た・たむ!

言の葉探しに野に出かけたら
         空のあお葉を牛が食む食む

年の瀬のご挨拶を

2020年12月27日 | essay

 年の瀬である。石ころだらけの坂道をふらふらとよろめきながら下っていくように、不本意ながら駆け抜けた一年であった。旅行にも行けず、人に会うこともままならず、外食一つするのに妙な気を遣わなければならない。それがどれほどの効果があるのか知ってと言うより、外聞を気にして用心することの方が多かった。ただただ毎日同じ道を通って仕事場に行き、同じ道を通って帰宅した。詰まんない一年であった。仕方がないから人けのない山に登ったり、家飲みをして憂さを晴らした。家飲みと言えば、昭和の名曲『舟唄』の冒頭で歌われる、「お酒はぬるめの燗がいい~♪ 肴は炙ったイカでいい~♪」は本当なのか検証したことがあった。近所の魚屋でイカの姿干しを買い求め、登山用の携帯コンロに網をかぶせてイカを炙り、食いちぎりながら熱燗を飲んだ。なるほど酒によく合う肴だと思った。顎が少々疲れた。イカだけで飲めるほど海の男でもないなと自覚した。

 人生は人と会うことに意味がある。そんなことに改めて気づかされた一年であった。現在、長いものをちまちまと書き進めているので、このブログの更新が滞っている。それでも見てくれている人がいる。わずかなりと存在するそんな奇特な方に対して、申し訳ない気持ちで一杯になる。それで久方ぶりに更新した。大した記事は書けない。

 仰ぎ見れば、北アルプスはすっかり雪化粧している。バージンロードを行く花嫁のように美しい。中央高地特有のからりと晴れ渡った空にそれが映える。人間社会が右往左往しても、変わらず毅然と存在するものがある。

 来年はいい年になればと思う。初詣は人混みが怖いので、心の中で祈ろうかしら。

 庭に雀が降りてきた。犬が散歩を待っている。

 確かなものを、大切に過ごそう。

 

※写真は今年最後に登った戸谷峰。11月中旬。

 

 

 

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