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オムイ追討の使命を帯びて、旅を続ける追忍である。 |
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「くそッ。オムイの足取りを見失った」 |
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「やれやれ、疲れたわ」 |
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「ここらで一休みするか」 |
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と、その時、背後のイスが、突然、語りかけた。
「もし、旅のお方……」 |
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「こ、これは異な! 椅子が喋るとは!?」 |
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「私は、魔物の妖術によって、椅子に姿を変えられてしまったのです」
「な、何と申すッ?」 |
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「あなた様が接吻して下されば、私は元の姿に戻れるのです」
「接吻とな!?」 |
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「……う~む。西洋の童話で聞いたような話だな」 |
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「どうやら、童話の世界に迷い込んでしまったらしい」 |
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「さて、どうしたものか。椅子に接吻する趣味はないが……」 |
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「しかし、人助けとあらば、致し方あるまい!」 |
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「では、今から接吻するぞ……」
「恐れ入ります」 |
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ちゅっ |
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どろろ~んぱっ
「ありがとよ! 元の姿に戻れたぜ!」 |
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「うわッ!? き、貴様、オムイ!」 |
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「くたばれーッ」
いきなり襲いかかるオムイ。 |
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「ぐはあーーーッ」 |
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ドサッ |
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「ひ、人助けしたのに……余りにも救いがないではないか……」 |
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がくっ |
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「童話とは本来、そういうものよ……」 |