メルヘンは残酷なもの

2010年04月26日 15時17分00秒 | B地点 おかか

 

 

オムイ外伝 第四部(奇想天外篇) 第35話



オムイ追討の使命を帯びて、旅を続ける追忍である。
「くそッ。オムイの足取りを見失った」
「やれやれ、疲れたわ」
「ここらで一休みするか」
と、その時、背後のイスが、突然、語りかけた。

「もし、旅のお方……」
「こ、これは異な! 椅子が喋るとは!?」
「私は、魔物の妖術によって、椅子に姿を変えられてしまったのです」

「な、何と申すッ?」
「あなた様が接吻して下されば、私は元の姿に戻れるのです」

「接吻とな!?」
「……う~む。西洋の童話で聞いたような話だな」
「どうやら、童話の世界に迷い込んでしまったらしい」
「さて、どうしたものか。椅子に接吻する趣味はないが……」
「しかし、人助けとあらば、致し方あるまい!」
「では、今から接吻するぞ……」

「恐れ入ります」
ちゅっ
どろろ~んぱっ

「ありがとよ! 元の姿に戻れたぜ!」
「うわッ!? き、貴様、オムイ!」
「くたばれーッ」

いきなり襲いかかるオムイ。
「ぐはあーーーッ」
ドサッ
「ひ、人助けしたのに……余りにも救いがないではないか……」
がくっ
「童話とは本来、そういうものよ……」