た・たむ!

言の葉探しに野に出かけたら
         空のあお葉を牛が食む食む

2024年06月28日 | うた

 雨が重い。

 今日という日の一つ一つを雨が黒く塗りつぶす。

 青空に浮かぶ雲。

 そよ風を感じる散歩。

 賑わう街角。

 あの人の笑顔。 

 雨はいつの間にか私の心の中にまで降りしきる。

 もっと楽しかったころの記憶。

 もっと自由だったはずの人生。

 あの人の横顔。

 窓辺の長い沈黙。

 後悔と

 孤独。

 雨は無慈悲にすべてを冷たく濡らしていく。

 それが雨の慈悲なのだ。

 

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五月下旬、燕岳登山

2024年06月21日 | essay

 未明の清冽な空気の中きつく締める靴紐。

 ポールが駐車場のアスファルトに当たる音。

 山に足を踏み入れた瞬間の、腐葉土と全身が一体化するような感覚。

 木立から次第に届く朝日。

 鳥たちの絶え間ないさえずり。今日という日を懸命に生きる者のさえずり。

 森の匂い。

 ・・・・・

 ・・・

 山は、登り始めが一番好きだ。

 

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