ・パスカルは、1623年、フランス中部の街、クレルモン=フェランで生まれた。父親は地方裁判所の裁判官で、ブレーズには姉と妹がひとりずついた。
ブレーズが3歳のとき、母親が没し、8歳のとき、父親は子どもを連れてパリへ引っ越した。科学や数学に秀でていた父親は、ブレーズを学校へ行かせず、家でみずから英才教育をほどこした。さらに、パスカル家にはさまざまな数学者や科学者が出入りして学者のサロンといった環境で、そんな知的刺激を受けて、ブレーズは驚くべき優秀さを発揮した。
彼は、12歳のころには幾何学に精通し、16歳で「円錐曲線試論」を書き、「パスカルの定理」を発見した。
19歳で計算機を発明し、23歳で実験によって空気の重さの現象を証明。
27歳のとき、密閉された容器のなかにある液体の一点に圧力を加えると、液体はすべての方向に向かって同じ強さの圧力を伝える、という「パスカルの原理」を発見。
39歳のとき、乗り合い馬車を考案し、その事業をはじめた。これは、当時、馬車といえば上流階級のみの交通手段だっところ、これを庶民にも利用できるものにしようという、世界初の公共交通機関となる画期的なアイディアだった。
しかし、パスカルは生来虚弱だった上に病気が重なり、乗り合い馬車の創業半年後の1662年8月に没した。39歳だった。その死因とともに、パスカルが頭痛に悩まされ、病弱だった原因もはっきりしないらしいが、脳障害、結核、胃ガンの可能性が指摘されている。
パスカルの没後、彼の遺稿が集められ、編まれて『パンセ』として出版された。パンセとは「思想、考える」という意味で、この本はフランス知識人必読の書となった。
『パンセ』の文庫本を自分はいまでもときどき開く。
「人間は、自然のうちで最も弱い一本の葦にすぎない。」
「クレオパトラの鼻、もしこれが低かったら地上の全表面は変わっていたことであろう」
「私はデカルトを許すことができない」
刺激的なことばが目白押しで、パッとてきとうに開いたすべてのページがおもしろい。天を見上げるような高い志とともに、立場をあいまいにせず明確に断言する、その伸びた背筋がすばらしいと思う。
なかには、こんなくだりもある。
「明らかに人間は考えるために作られている。これが彼の品位の一切である。彼のなすべきすべてのことは、正しく考えるということである。さて考える順序は彼自身からはじめ、彼の創造主と彼の目的からはじめる。
ところで世人は何を考えているであろうか。まるでそうは考えていない、ただ踊るとリュートを奏でること歌うこと詩を作ること輪を追うこと等々また争うこと王になることを考え、王とはどういうものか人間とはどういうものかは考えない」(以上、津田穣訳『パンセ』新潮文庫)
耳が痛い。あたかもパスカルが亡くなってから人類は一歩も歩みを進めていないような、否、むしろ後退してきた気さえする。
(2014年6月19日)
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