十字軍物語の最終巻は13世紀。第1章は神聖ローマ帝国皇帝フリードリッヒ二世による第六次十字軍。法王から破門されながらも現地に赴き、講和によるイェルサレム奪還を成し遂げる。第2章はフランス王ルイ九世による第七次十字軍。最高の軍団を率いてエジプトに攻め入るが、マメルークの軍団に敗れ、十字軍全体が捕虜になってしまう。第3章はルイによる再度の第八次十字軍や最後の都市アッコンでの壮絶な戦いが語られる。そして最後の第4章では、二つの世界のその後がさっと紹介され、そして現在にまで及ぶ「正戦」に思いを馳せて物語は閉じる。
サガンはフランスの女性で、この作品は彼女の18歳のときに書いた処女作だそうです。主人公セシルは著者と同じくらいの少女。その父レエモンとの愉快な生活、父の愛人エルザ、セシルの恋人シリル、夏の避暑地、理知的で落ち着いた女性アンヌ。セシルは気楽な生活が壊されるのが嫌で、エルザとシリルと共謀していく。そんな話。文体は美しく、意味深く、微妙なニュアンスがあるという。その文体がどれほどよく訳されているのかは分からないが、とても読みやすく、それでいて心の内面が移ろいでいく様がなんか良かった。特に始まりと終わりが良い。
んー。何が面白いのか理解できないのが半分くらい。前半はまあまあ面白いと思っていたが、後半はもはや惰性で読んでいただけ。巻末の話(?)もなんだか意味わからない。とはいえ、このシュールさがこの作家さんの持ち味か。
福招き寺シリーズ第2弾。実家のお寺の手伝いをすることになった主人公が、身の回りで起こるちょっとした事件を解決していく。今回も5つの優しい話でした。
筒井康隆さんのショートショート。かなり初期のもののようです。短いもので2ページ、長いものでも20ページくらい。どれも面白かったが、まあ、表題作が分かりやすく面白い。話の背景説明とタイトルでなんとなくオチは予想ついていたが、そのユニークな結末の予測にちょっと油断して、最後の2、3行でのさらなるオチでもう一度盛り上がる。良いですね。
DOG & DOLLに続く音楽エッセイ第2弾。相変わらず音楽に関わるのか関わらないのか分からないような話をしています。スペシャル対談は、よしもとばななさん、浦沢直樹さん、京極夏彦さんという超豪華な人たち。それらもまあ音楽に関係してなくはないかなって感じの話題でそれぞれ盛り上がっている(と思われる)。今回で終わりだそうです。
女子中学生たちのスクールカーストを題材にした6つの短編。陰惨なイジメに憤慨するような作品があれば、女の子たちには結局は悪い子なんていないと思えるような話もありました。表題作はおもいっきり前者、「死にたいノート」「放課後のピント合わせ」は後者、「ねえ、卵の殻がついている」「好きな人のいない教室」「プリーツカースト」は中間って感じ。ハッピーエンドが好きな私としては、「死にたいノート」が最も気に入りましたが、この話のようにいくことは、残念ながら、まあ、まれなんだろうと思いました。
森博嗣さんが大絶賛していたので、読んでみることに。ドイツの寄宿学校と思われる場所を舞台とした少年たちの愛と苦悩の物語。
「ユリスモールへさいごに
これがぼくの愛
これがぼくの心臓の音
きみにはわかっているはずだ」
こんな手紙を残して死んだトーマ。苦悩するユーリ、ユーリを見守るオスカー、トーマに瓜二つのエーリク。それぞれの心のうちが痛いほど伝わるような大作でした。
シリーズ第10弾。前作に続き、今回は1冊まるまる税務調査の話。まあ、どうってことはないのだろうが、そこそこの緊張感のあるストーリーライン。そんで、ついに沙名子と太陽は婚約。勇太郎と沙名子の関係を少し疑問視しているような太陽。こちらもやや緊迫感ありです。沙名子が作った結婚に向けたタスク一覧には、太陽は一言も言葉なく、クスッとくる。いずれ社内でも、打ち明ける日が来るのでしょうね。なんだか楽しみです。今回も山崎はちらっとだけ登場したが、税務調査ごときをそれほど気にせず、あくまで山崎でした。
忘却探偵シリーズ第8弾の今作は久しぶりの隠館厄介による語りの長編です。厄介は旅行先のパリで偶然に今日子さんに出会う。エッフェル塔を盗むという謎の予告状により、依頼を受けた今日子さんだったが、どういうわけか、今日子さん自身が怪盗となってしまうのです。まあ、厄介がしっかりと今日子さんは探偵だと何度も誠実に伝えれば済むだけのような話で、イライラしますが、これは西尾さんの作風であり諦めるしかありません。でも、なぜかは分からないけど、厄介語りが一番面白いと思うのです。