釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

自然を手放す代償

2013-06-19 19:20:53 | 社会
東北は梅雨前線ではなく低気圧のため、今日は朝から雨が続いていた。庭の花たちにはいい雨になる。雨のせいで小鳥たちの声はあまり聞こえて来ない。雨と霧で1Km離れた山が一時まったく見えなかった。先日、職場の人と話をしていて、面白い話を聞いた。岩手の人にとって、秋田弁は分かるが、津軽弁はほとんど分からないそうだ。まるで韓国語を聞いているようだと言う。また、青森県の八戸市の人たちは盛岡に向いており、岩手県である一関市の人たちは仙台を向いていると言う。職場の気仙沼出身の伝統の匠の方にこの話をすると、気仙沼市は宮城県だが、周りは岩手県に接しており、東京などに出るためには一関市へ出なければならないため、岩手県に向いているのだと言う。 山野草が好きになり、時にはネットで山野草を探すことがある。中には自然種ではなく、人工的に交配した山野草なども見受ける。以前からペットショップでむやみに別種同士を人工交配し、意図的に雑種を作出したペットが売られていることは知っていた。直接遺伝子を操作するのではなく、交配段階で人の手を入れることは歴史的に行なわれて来た。いわゆる品種改良である。しかし、それらは時間をかけて環境に適したものを選んで来た。経済効率を優先すれば、時間をかけた改良は捨てられる。現在スーパーなどで見かける野菜のほとんどは1代限りの雑種が売られている。かっては農家が自ら受粉して、種を確保して翌年に備えて来た。現在は農家が種苗専門業者から毎年種を購入し栽培をする。種苗専門業者はスーパーや農家の希望する種を交配により作出して1代限りの雑種の種を販売する。見かけがきれいで、たくさん収穫出来るものが業者の交配で創り出される。植えられる環境とは無関係に作られるため、多くの肥料と農薬を必要とする。農家は高齢者が多く、手間がかからず、たくさん収穫出来、見栄えもいいものが作れるため、毎年種を購入することを厭わない。昔ながらのその土地にあった品種を維持するためには自ら受粉されたものから種を確保しなければならない。こうした固定種とか在来種と呼ばれる品種を栽培する人がほとんどいなくなってしまった。1代限りの雑種、F1品種(first filial generation)が幅を利かせる世になってしまった。肥料を作る化学会社と交配を行なう種苗会社に頼らざるを得ない農業に変わってしまった。アイルランド生まれのジョン・ムーアJohn Moore氏は英国シェフィールド大学を卒業後教師をやっていたが、その後、米国の広告代理店や日本の同じく広告代理店である電通などに勤め、米国のアウトドア用品販売で知られる「パタゴニア」の日本支社長を勤めた。その間世界で農業の在り方を見て来た。「パタゴニア」を辞め、現在は高知県の仁淀川上流の最奥地で野菜の在来種の有機栽培を行い、その土地に適した在来種を守り、在来種の重要性を訴え、農家が自分たちの手で在来種を育ていく活動を行なっている。仲間と在来種の種子バンクを立ち上げている。氏が住んでいる仁淀川上流の最奥地では、農家が30種もの作物を自家採種して来ており、氏はこここそが自分の考える農業が実践出来る場所だと思えたそうだ。何百年もの歳月をかけてその土地に合った作物が作られ、遺伝子的に固定された。形は悪いかも知れないが、美味しく、その風土に強いものが受け継がれて来ていた。農薬を使う必要もなかった。今や、こうした在来種はどんどん失われ、人の身体もその影響を受けつつあるように思う。アレルギー性皮膚炎や鼻炎、喘息などはこうした食物も無縁ではないように思う。一昨日、金沢大学の山田敏郎教授らは、国内外で広く使われているネオニコチノイド系農薬が比較的低濃度でもミツバチに「蜂群崩壊症候群(CCD)」に似た現象を起こさせると発表している。ミツバチの群れが巣箱から消える。ミツバチに影響を与える農薬が人にまったく無害ではあり得ない。ネオニコチノイド系農薬を造り、悪名高い「モンサント」と提携する会社の会長を務める経団連会長は、TPPを推進している。
雨の中で咲いた白花紫蘭