2013年12月6日(金)
J-PARC、直線加速器今月にも再開 ビーム強度10分の1で茨城新聞
【写真説明】J-PARC物質・生命科学実験施設を調査する県や市町村の職員ら=東海村白方
5月に放射性物質が外部に漏れた東海村白方の大強度陽子加速器施設(J-PARC)について、J-PARCセンターは5日、事故以来停止中の3台の加速器のうち、リニアック(直線加速器)を今月中にも性能を確認するため、10分の1程度のビーム強度で運転を再開させることを明らかにした。同日行われた県と東海村など7市町村による事故再発防止策を確認する立ち入り調査で説明した。
J-PARCは、全長約330メートルのリニアックと、1周約350メートルの円形加速器「3GeVシンクロトロン」、1周約1600メートルの円形加速器「50GeVシンクロトロン」からなる。
同センターは事故があった原子核素粒子(ハドロン)実験施設を除く物質・生命科学実験施設を早ければ2014年1月、ニュートリノ実験施設を同4月にもそれぞれ運転再開する方針を固め、リニアックは今月、3GeVは来年1月、50GeVは同3月に性能確認のための運転を順次始める予定だ。
リニアックの性能確認は本格運転時の10分の1程度で、ビームの加速エネルギーや大きさ、電流の安定性などを確認する。同センターは「まずは実験ができる準備を進める。もちろん本格的に動かすためには、自治体の了解を得られることが必要だ」としている。
このほか、ハドロン実験施設は事故原因を究明するため、遮蔽(しゃへい)体を撤去して、今月中にもファイバースコープで金標的を目視調査できるとした。早ければ年内にも調査結果を発表する。
立ち入り調査では県などがハドロン実験施設以外の安全対策、非常時対応訓練の実施結果やマニュアル整備などの再発防止策の実施状況などを確認。調査結果は年内にも開かれる県原子力安全対策委員会で公表される。
同センターの池田裕二郎センター長は「新しいJ-PARCがやっと一歩踏み出せたが、まだまだこれから。一歩一歩着実に進め、いち早く信頼を回復し、安全安心を提供できるよう頑張りたい」と話した。