失敗から学ぶ、ということが人生にはある。
今回の掃除機が、私にとってのそれだった。
掃除機について書くなんて『主婦の友』みたいで男子たる私はちょっと気恥ずかしいのだが、いいやしかし勇気を出して告発しよう。
掃除機を買うときの選び方のポイント。知ってますか? う~ん、私が期待する以上に案外みんな知っていて何だよそんな話かよと言われるかも知れないが、「吸込仕事率」である。
吸込仕事率。これが掃除機を語る上ですべてである。
私はこの春初めて掃除機を自分で選んで買った。金もなかったことだし、お、これ安いなあ、うんとても手ごろだ。サイクロンだってよ、ふーん、サイクロンって何だかわかんないけど、ツインターボなんだ。それもよくわかんねえや、でも紙パック不要とあるじゃないかおい、それってとってもエコノミーでひょっとして環境にクリーンだったりまでして、いいねこれ、いい、いい、スリムでさ、本体の中が透けて見えたりしてさ、それにわお! こんなに軽いぜ! ・・・と、つまりは結構満足して購入したのだ。
ところがこれが、肝心の掃除されるべき埃を全然吸わない。我が目を疑うほど吸わない。二度も三度も畳を滑らせたあとで、ひょろけた髪の毛がふふん、今のであたいを釣ったつもり? ふざけないでよ、と畳の上で依然として冷笑しているのだ。
吸い込んだゴミはサイクロンってくらいだから、くるくる回って防塵ネットの目を詰らせない、らしいのだが、すぐ詰る。二日運転させただけでもう詰る。吸引されたゴミは腰の重い年増女のように動かなくなる。こうなると吸引力はさらに格段と落ちて、吸ったはずの埃が別な所で落ちたりするのだ。
なんだなんだこいつは? とさすがに私も半年使って頭にきて(それでも半年使ったわけだが)、よくよく見てみると、「吸引仕事率12W」とある。12W? 他の機種は、と、店で昔からあるような型の掃除機を見てみると、「吸引仕事率530W」。なんだなんだなんなんなんだこの桁の違いは? 何倍なのかも計算したくなくなるようなこの隔たりはなんなんだ?
───ということで、本日やっと新しい掃除機、530W掃除機を手に入れた。動かしてみると、ああ、これだ、掃除機はこれなんだと思う。ずばばば、という何かとっても食欲に満ちた音で吸引口が畳に吸い付く。下手するてえと旦那、この畳ごと食っちまいますぜ、へへ、とうそぶくこわもての職人のような掃除機である。ここでようやく私は安堵のため息を漏らした。掃除機は、まさしく仕事率であった。
私は立てた掃除機に片肘を乗せて、感慨深く、今日の夕焼けを眺めたのであった。
と以上、なんだか椎名誠のような文体になってしまったが、このような瑣事的話題は椎名誠的文体が一番似合うと思ったからこれでいいや。椎名さんに怒られるかな。
今回の掃除機が、私にとってのそれだった。
掃除機について書くなんて『主婦の友』みたいで男子たる私はちょっと気恥ずかしいのだが、いいやしかし勇気を出して告発しよう。
掃除機を買うときの選び方のポイント。知ってますか? う~ん、私が期待する以上に案外みんな知っていて何だよそんな話かよと言われるかも知れないが、「吸込仕事率」である。
吸込仕事率。これが掃除機を語る上ですべてである。
私はこの春初めて掃除機を自分で選んで買った。金もなかったことだし、お、これ安いなあ、うんとても手ごろだ。サイクロンだってよ、ふーん、サイクロンって何だかわかんないけど、ツインターボなんだ。それもよくわかんねえや、でも紙パック不要とあるじゃないかおい、それってとってもエコノミーでひょっとして環境にクリーンだったりまでして、いいねこれ、いい、いい、スリムでさ、本体の中が透けて見えたりしてさ、それにわお! こんなに軽いぜ! ・・・と、つまりは結構満足して購入したのだ。
ところがこれが、肝心の掃除されるべき埃を全然吸わない。我が目を疑うほど吸わない。二度も三度も畳を滑らせたあとで、ひょろけた髪の毛がふふん、今のであたいを釣ったつもり? ふざけないでよ、と畳の上で依然として冷笑しているのだ。
吸い込んだゴミはサイクロンってくらいだから、くるくる回って防塵ネットの目を詰らせない、らしいのだが、すぐ詰る。二日運転させただけでもう詰る。吸引されたゴミは腰の重い年増女のように動かなくなる。こうなると吸引力はさらに格段と落ちて、吸ったはずの埃が別な所で落ちたりするのだ。
なんだなんだこいつは? とさすがに私も半年使って頭にきて(それでも半年使ったわけだが)、よくよく見てみると、「吸引仕事率12W」とある。12W? 他の機種は、と、店で昔からあるような型の掃除機を見てみると、「吸引仕事率530W」。なんだなんだなんなんなんだこの桁の違いは? 何倍なのかも計算したくなくなるようなこの隔たりはなんなんだ?
───ということで、本日やっと新しい掃除機、530W掃除機を手に入れた。動かしてみると、ああ、これだ、掃除機はこれなんだと思う。ずばばば、という何かとっても食欲に満ちた音で吸引口が畳に吸い付く。下手するてえと旦那、この畳ごと食っちまいますぜ、へへ、とうそぶくこわもての職人のような掃除機である。ここでようやく私は安堵のため息を漏らした。掃除機は、まさしく仕事率であった。
私は立てた掃除機に片肘を乗せて、感慨深く、今日の夕焼けを眺めたのであった。
と以上、なんだか椎名誠のような文体になってしまったが、このような瑣事的話題は椎名誠的文体が一番似合うと思ったからこれでいいや。椎名さんに怒られるかな。