た・たむ!

言の葉探しに野に出かけたら
         空のあお葉を牛が食む食む

高遠

2014年04月14日 | essay
 日曜日の朝、妻が新聞に載った写真を見て「高遠が満開よ!」と言うので、車を走らせて高遠の桜を見に行った。片道三時間かけて着いてみれば、何のことはない、まだほとんどが開花したかしないかである。満開の情報を問い質すと、「でも写真が・・・」と妻も言葉を濁す。情報とはそういうものである。それでも南向きの一部では見ごろのところもあり、出店は賑わっており、何よりごった返す観光客たちは、桜が咲いていようがいまいが、せっかく来たのだから何としてでも楽しもうという精神に溢れている。敷物を敷いて弁当を広げる人がいる。花よりおしゃべりに夢中なおばさん連中もいる。寝転がっている人がいる。その傍らで、主人同様寝転がっている犬がいる。その犬を写真に収めている人がいる。その傍らで、「犬を撮ってもしょうがないじゃない」と親族がぼやいている。何だか、歩いて回るだけで陽気な気分になった。

 

       原罪も 夢も 邪心も しがらみも 花と散りぬる この花の下


 
 句がやたら重いのは、桜を見ながら、妻と色んな知人の色んな人生の話をしたからである。人間とは花も好き、ゴシップも好き。誠にけったいな生き物である。

 
コメント
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