シブヤ

ひょんなことから／ひさびさの友と／
フランスから来た写真家と／呑むことになって
我がフランス語は／使われること無く／
すっぽり抜けてしまったおかげで／最初は／ぎこちなかった会話も／
酒が回ったおかげで／いくぶんなめらかになり
ますますおしゃべりに／火がつく彼らを横目に／
翌日の仕事に／後ろ髪を引かれる思いで／
賑わう店を／あとにする

ああ／そうだ／この感じ
日付がかわるころのシブヤって／そういえばこんな感じ
学生たちが／勢いあまって／舗道にねころび
サラリーマンは／赤い顔を隠すように／
うつむいて座ったまま／寝息をたてる
昼間の無表情なシブヤとは／ひとあじちがうんだ
不謹慎を承知で／言ってしまおう
かっこつけないで／ありのままでただ／佇んでいる
そんなあなたが／私はスキだ

語りつくせぬ思い

長崎から届いた
いちまいのハガキ。
懐かしい名前と筆跡。

手にしたとたん
あの、どこまでも高く
やさしげな空と
おだやかな海が
心のなかに広がったんだ。

海のない土地で育った我が身が
欲している所以か、
はたまた、遠い昔にやってきた
異国の使者への憧れなのか。

言葉にのせて語ろうとすると
逃げていってしまうから。

もうしばらくの間
心にとどめておこう。