土佐のくじら

土佐の高知から、日本と世界の歴史と未来を語ろう。

日本文明の正体 (経済編)

2013-10-04 18:15:51 | 日本文明論

土佐のくじらです。

来年4月から、立法化されていた消費増税法案が施行されることとなりました。
施行を阻止、または延期できなくて残念で、日本を憂える者として力不足を感じております。

以前私はブログ記事で、「日本経済はハイパーインフレになれない。」と言い切ったことがございます。

「世界のこととか、経済常識などは知らないけれども、とにかく、現代日本はハイパーインフレにはなれないのだから、国債でも政府紙幣でも、円の刷り足しでも構わないから、増税だけはやるな!」という意味でございます。

ハイパーインフレは、物不足でなければ起きないのです。
現代日本は、絶対に物不足にはなれません。
(ただし、石油輸入ルートが封鎖されなければ・・・という前提条件があります。)

お金がいくらあっても、街の電気屋さんが一つで、商品としての冷蔵庫が一つならば、値段はどこまでも上がります。
これがハイパーインフレです。

日本ではその気になれば、すぐにたくさんの冷蔵庫が商品化され、お店にズラーっと並びます。
ですから、市場経済の現場では、確実に競争が起き、値段はそれなりのところで、必ず落ち着くのです。

日本は、物つくりの技術と力量が突出しております。
世界の工業製品は、本当は全て日本国内で作れます。

なぜなら、世界の工業性品の、部品のほぼ100%は日本製だからです。
フォルクスワーゲンも、メルセデスベンツもBMWも、ポルシェもフェラーリも、ジャガーもロールスロイスも、部品は日本製です。
つまり今の世界は、日本製品の組立工場と言えるかも知れません。

また日本は国土も狭く、道路網も隅々まで行き渡っております。
ですから、製品は確実に手元に届きます。

また今時の日本国内では、電気・水道・ガスのない家は存在いたしません。
ですから、電気釜も冷蔵庫もテレビも売れます。

日本の 【高い製造能力】 と、張り巡らされた基本インフラによる、【高い流通機能】 が、ハイパーインフレの原因である、【物不足】を回避させるので、いくら資金があっても、急激な物価高(ハイパーインフレ)には、日本は決してなれないのです。 

こういう恵まれた環境は、世界で恐らく日本が唯一でありましょう。
他の国は、日本ほど物余りになれません。
ですから、お金を刷りすぎると容易にハイパーインフレに陥ります。

たとえば、
高い製造能力は、巨大ダムのようなものです。
その気になれば、いくらでも物を作り出せる能力というのは、満々と水を蓄えた、優秀なダムと言えます。

流通機能をたとえれば、張り巡らされた用水路ですね。
用水路があるとないとでは、農業の方法がまるで違ってきます。

枯れることなき巨大ダムがあり、そして、いつでも用水路から、必要な水が供給されることが当たり前ならば、【我田引水】という言葉で表せるような、争いごとは絶対に起きませんね。

もしも、こういった背景なしで、たくさんの農地があれば、当然水を求めての奪い合い、トラブルや争いが数多く発生するわけですね。
水の価値が跳ね上がります。
これが、ハイパーインフレ状態であります。

多くの農地があること・・・これが即ち、市場に通貨が多量にある状態です。

日銀は長年、通貨制限をしてきました。
それは、水の供給量に合わせて農地を制限する考え方です。

たくさん農地(通貨)があっても、水(物)さえ十分に供給されていれば、水騒動は起こらない・・・つまり物価は上がらない・・・ハイパーインフレは起こらないのです。

日本という国は、水の供給(製造・流通)は無尽蔵にあるのに、農地(通貨)を制限する方が、むしろトンチンカンな判断なのですね。

このように、農地にたくさんの水が供給できる仕組み、基本インフラが強いのが、実は日本経済の圧倒的な強みなのです。

製造業や基本インフラの弱い国で、通貨を大量に発行すれば、いとも簡単にハイパーインフレは発生してしまいます。
それは、そのような国や地域が、構造的に慢性的な物不足状態だからです。
水がないのに、農地開拓した状態ですね。

ひょっとしたら日銀や政府は、このことを知らないのではないか・・・と、私は思っていましたが、どうやら官僚の生活レベルを保持するために、物価統制と税金による景気操作をしていたものと今では思っております。

これに国民教育を加えたものが、実は、明治時代以降日本人が創り上げてきた、日本文明の正体ではないかと、私は思っております。

経済学でもっとも恐れられる、ハイパーインフレの恐怖、その原因そのものをなくしてしまった、偉大な文明が日本文明です。
まだ途中段階ではありますが、台湾や韓国も、基本的には同じ経済構造です。
彼らは、日本の直弟子ですね。

中国の経済モデルは台湾ですから、中国は日本の孫弟子に当たると思います。
(随分と、お生意気な孫でありますが・・・笑)

その他、東南アジア諸国、インドなど、日本モデルを参考に、経済発展を目指している国々は、数多く存在致します。

この日本型経済モデルというのは、絶対に失敗がないですし、経済発展のために犠牲になる人が、基本的にいないのですね。
なぜなら、誰からも奪わない経済文明だからです。

そして、日本のような資源のない国であっても実践可能ですし、努力すればその分だけ、確実に国民が豊かになり、その結果、国家が豊かになるのです。

日本文明は世界の国々に、大きな大きな、希望を与えるモデルです。

経済官僚は、自分たちの生活レベルという、矮小化された世界観で、日本経済をいじらないでいただきたいですし、政治家の先生方も、日本は世界に対して希望と責任を背負っていることを知った上で、行政判断をしていただきたいものです。


天下統一、秀吉流現実主義的天下布武

2013-10-04 06:50:00 | 歴史の読み方

土佐のくじらです。

さて、信長の死後、織田家の実験を握ったのは、羽柴秀吉、後の豊臣秀吉です。
秀吉が実験を握ったことで、織田信長のモットー、天下布武は継続されました。

信長と秀吉、そして家康の共通の理念は、天下布武=脱戦国であったと思います。

信長派以外の武将は、天下を取りたい・・・とは考えていたかも知れません。
しかし、戦国時代を終わらせたい・・・とは願っていなかったと思います。

信長亡き後、秀吉が織田家の実権を握りますが、もしもこの時に、全日本をイメージできる武将がいたならば、既に全包囲されていた織田勢力は、他の武将勢力によって駆逐されていた可能性が高いです。

他の勢力は、自国領土の拡張には興味はあっても、全日本をどうする・・・と言った視点はなかったはずです。
でなければ、のん気に羽柴秀吉VS柴田勝家といった、織田家の内部抗争などできるはずはありません。

ともあれ、織田信長の実質的後継者は、豊臣秀吉になりました。

織田信長と秀吉の違いは、信長がそれまでの秩序の破壊者であったのに対して、秀吉はそれまでの秩序を、利用する形で温存しようとしたことだと思います。

たとえば、朝廷由来の豊臣姓を名乗ったり、関白・・・つまり、朝廷の最高権力者に就任しようとするなど、信長が無視したかつての秩序に寄り添ったのですね。

それによって秀吉には、ある意味での安心感を、当時の伝統社会に与えたと思われますね。

また、信長が敵に対して厳しく、殲滅型の戦いも多く、敵は増える一方となり、最後は全方位で戦っておりました。
相手は負ければ殲滅されますので、天下を狙わないまでも、必死の抵抗だったと思います。

この全方位での戦い方は、戦前のABCD包囲網下での旧日本軍と同じで、とても撤退が難しいです。
そして、どこかで手痛い負け方をすると、その後ズルズルと敵を引き入れてしまいます。

歴史家で、「もしも信長が、本能寺の変から生き残っていたら、全国を統治し云々・・・。」ということが語られますが、私はどこかで頓挫したのではないかと思っております。

信長流、原理主義的天下布武の限界を、秀吉が知ってかどうかはわかりませんが、秀吉は信長流の全方位での戦いを止め、四国なら四国、九州なら九州、関東北条家ならそれ単独に・・・と、大軍を擁しながら、戦力の集中を図る戦い方をしております。

とても現実的ですし、勝率がはるかに高いですよね。

また、直接対決には負けたはずの、三河の徳川家康とは、同盟のような形で臣下に加えています。
やはり秀吉・家康の両者は、信長の意思、天下布武の共通理念を持っていたと思うのです。

秀吉と家康が長期的に相争い、覇を競い続けるならば、日本は再び戦国時代に逆戻りします。
家康は、小田原の北条家と同盟関係にあり、徳川-北条連合+東北勢力ならば、まだ天下を十分狙えました。

しかし、信長・秀吉・家康には、当時の世界が見えていたと思うのです。
ですから姻戚関係にあった北条家とは組まず、天下布武の理念の下、秀吉に組したと考えます。

しかし秀吉と家康が手を組めば、№1勢力と、№2勢力との連合となります。
国内最大最強勢力となり、戦国時代を止められるのですね。

北条家は、独立の気概はあったでしょうが、海の向こうまで見えてはいなかっただろうと思います。

そして殲滅型の信長とは違い、秀吉はTOPだけの切腹させるなどして、できるだけ人を殺さない方法論を選択するところがありました。

そして旧来の勢力を排する形での統治ではなく、旧来勢力の力を弱めて残すやり方で、全国を統一したのです。
天下布武の実現は、軍事力だけではなく、軍事力を極力使わない政治力によって成されたのです。

                                           (続く)