ちゃんと感動しろ

2010年04月29日 15時27分00秒 | B地点 おかか

 

 

「おい」
「ちょっと見てみろ」
「八重桜が散ってるぞ」
「……それがどうかしましたか?」
「ピンクの絨毯ができたかも、と言っとるのだ!」

「さあ、見に行こう!」

「僕、今、ちょっと忙しくて」

「ちぇっ。私一人で行くぞ!」
「おっ!」
「お……おお……やはり……」
「遂に……この日が……」
「来た!」
「う~む、素晴らしい」
「こりゃ、たまらん!」
「う、うう……」
「最高だあ-っ!」
「おっと、奴のことを忘れてた」
「奴にも教えてやらねば!」
「お~い、上がって来い! ピンクの絨毯だぞ!」
「あっ、凄いですね!」
「いや~、綺麗ですね~」

「だろ? そうだろ?」
「う~ん最高だ~」
「……おい、他に言いようがないのか?」

「はあ?」
「もっと感情を込めて言えんのかっ!」
「そ、そうですね! やり直します」

「うむ」
「あああっ」
「最高だあああ~っ!」
「うむ。それでよし!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


落花

2010年04月28日 17時40分00秒 | B地点 おかか

 

 

「おかか先生は、さっきからずっと、あそこに居るんだよ」
「先生は、桜の花が一斉に落ちてくる瞬間を見たいんだって」
「でも、ほとんど落ちてこないんだ……」
「ねえ先生、もう諦めましょうよ」
「う、う~ん……」
「ここで待ってれば、見られると思ったんだがなあ」
「雨も上がったし、風も止んだから、しばらく花は落ちないんじゃないですか」
「うむ、そうかもな……」
「とにかく、僕はもう疲れました」
「ちょっと眠ります。おやすみなさい」
すやすや
「花が一斉に散るところを、ぜひ見たかったんだが」
「待ってる時には、見られないもんだなあ」
「……私も寝よう。おやすみ」
すやすや
猫たちが眠ってしまうと、
それまで静かだった花たちが、小さく揺れ始めた
そして、散っていった……

ぽとん
はらり
ぽとん
ぽとん ぽとん

ひらひら はらはら
哀れな散り際を、猫たちに見られたくなかったのか
それとも、猫たちを驚かせてやろうと思ったのか……
いずれにせよ、おそらく翌日までには、「ピンクの絨毯」ができているだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


猫が鼠に

2010年04月28日 16時28分00秒 | B地点 おむ

 



オムイ外伝 第三部(武芸帳篇) 第59話



「ふははは! くたばれ追忍め!」
「しまッた、オムイか!?」
「忍法、針鼠!」
オムイの背中から、
針のように鋭いトゲトゲが、無数に!
オムイはそれらを、追忍の体に突き刺した。

ちくちく グサッ
「ぐはあーッ」
「ははは! 猫が鼠に負けたな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


芸術的な写真を

2010年04月28日 15時58分00秒 | B地点 おかか

 

 

「やれやれ、二日続けて雨か」
「橋の下で雨宿りしよう」
「……今年の春は変だよなあ」
「寒い雨の日が多すぎるぞ」
「まあ、天気を嘆いても始まらんが」
「……おや、止んだかな?」
「いつもの場所に行ってみるか」
「……何だ、まだ霧雨が降っているではないか」
「……しかし、あれだな」
「八重桜が満開だな」
「もう、少し散り始めたし。明日あたり、ピンクの絨毯が拝めるかもしれん」
「先生、こんにちは!」
「ね、後ろの壁を見て下さいよ!」
「後ろの壁だと?」
「そうです、先生の後ろのコンクリですよ」
「ほら、散った花びらが」
「雨で濡れて、たくさんへばりついてます」
「ねえ先生、この壁をバックにして、写真を撮ってもらいましょう」
「きっと素敵な写真になりますよ!」
パシャッ
「お、いいね! 私も撮ってもらおう!」
パシャッ
「……なんだか、フケが飛び散ってるみたいですね」
「そ、そんなぁ……」