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紀州への旅 (その1)

2025年04月10日 | 紀行文

 熊野古道というところは、若いころは、その存在すら知らなかった。

 社会人になったかならないか、経済的にははなはだ曖昧だった頃、今からもう二十年くらい前になるが、友人がかの地に行ってきたことを聞いた。しかもそこで運命の人と出会えたという。結局その人と結婚するに至った。その一部始終を聞いて以来、「熊野」は私にとって、パワースポットなどという名前が流行る以前から、何か強力なエネルギーを発散している神秘的な場所となった。

 とはいえ、何度かの引っ越しを経ても、日本のどの位置からも和歌山は遠いので、なかなか宿願を果たせずにいた。それがこの春、ついに熊野詣を敢行する運びに。既婚者なので結婚相手を見つけるわけにはいかないが、それでも何か素敵な発見があるかも知れない。同行者はいつも通り、妻と犬。有体に言えば、犬を連れていける圏内で旅行先を物色し、熊野が選ばれたのである。犬をどこへも預けられないと、なかなか苦労する。

 それでも半年くらいまえから旅の計画を念入りに練り、熊野古道の本やらパンフレットまで取り寄せて研究した。行き当たりばったりの我々夫婦としては珍しく用意周到だったのである。

 

 三月十四日未明、二人と一匹を載せた乗用車は信州松本の地を出発した。

(つづく)


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