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紀州への旅 (その2)

2025年04月16日 | 紀行文

 三月十四日未明、二人と一匹を載せた乗用車は信州松本の地を出発した。

 

 中央自動車道を南下し、小牧で東名に乗り換える。さらに名古屋近辺で、こまごました自動車道を何度も乗り換える。これが実にややこしい。案の定、左折すべき分岐点をやり過ごす不安に駆られ、慎重になった挙句、予定より手前の分岐点で左折してしまった。気づけば違う高速に乗っている。仕方ないから名も知らぬICを降りて、管理棟に入り、書類上の手続をして引き返した。このときは、係の人に過剰なまでにきびきびと、懇切丁寧に対応していただいた。まるで自衛隊の出動要請を受けたかのようであった。ETCカードでの高速の乗り降りが一般化した現在、こういう人たちはすることがなくなり、たまに私みたいな方向音痴が現れるのを手ぐすね引いて待っているのかも知れない。

 それにしても私の方向音痴は治らない。よくも治らないものだと自分でも思う。これが徒歩の旅で道に迷うなら、思いもかけない出会いと発見につながることもあるが、高速道路上だと単なる時間の浪費である。わかっている。わかっているけど道に迷う。

 そもそも、信州から紀州は当たり前であるが遠い。さらに途上、「名古屋大都市圏」が、関所の悪代官のようにでん、と鎮座して待ち受ける。道路を蜘蛛の巣のように張り巡らせ、どれを選べばいいのか新参ドライバーたちを迷わせ、結局どこを通っても渋滞でイライラさせる仕組みだ。私など迷ってばかりである。ナビを見ても迷う。迷うからとナビを消すと、なおさら迷う。助手席の妻はさっきから私の不機嫌を察して、何も喋らない。それもまた癪に障る。まったく、ハンドルを叩きたくなるような思いに駆られながらも、なんとか昼過ぎには熊野古道伊勢路、三重県の七里御浜にたどり着いた。

 

 

 全長25キロ、日本一長い砂浜海岸である。

 

(つづく)


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