なんということだ
わずかナノメートルのいたずらで
もう世の中はこんなにも生きにくいじゃないか
街では息すらろくにできないじゃないか
さあ靴を履き山に向かおう
名が知られてなくていい
看板もない里山でいい
ふかふかの朽葉を踏みしめ林をゆけば
木漏れ日に顔を洗い、汗ばむ背中を風で流せば
他に何が必要だったかわからなくなるのだ。
それだけで
もう自分には十分な気がしてくるのだ。
ここには絵画があり、音楽があり、すべてがある。
哀しみがあり、喜びがあり、生と死がある。
ほら────見渡してごらん!
ああ、なんと豊饒な枯葉色───────。
※写真は戸谷峰