今日も一日小雨がちの日であった。最高気温は20度で、職場では風邪を引いた人もいた。夜間は春先のような気温になる。まだ8月だと言うのにやはり予想通りの冷夏にふさわしい感じだ。職場の裏山の百日紅の木も花が次々に開いては来ているが、例年に比べるとかなり花に勢いが感じられない。庭の山野草もしばらく蕾が膨らんで来ないままでいる。日照時間が極めて少ない。恐らく農作物には間違いなく影響が出るだろう。 地球上に初めてヒト属(ホモ属)に属する生物種ホモ・ハビリスHomo habilisが登場した200万年前から人類は「道具」を使いながら現代まで進化して来た。その道具は現代に入って急速な発達をみせ、地球環境を激変させた。ビッグファイブと言われる地球上での5回の大量絶滅は、6550万年前が最後であった。しかし、現在地球上では6度目の大量絶滅が起きている。地球上には科学者の推定では最高1000万種の生物種がいると言われているが、現在の絶滅率平均は、過去6000万年間の平均より1000倍から10000倍も高い。過去5回の大量絶滅の原因はて、火山の爆発や地球への隕石の衝突、気候の変化などであったが、現在進行中の大量絶滅はまさに人類そのもが引き起こしている。生息環境の劣化と破壊で、絶滅に瀕している種の9割がこの影響を被っていると言われる。英国のリーズ大学のクリス・トーマスChris Thomas教授らの研究では2050年までに生物種の4分の1が絶滅するとしている。また同じ英国のデューク大学のスチュアート・ピムStuart Pimm教授はやはり2050年にはすべての種の25%から50%が滅びるか、または生き残るために必要なだけの個体数を維持できなくなると見ている。世界の森林は毎年1600万ヘクタールずつ縮小し、中南米、中央および西アフリカ、東南アジアという、種の多様性を誇る熱帯林のある地域が最も急速に植物が消えて行っている。人類は大草原や森林を切り開いて農地に変え、河川をせき止め、湿地帯を干拓し、地面を舗装し、都市や道路を築いて来た。種の絶滅は生物の多様性を失うことである。人間は動物なのであり、動物は植物と違ってエネルギーを自ら体内で作り出すことが出来ない。人間を含めたすべての動物は植物が作り出した有機物を消費することで生きている。そして、その植物は動物の排泄物などで微生物を介して支えられている。人間の生命は直接、間接に他の動物種の多様な存在で維持されている。過去の5回の大量絶滅ではいずれも再び生物種の多様性を回復するのに毎回1000万年以上を要している。人間は他の生物種や植物の多様性によって初めてこの地球上に命を与えられている。しかし、我々はその事実をすっかり忘れてしまっている。1992年に締結された生物多様性条約は168カ国が調印しているが、二酸化炭素削減の京都議定書と同じく、世界最大の大国である米国は調印していない。それもあって、実際にはこの条約も効力が見られない。現在の地球上には71億人もの人が住んでいる。1万1000年前に農業が出現した時の地球上の人口は600万人であったと推定されている。従って、それ以来1000倍以上に膨れ上がっているわけである。しかもその大部分は自然から離れた町や都市に住む。しかし、人々が離れた自然の中の多様性こそが唯一人間を生かしてくれているのだ。多様性こそが動植物が地球上に出現して以来、環境の変化の中で生物や植物が生き残って来た最大の要因なのだ。今月20日に発生した広島市の土砂災害もあれほどの犠牲者や被害をもたらしたのは明らかに人災である。15年前にも同じことが起きている地域で、研究者からも警告されていたにもかかわらず、それを無視して宅地造成が行なわれた。自然の破壊を進めることで自ら被害をもたらしてしまった。地球規模で同じことが今進んでいる。しかもそれが止められないままにいるのだ。
椿を覆い尽くす葛(くず)の葉 この根が漢方の葛根湯(かっこんとう)となる