た・たむ!

言の葉探しに野に出かけたら
         空のあお葉を牛が食む食む

一月の終わりの木曜日のバーで

2008年01月31日 | 習作:市民
 見えないんですか。あなたには。この雪が。私もう五杯目です。一人で飲み始めて二杯目かな。三杯目? 見えないんですか。あなたには。私の胸を翳るこの雪が。

 だが如何せん男性客の方は数十年前の桃源郷を夢見る唾液が今まさにダブルカフスに懸からんとしていた。こういうとき酒に強い女はえてしてあまりに多くのことを男に要求しすぎるのだ。

 私はあなたを置いては帰れない。あなたは私に帰られては、おそらく生きていけない。今日は随分冷え込むようね、マスター。そう。むしろ降った方が暖かくなるのに。マスター、あのね。向こうのあのお一人さん。私から一杯おごってあげて。嘘よ、嘘。はは。もちろん嘘よ。ごめんなさい。この人にお水のお代わりちょうだい。

  ☆   ☆   ☆

 あなた。ねえあなた。あなた。私あなたにとっていい女でいてる?
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氷結

2008年01月28日 | essay
 寒い。耐え切れなく寒い。朝起きてびろうな話ながらトイレに行き、昼にまた入ったら再び水面が凍っていた。それくらい寒い。

   
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休日の楽しみ方

2008年01月24日 | essay
 今シーズン初スキーに行く。
 知り合いのA氏と、A氏の知り合いのB氏と、男三人のツアーである。私が一番若い。B氏とは初対面であったが、私と年齢が一回りも違う。A氏とは体格が一回りも違う。これはどうしても私が喜んでハンドルを握らざるをえない。そもそも二人にとって今日は完全オフ日である。昼間から酒が飲める。私は夕方から仕事が控えているから飲めない。だからちょうど良いのである。我々三人は私の軽自動車に乗り込み、午前7時地元発、午後3時地元着という時間制限の中、片道二時間弱のスキー場へ向かった。
 ぼたん雪の舞う天候ながら、初スキーは爽快であった。それはともかく、驚いたのは同行二人の酒豪ぶりである。
 午前の「お茶」休憩で缶ビールを二本空け、昼食に入った昭和四十年代風の食堂ではビールの大瓶から始まり、おでんにモツ煮に熱燗へと、完全に宴会態勢である。飲めない私は大盛りカレーを平らげると一人でまた滑りに出たが、戻ってみるとまだ飲んでいた。食堂の親父と盛んに議論を交わしている。
 帰りの道中でもさらに飲み続けた。二人とも陽気な呑み助だから話を聞いているだけで面白いが、「どんどん真直ぐ行こう。どうせどこかに着く」などといい加減なナビゲーションをするから危険である。
 無事帰還の後、私は仕事場へ向かった。二人は夕方から飲む店の相談をしていた。
 何だか妙に感心させられた一日であった。
 
 カメラを忘れ、写真が一枚も無いのが心残りである。
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箱を集め続けている男

2008年01月21日 | 習作:市民
 箱を集め続けている男に出会った。

 「私ね、箱を見ているだけで安心するんですよ」
 
 「箱です」

 「ははははは。変でしょ。どんな箱でもいいんです。ええ。箱でありさえすれば───でも蓋がなくっちゃいけません。蓋がないのは箱じゃない。私的にはね。蓋が閉じて中が見えなくなって初めて、私の望む箱なんです。とても安心するんですよ。自分の隠れ家を見つけたときの喜びと申しましょうかねえ。え? そりゃごもっとも。ほんとに隠れるわけにはいきません。だいたい、そんな大きな箱はいらない。小さくていいんです。え? 手の平サイズでも十分ですよ。手の平サイズで十分。マッチ箱でもいいんだけど、あれは中にマッチがぎっしり入っていると相場が決まってますからねえ。そう。何が入っているかわからないくらいがいいんです。外から見えない空間が中にある。暗闇です。その暗闇を想像するんです。ははは。変でしょ。それだけで安心するんです。ほんとに。心が落ち着くんです。そういう箱の外側を手で撫ぜるとね、とても幸せな気分になるんです。ほら、こんな風に撫ぜるんです」
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休むということ

2008年01月15日 | 写真とことば
最近ぼんやりと

悟ってきた。

休息とは

回復したいと願っている

その願望の深さなのだと。


※写真はギャラリー牧ヶ原
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達人

2008年01月08日 | essay
焼き鳥屋で遅ればせの仕事納めを乾杯する。


ここに来るといつも、店主の徹底に感心する。


水商売というのは、いかに自分を出さないか


だとそのはげ頭がお辞儀するたびに物語る。


※写真は松本市民芸術館
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賀状がわりに

2008年01月01日 | Weblog
そも風に順風逆風の区別なし

舵の手一つで順風満帆

ええと、今年はこれで行きます。

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