日本語教師の見た中国とか…

日本語教師が見た中国をつらつらと綴ろうとはじめました。帰国後、大学院生を経て今はとうとう専任日本語教師だ~。

その日本語どうよ。

2007-10-14 08:56:23 | 日本語
 某研究会に参加しました。

アメリカ帰りの先生が講演者に対して質問しています…

「・・・マス・カウントやジェンダー、助数詞の問題は、オブリガトリ、フリクエンシーの問題であって、別種のものというわけではないんじゃないでしょうか??」

こらこらこらこら!ルー大柴かいな~~。

発言者は通じているつもりで話しているんでしょうが、みんなわかっているのかなあ。

 例えば会話の一部を中国語にして見ましょう。

「ズオティエン、講演に行ったら、ヨウディアール チーグァイな発表者がおってな、英語混じりのリーユーでしゃべんねんよ。

 こんな日本人おらんやん?

 つまり、英語混じりなら通じるだろうという考えがどこかにあるのです。もう一つ、英語混じりの発話って評論家に多いんですよね。つまり、一般の人はわからない言葉を話すことで、ステータスを確保しているのです(『ダーリンは外国人』のオグリさんも、そういう発話嫌いって言ってた)。古くは、漢字を書けることが日本人インテリのステータスでした。庶民には意味不明だったんですから。

 時代は変わっても人間は変わらないんですよねえ。

でもでも、やはり、ああいう発言者にはおじいさんクラスの年配の方がはっきりと言ってあげなければならないと思うのです。


 「あなたの日本語乱れてますよ」って。

受身

2007-10-12 07:44:16 | 日本語
 学生としゃべっててふと日本語の文法に気づくことがあります。そしてそれが頭から離れなくなってグルグル回りだし、学生の話が入ってこなくなって・・・文法マニアなワタシ。

 「先生の授業はほめられていますよ。」

っていう文、変ですよね?(間接的にワタシの授業を自慢しているわけじゃないのよ。結果的にそうなってるんだけど…)

 受身の導入時、形の指導(よむ→よまれる)が大変で使用方法とかをじっくりはできないのですが、「受け手を中心に描く表現なのだ」くらいのことは説明します。なんで上の例が変になってしまうのか?

 仮説1 迷惑のニュアンスがでてしまう

「弟にケーキを食べられた」のように、日本語受身はほとんどが迷惑ニュアンスを伴います。そうじゃないのもあるけど、基本的には迷惑の用法が圧倒的です。でもでも次の例はオッケーです。

 「先生は人気教師NO1に選ばれましたよ。(こんなこと言われてみたい)」

迷惑ニュアンスなんてなくても使えるんですよね。

 仮説2 「ほめられる」と「ている」の相性が悪い

「彼はいつも先生にほめられている」が使えることから、この仮説は瞬間的に廃棄だなあ。

 仮説3 ウチとソトの関係

先生という目の前にいるソトの人物に対して、自分とウチグループにいる他の学生の評価を伝える場合には、わざわざ受身にしてはいけないのではないでしょうか。受身って基本的にソトの人間に何かをされて影響を受けたという意味が多い気がします。深く考えたわけじゃないけど~。

 結論は保留。ただし、上の例だと、

 「先生の授業は友達がほめていますよ。」の方がいいと思う。

この辺に受身機能の本質があると思うのだ。

PS ただし、先生のことを学生が評価するという点において違和感を持たれる人もおられると思います。それは社会言語能力であり、文法とは別レベルだと思うのです。

家庭菜園を言語学する

2007-09-25 19:36:24 | 日本語
 このブログもはや3年目、みなさんがちょこちょこコメントを残してくださるようになり、感謝ハムニダ。(←これを今年流行らそうとしているのに、あまりみんな乗ってくれない。

 別に終わりじゃありませんよ。

 身の回りには、モノは知っているけど名前は知らないというモノがたくさんありますよね。例えばすし折に入っている、緑色のギザギザしたモノ、あんなものの名前を知らなくても日本社会では生きていけます。他にも、シャーペンの根元にあるポケットにひっかけるつめ、めがねの鼻に当たる部分、自転車の空気を入れる部分にあるニョロニョロ・・・

 これらはちょっとかっこよく言うと、シニフィエのみの認識になります。

逆もあって、言葉は知っていてもモノをしらないなんてことよくあるでしょ?‘うぐいす’という言葉は知っているけど、たくさんいる鳥の中で、うぐいすを指差せといわれても困る(私が無知なだけかな??)。‘さるすべり’なんてのも名前しか知らないし、‘アフリカツエツエバエ’もどんなんかはわからないなあ。 

 これらはちょっとかっこよくいうと、シニフィアンのみの認識。

 実家近所の農家直売所でおばちゃんから「これはししとうだ。」と言われて、3株も庭に植えたのが5月の話。実がなってみたらびつくり!!

 ピーマンやがな~。しかも、今年、もんのすごい豊作

ししとうとピーマンの違いもわからずなんちゃって農民をやっている私が悪いのさ。これも言葉はしってるけど、モノを知らないという例だなあ。異常気候のせいで、いまだにものすごい収穫量をほこるうちのピーマン。


 実家に帰るたびに、チンジャオロースやがな。

 みそ汁にピーマンは嫌やわ~、と、文句も言えない私。

 
 植えた本人だもの。

使役余剰

2007-09-14 08:50:49 | 日本語
 テレビ見てたら、小沢セイジさんのことをやっていました。オーケストラのメンバーのセリフが心に残っています。文法的にね。

 (小沢さんに)能力を引き出させられました。

どうよ?違和感はありますか?いわゆる文法教科書的に見るとこれは文法的に間違った文です。受身だとわかりにくいので、能動文にしてみますね。

 (小沢さんが)能力を引き出させた。

‘引き出す’という他動詞は、目的語をとることができるから、正確には・・・「能力を引き出す」というのがいわゆる正しい日本語です。つまり上の文は、使役にしなくてもいいのに、使役になっているのです。こういった文を使役余剰と呼び研究している方がおられます(定延利之『認知言語論』)。

 ラジオを聴いていたら某お化粧系チャラチャラバンドが、「ニューシングルをリリースさせます」と言っていましたが、これも使役余剰。使役にしなくてもいいですから。つまり、使役余剰は文法教科書的には間違いですが、世間にはかなり広まっているのです。

 能力を引き出したり、CDを出したりするという行為は、主語の意思だけで決定できることではありません。能力を引き出せるかどうかには、いろいろな要素がからんでいてうまくいくかわからないし、CDリリースもそう。そういった不確定要素をなんとかがんばって乗り越えていく、という気持ちが使役になって現れるとおもうのですが、定延先生はかなり理論的に分析されております。

 これらの現象は、‘日本語の乱れ’と言ってしまえばそれまでなんですが、そこを突っ込んでいくといろいろおもしろいことが見えると言うハナシ。

 あ~僕も早く自分の論文集を出版させたいものだ。(これまた使役余剰)

限りなく不可能に近い不確定要素を乗り越えて出版という行為を完了したいという底抜けに無謀な野望が、使役形になって現れているのです。


 写真集よりは実現可能性があるはず 

カラスの種類

2007-09-07 17:52:21 | 日本語
 カラスはハシブトガラスやハシボソガラスといった種類があります。のっけから変な話題で切り出しましたが、別に日本の都会におけるカラスの被害状況をつべこべ論じようという社会的ブログではありませんよ。あしからず~。

 ヤタガラス

なんていう伝説のカラスもいましたね。神のお告げを知らせる鳥だとか・・・

 ハシブトガラス ハシボソガラス ヤタガラス

すべて、○○カラスという構造でできています。名詞+名詞構造では、後ろの名詞が全体の意味を決定するという原則なので、○○のところに何が入ろうが、後ろがカラスならすべてカラスの種類を表すのです。

 ところが、英語ではcrowなんですが、これにscare(恐怖)という語を複合させると、scarecrow(かかし)っていう意味になってしまうのです。恐怖の鳥なんやから、火の鳥とかセサミストリートに出てくるビッグバード(ちびっこには恐怖やと思うなあ)なんか想像してしまうのですが、そうじゃないのです。

「カラスをおどかすもの」

っていう意味なんですね。こういった例外的な構造はうちらに新鮮に響きます。英語でも基本的には○○crowと言えばカラスの種類を表すんですけどね。

 
「シェリルクロウはどないやねん?」

 などと言われても困ります。

 

‘狩り’の拡張

2007-08-31 09:34:10 | 日本語
 第一回M1グランプリを今頃見ました。漫才ネタは時々日本語の規則を背景にして作られております。ここでは、頼まれてもいないけど勝手に紹介します。ますだおかだのネタでは、

 ナイキ狩り、おやじ狩り、ブドウ狩り、さみしがり

という複合語を使ってネタが作られていました。

 そもそも、‘狩り’という言葉は、「マンモス狩り」なんかにあるように、なんらかの獲物を捕まえるというところが基本義でしょう。ここでは、狩る対象と獲得した獲物を分けて考えてみます。←マンモス

「マンモス狩り」では、狩る対象も獲得した獲物もどちらもマンモスです。対象と獲物が一致しているということになります。これが動物から植物にまで拡張したのが「ブドウ狩り」でしょうね~。この場合も対象と獲物が一致しております。植物は逃げないから、マンモスに比べるとかなり平和な狩りですね~。遠足とか家族旅行なんかを連想して、「マンモス狩り」みたいなイメージはありません。←ブドウ

「ナイキ狩り」になると、狩る対象が人間になります。ナイキが勝手に野原を走り回ったり、気にぶら下がっていたりはしないもんね。つまり、対象は人間、獲物はナイキという対象と獲物の不一致が出てきます。もとの「マンモス狩り」とはかなり構造が違ってきます。←ナイキ・・・もといマイク

「おやじ狩り」は、対象はおやじですが、捕まえたおやじを持って帰っても仕方がないので、獲物がおやじではありません。←おやじ

 稲中卓球部のサンチェみたいになってしまうもの。

この場合も、対象と獲物が不一致ということになります。「さみしがり」になるとまったく‘狩り’ではないので、オチになってしまいます。

以上のように‘狩り’という語はいろいろな構造に拡張していて、それぞれが微妙に違うわけです。それらの構造の違いを背景に漫才のネタは作られていくわけです。そう考えると漫才師はアホではできない、といううちのばあちゃんの口癖をしみじみ思い出しますね~。

ところで、「もみじ狩り」は?


対象も獲物も紅葉ではないのです。これまた別の構造。


さ~て、「暑がり」の私にはいい季節になってきました。

テンション上がるわ!!

研究者のセンス

2007-05-28 09:36:49 | 日本語
 文科省が、敬語を5種類にわけるという発表をしました。それに伴って、正しい敬語、正しくない敬語、なんていうものも発表しています。お役所はいつもいつもそういった規範的な発表をしていますが、日本人の一体何人がそれを守っているのでしょう??

 言葉の使い方は法律やルールなのでしょうか??

 「よろしかったでしょうか?」という発話の文法違反と、「赤信号無視」という交通違反は同質なのでしょうかねえ~。

 違うと思うなあ。
 
「言葉は常に変遷するモノであって、これが正しい日本語だなどと規範的に指摘するのはナンセンスである」

社会言語学の普及とともに、こういった認識は今や研究者の間で共有されているのですが、実は50年以上も前から主張している人がいるのです。

 金田一京助 『日本語の変遷』(1942)←講談社学術文庫で安く手に入ります。

読んでいたら、びつくりで、鼻血がでるかと思いました。戦争中にこんなこと書いていたのですねえ。

 ‘ストライク’は‘よし!’
 ‘スタルヒン投手’は‘須田’になれ!

などと、規範的国語教育バリバリのさなかに、よくぞそんなことを言えたなあと思うのです。

 思うに、わたしなぞは流行に乗っかって、「「正しい日本語」なぞ世の中に存在しない」なんて言っていますが、そんなことを本質的に理解出来てしまっている人間が世の中にはいるんですねえ。やはり、天才っていうのはそういう人のことなのでしょう。

 センスなんですよ、センス。

 こればっかりはね~、生まれ持ったモノなのかなあ。


 「私にはセンスがない」ということを知っているだけでも、センスがあるのだ

 ってことにしておきましょう。

スタンドバイミー

2007-05-22 21:45:02 | 日本語
なんでか今頃になって読み返してみました。映画のほうが有名ですが、原作はなかなか味のある作品ですよ~。この作品に

 『スタンドバイミー』

っていうタイトルをつけた人、、偉いなあ。

ぼん ぼん ぼぼ ぼん ボン ♪

で始まる主題歌は、みなさん一度くらいは聞いているはずですよねえ。これだけの知名度を誇るに至った経緯には、タイトルの秀逸さが光っていると思うのです。

原題は『The body』

直訳すれば、・・・・  『死体』 

だって、ちびっこがみんなで死体を見に行く話だもんねえ。映画化のときにベンEキングの名曲、「スタンドバイミー」が選ばれたので、このタイトルになったんだろうけど、変に日本語訳なんてつけて・・・

 『僕をささえてヨン』

なんてしてしまったら、今日の知名度はありえなかったことでしょう。このタイトルからは完全にB級ちょいエロ映画のにおいがする。ちなみに私が小学生の時に流行ったホラー映画『The toxic revenger』は、日本語訳が・・・

 『悪魔のどくどくモンスター』でした。

これも秀逸。

素敵

「もの」申す

2007-04-23 18:25:44 | 日本語
「もの」という形式名詞は、えれー文法化が進んでおります。

 悲しいものがある。・・・ものがある(しみじみ思う)

 年寄りは大事にするものだ。・・・ものだ(道徳的な義務)

 涙が出ちゃう、女の子ですもの。・・・もの(個人的な理由)

 悲しみで花がさくものか!・・・ものか(反語による強い否定)
 
 一度はカジノへ行きたいものだ。・・・ものだ(強い願望)

 悪いとは思うものの、ごめんといえない。・・・ものの(逆接)

 言ってくれれば手伝うものを、なんで黙っているんだよ!・・・ものを(逆接)

参考書を見れば、まだまだあるんですが、めんどくさいからこれくらいにしておきます。ここにあるやつは全部、日本語能力試験2級レベルの範囲です。日本人にとっては適当に使って、適当に理解できるんですが、留学生の頭の中はどのように整理されているんでしょうね~。おそらく、‘もの’関係の文法ばかりを同じカテゴリーとして同じ場所に記憶されているんちゃいますかねえ~。

 大変なのは、「ものの」と「ものを」、どちらも逆接なので、「のに」と置き換えが可能です。しかし明らかにニュアンスが違いますねえ。参考書などには、「ものを」は、非難、不満、反省、後悔、の意味で使われることが多いとのこと。結構説明が粗いなあ。それだけ説明しにくいっつうことかな。

 ところで、「ものの」の使い方。

「前件で言ったことは、本当だと認めながらも、そこから考えられるようにはいかないという意味で用いられる。」

 なんだってさ~。

 こんなあいまいな説明、留学生にして意味あるのかなあ~~。

 悩むなあ。

 僕自身、はっきりわからないんですもの。

            ↑ふふふ、ちょいときしょいなあ。

春のキャンパス

2007-04-03 19:15:20 | 日本語
 サクラも咲きかけ、またまた春を迎えてしまいますねえ。たまたま某大学のキャンパスを歩いていたときのこと。サークルの部員募集立て看板がずらーっと並んでおりました。みんなインパクトを狙って、一生懸命目を引く看板が並んでおりました。その中で一際私の心に響いた看板には・・・


 「ナウなヤング集まれ!!!」


って書いてありました。めっちゃでかい字で。爆笑してもた。

 看板の技術はどれも高くて、プロびっくりのデザインが競う中、イラストに頼らずに言語情報だけで人目を引こうだなんて、たいしたもんですよ~。

 素敵だ。

 ただふと気になったのは、このフレーズ、なんだか「古臭いな」って感じてしまう僕の感覚を、新入生も共感しているのでしょうかねえ??ひょっとして新しい語彙として受け取っている新入生もいるかもしれない。

だとしたらショックだなあ。こうやって、世代間に断絶ができて若者の感覚がわからなくなり、「最近の若者言葉は乱れとる!!」な~んってしかめっつらするおやじになっていくのですね、私も。これは人間である以上避けられないのかも。

 そーいや、なんのサークルだったか見てなかったわ。

 
 はははは、看板の機能としては失敗作ですね。

まだまだエジプトにて

2007-03-20 18:01:55 | 日本語
 やばい、やばすぎる。そろそろ日本かえらなあかんのやって!!

 などと叫んでみても世界は回る。仕方なくブログでも書こう。いくらエジプトにいても言語学を学ぶ身。たまにはエジプトにある日本語をグダグダといじってみます。

 こちらの楽器屋さんでやたら存在感を示しているのが、スズキというメーカーです。ギターなんかはほとんどスズキギター。僕はアコースティックギターにさほど詳しくはないんですが、スズキなんてメーカーあるのかなあ??

 まず日本が誇る超省エネバイクから考えると、スズキ、ヤマハなどが走っています。この時点で、スズキ、ヤマハというメーカーは日本の優良企業という認識が生まれます。

 話は変わってギター。こちらでもヤマハ楽器は各国で展開しております。ヤマハギターはいろんなところで見かけます。

 ヤマハ楽器があるんなら、スズキ楽器も作ったれー!!

なんていうノリでこっちの人が作ったメーカーじゃないのかなあ。



思いっきり推測ばかりの話でした。


ダンデライオン

2007-03-07 09:15:27 | 日本語
 暖かいから、もう春かと思っていたら、突然寒くなった関西地方より・・・

タンポポのことをダンデライオンといいますが、これってフランス語だそうです。
ユーミン、バンプ、リップスライムなどが曲名にしてヒットを飛ばしているので、結構普及していますよねえ。広辞苑にはのっていないんだけど。

僕はてっきり、

 ダンデラ イオン

だと思っていました(意味はわからんけど)。なんかのイオンを飛ばすのかな~などと思っていたら・・・

 ダンデ ライオン

「ライオンの歯」という意味だそうです。

 ポンデ リング

みたいなもんだな(どのへんが‘みたい’なのかうまく言えないけど)。

タンポポを「歯」に例えるのが不思議~。

「タテガミ」に例えるならわかるけどなあ。


おおお、やっぱりポンデリングみたいだなあ。


早く春よこい。←たんぽぽだと思ってみれば、たんぽぽに見える!!

「べき」の機能

2007-02-01 10:02:26 | 日本語
 日本語の初級で、「~なければならない」という文法項目を習います。学生さんが中級、上級とあがっていくと、「~べき」という項目が出てきます。ここでまじめな学生さんは、

 「べき」と「なければならない」はどう違うのか?

と聞いてくる人もいます(聞いてこない人ももちろんいる)。

 「べき」は、倫理的な義務に使うことが多く、法律や規則では使いません。

 法律 ?? 海外旅行にパスポートは持っていくべきだ。

     ○ 海外旅行にパスポートは持っていかなければならない。


 また、「べき」は忠告として、他人に使うことが多い。

    いくべきです。     (あなたは)

    いかなければなりません。(わたしは)

このように考えていくと、「べき」のほうが使用範囲が狭く制限されています。また、自分のことを言うのか、相手のことなのかで「べき」「なければならない」が使い分けられていることになります。

 日本語は主語を言わない代わりに文末表現が発達している

といわれていますが、「べき」も、まさにその例になります。文末を聞いたら、主語は想定できるんですね~


 主語がないのは日本語のシステムであり、日本人が非論理的であるわけではないのです。

言葉から見える文化

2007-01-23 13:46:13 | 日本語
 最近、日本語授受表現を外国人はどのように習得するのか、というテーマの論文を読みました。習得は大変のようです。日本語の授受表現とは、

 あげる もらう くれる

の3系統からなるもので、初級教科書ならどれでも扱っている、定番中の定番文法項目です。これっておもしろくて、物の移動を表現したいなら、自分から出ていく方向と(あげる)、自分に入ってくる方向(もらう)、の2系統があればいいわけです。3っつも要らないんですよね~。

 中国語 英語 朝鮮語 すべて 2系統しかありません。

 私は彼にパンをあげた。   I gave him a piece of bread.
 私は彼にパンをもらった。  I got a piece of bread from him.
彼は私にパンをくれた。 He gave me a piece of bread.

例を見ればわかるように、「くれる」というのは無くてもあんまり困らないんですよねえ。

 日本語と同様にカザフ語も3系統あるようでが、他の例は聞いたことがありません。なんで日本語はこんなにもののやりとり表現が複雑なのか?…

 日本人はもののやりとりに敏感なのかもしれません。

 結婚式には、お祝いのお返しにお土産をみなさんに強引に配ります。病気してお見舞いをもらったら、退院時にお返しをしなければなりません。出産祝いは、半額返すとか、お葬式もうちの地域では、引き出物を出します。

 そもそも、結婚、出産、病気、葬式、こういったイベントは物入りだから、みんなで助けましょうってのが起源のはずなのに、お返しするのはおかしいと思うんですよね~。

 この年になると、今までもらった結婚式の引き出物、出産のお祝い返しなどが山のようにたまってるのだ。


 ちっとは独身の身にもなれっちゅうねん。


 やばいやばい、文法ネタのはずが、負け犬ブログみたいになってもた。


 でもでもでもでも、やっぱつまらん伝統は嫌いだなあ。

 お祝いくらい素直にもらってよ~

アクセントを考える

2007-01-19 12:21:33 | 日本語
 ちとまじめな話。日本語には高低のアクセントがついていて、そのアクセントをちゃんとつけない人は、

 抑揚のないしゃべり方

なんて言われてしまいます。僕の友人にも全く抑揚のない人がおります。大学時代、はじめてしゃべった瞬間、すげーびっくりしました。その人は福井市出身でした。

 『日本の方言』にはアクセントの分布図が載っており、抑揚のないアクセント(本では「崩壊アクセント」という名前がついている!)は茨城から福島のあたり、西は九州の中部、あとは飛び地で福井市などに分布しています。ここまで読んでイメージがわかない人は、

 つぶやきシロー

 マギーシロー

なんかを想像してください。ちょっとタレントさんが古いわ~という若い読者(そんな人いるんか知らんけど・・・)には映画『フラガール』をみてもらうと、崩壊アクセントがよくわかります。

 おもしろいのは、この崩壊アクセント(僕はつぶやきシロー型と呼んでいる。)、京都を中心にコンパスで輪をかくと、ちょうど、東と西に同じ距離に分布しているんです。茨城と京都、九州中部と京都は、それぞれ距離が同じってことね。よって、昔京都で始まったこのアクセントが、東と西に広がっていったと考えている人もおられるそうです(主流ではないけどね)。

 ってことは、滋賀県も、み~んな抑揚がなかったのかも・・・


 想像するとおもしろい。

 
 残念なことに、アクセントは文字で表現できんので、おもしろさをブログで説明することが出来ない。

 みなさん、勝手に想像して~