メルトダウン
コラム:新興国危機は誰のせいか
[1日 ロイター] - Felix Salmon
アルゼンチンやトルコなど新興国の金融市場で最近起きている混乱について、ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏とトルコ出身の経済学者ダニ・ロドリック氏が、論説で意見を戦わせている。
両氏は過去何十年もの間、新興国市場の動向を見守ってきた世界的な経済学者だ。さらに言えば、2人とも左派リベラル系の世界観の持ち主 であり、イデオロギー的もしくは哲学的な意見の相違はないはずだ。だが、今回の新興国市場の混乱については真っ向から対立しているように見える。
クルーグマン氏は、「トルコが問題なのではない。南アフリカやロシア、ハンガリー、インドのほか、現在危機に見舞われているその他の新興国も問題ではない。本当の問題は、米国やユーロ圏諸国など先進国の側にあり、こうした国々が自国の根本的な弱点に対処できていないことだ」と主張する。
一方、ロドリック氏の主張はこうだ。「新興国市場は不運でも不当な犠牲者でもない。ほとんどの場合は単に自分たちがまいた種の報いを受 けている」。実際、新興国市場の混乱は国内問題に端を発しており、他国のせいではない。新興国が訴える不満は、大部分が自国の問題にもかかわらず他国を責 める典型例にも見える。
しかし一歩離れてみると、クルーグマン氏とロドリック氏にある程度の共通した意見も見えてくる。現在急落に見舞われている新興国市場 は、米連邦準備理事会(FRB)の量的緩和(QE)政策によって生まれた膨大なキャッシュが流入したことで高騰していたという部分だ。相場の調整は不可避 であり、また資金がどこから流入していたかは一目瞭然だ。
とは言うものの、両氏とも、新興国市場でのバブル発生でそもそもFRBを責めている訳ではない。FRBには米国経済のためにすべき仕事 があり、それを実行したまでのことだ。QEはその一環に過ぎず、FRBが金融政策を決定する上で、地球の反対側で起こり得る予期せぬ結果を過度に心配する ことはできない。
クルーグマン氏もロドリック氏も、今回の新興国市場における危機が、米緩和縮小に対する「癇癪(かんしゃく)」によるものだということ に異論はないようだ。QEが縮小され、終わりに向かいつつある現在、緩和マネーの流入に依存してきた新興国経済が苦境に追い込まれているのだ。
しかし、ここから2人の意見が分かれる。もし筆者の解釈が正しければ、クルーグマン氏の考えはこうだ。米国の経済政策がうまく機能して さえいれば、経済は今より活力にあふれ、緩和縮小を補う以上の巨額マネーを新興国にもたらしただろうと。米国民の雇用が安定し、米企業が急成長すれば、彼 らは投資先として自然と海外に目を向けるようになり、新興国市場へのマネー流入は健全であり続け、故に危機は回避できたというものだ。
しかし実際には、米国の雇用は伸び悩み、米企業も過剰なほどの慎重姿勢を崩していない。そして市場は、QEの終わりは新興国への資本流入が事実上終わりを意味すると判断した。その結果が「急停止(サドンストップ)」だ。すべての急停止には耐えがたい痛みを伴う。
一方、ロドリック氏は、現在の危機は新興国自身の過ちの結果だと指摘。そもそも移り気で不安定な流入マネーに安易に頼り過ぎてきたせい だと主張する。さらに悪いことは、新興国経済は困難に陥るたびに、国際資本の流入をさらに受け入れやすい傾向になることだとしている。FRBの政策にかか わらず、これは悲劇的な運命をたどるシナリオだ。
2人の主張は完全に矛盾するわけではないが、突き詰めていくと、ロドリック氏の考えの方が重要かつ正しいように思われる。確かに、米国 経済が好循環していれば、新興国市場への資金流入はもう少し長く続いたかもしれない。しかし、クルーグマン氏自身が示しているように、新興国市場への資本 流入の急停止は、米経済環境がいかなる状態であれ、そしていかなる理由であれ起こり得る。
以下はロドリック氏の引用である。インドでは過去5年にわたり、自国通貨ルピーが売り圧力に直面するたびに、国際資本流入に対する規制緩和が行われ、自国経済のルピー安へのぜい弱性が増すということが繰り返されてきた。一方、中国は対照的だ。中国は海外資本を規制したことで、FRBの気まぐれな行動や移り気な海外資本の影響を抑えることができた。
ロドリック氏が誰よりも分かっているように、トルコは政治的・経済的に本当の問題を抱えている。リラ急落の理由はFRBに見いだす必要 はない。小規模な開放経済が、自分たちのコントロールが及ばない外部の力の犠牲になることはある。だが、今回の混乱は違う。彼らはFRBによる緩和マネー の流入を許したとき、自分たちが何をしているか認識していたはずだ。いつの日か、緩和マネーは逆流し始める。その日がやって来たというだけのことだ。
*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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米2013年の再審無罪、過去最高に迫る
2014年02月04日 22:24 発信地:ワシントンD.C./米国【2月4日 AFP】米国で昨年1年の間に、誤審による不当な有罪判決が再審によって覆された件数は過去最高にほぼ並んだとする報告が4日、米研究プロジェクトによって発表された。
「米冤罪(えんざい)事件データベース(National Registry of Exonerations)」と題するプロジェクトとによると、有罪判決が再審で覆された刑事事件は過去25年間で約1300件あるが、そのうち87件が2013年のものだという。09年以降では最も多かった。
報告の主執筆者サミュエル・グロス(Samuel Gross)氏は、AFPの取材に対し、誤審の原因となる問題に対処していくためにもこのような傾向を歓迎するとしつつも「誤審全体の中の氷山の一角だ」と語った。
報告によると大方の予想とは異なり、DNA検査が冤罪を晴らした事例は全体の20%しか占めていない。グロス氏によれば、38%は「法執行機関の 主導、あるいは協力によって」有罪から無実に転じたもので、冤罪事件において当局が想像以上に積極的な役割を果たしていることが分かったとしている。
2013年に冤罪が晴れた事件87件のうち17%に当たる15件は、被告が有罪答弁をしているにもかかわらず判決が覆ったもので、これも1年間で は過去最高の数だった。グロス氏は、無実の人でも「裁判になれば有罪判決を下され、有罪答弁をした場合よりもずっと長い刑期を科される可能性があると恐れ て」有罪答弁をすることが時にあると説明している。
「死刑を科される可能性があるとすれば、その危険を避けるために有罪答弁をする」場合もあるという。
米国では25年間死刑囚だったレジナルド・グリフィン(Reginald Griffin)氏が昨年、再審で無罪となった。米国で冤罪が晴れた死刑囚は同氏で143人目だった。
また今回の報告によれば、複数選択による回答で、冤罪の56%が目撃者による嘘や偽証に基づくもの、46%が当局による不正、38%が「面通し」での目撃者による誤認に当てはまるという。(c)AFP
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96施設対象、隣接地の実態調査=防衛省
防衛省は4日、航空自衛隊百里基地(茨城県小美玉市)などの自衛隊施設について、隣接する土地の 取引に関する実態調査を開始したと発表した。対象となる施設は96カ所。昨年行った、防衛省など74カ所の施設に隣接する土地の調査に続くもので、登記簿 上の所有者と実際の使用者が異なったり、不審な外国人が取引に関与したりしていないかを調べる。
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安倍首相、解釈改憲に意欲=自衛権行使の「選択肢必要」-参院予算委
参院予算委員会は5日午前、安倍晋三首 相らが出席し、2013年度補正予算案に関する基本的質疑を行った。首相は集団的自衛権について「今、(行使を認められてい)ないことによるデメリットに 直面している」と述べ、行使容認に向けた憲法解釈変更に重ねて意欲を表明。さらに「集団的自衛権の行使はやらなければいけないわけではない。(必要なの は)政策的な選択肢を持つことだ」と強調した。民主党の羽田雄一郎参院幹事長への答弁。
首相は実際の行使に当たっては(1)憲法の解釈変更(2)法的根拠の整備(3)行使するかどうかの政策的判断-が必要との認識を示した。
羽田氏は集団的自衛権行使を容認する場合、解釈改憲ではなく憲法改正が望ましいとの考えを示したが、首相は「憲法には個別的自衛権や集団的自衛権の明文の規定はない。憲法改正が必要との指摘は必ずしも当たらない」と反論した。(2014/02/05-10:54)
大阪市長選、慎重に判断=自公幹部
自民党の石破茂、公明党の井上義久両 幹事長ら幹部は5日午前、都内のホテルで会談し、橋下徹大阪市長が辞職することに伴う出直し市長選について、他党の動向などを見極めて最終判断することで 一致した。両党の地元組織は候補者を擁立しない方針だが、石破氏は会談後、「仮に出さないとしても市民に納得していただける対応をしなければならない」と 記者団に述べ、慎重に判断する考えを強調した。
これに関し、自民党の高村正彦副総裁は党本部で記者団に「大義名分のない選挙に候補者擁立を見送って、空振りさせることは立派な選択肢の一つだ」と指摘、党大阪府連の方針を支持した。
一方、2014年度予算案について石破、井上両氏は、10日の衆院予算委員会での審議入りを目指す方針を確認した。(2014/02/05-11:12)
泊原発再稼働、大幅遅れも…冷却用配管足りず
原子力規制委員会は4日、北海道電力泊原子力発電所3号機の再稼働に向けた安全審査で、緊急時に原子炉を冷却する「格納容器スプレー」という機器の配管が足りず、原発の新規制基準を満たさないと指摘した。
北電は、配管を1本から2本に増やすことを明らかにした。配管の増設は大がかりな工事になると予想され、「数か月では終わらない」(北電)という。同原発の再稼働は大幅に遅れる可能性が出てきた。
スプレーは、原子炉の緊急冷却が必要な時、格納容器内の天井部から放水する機器。新規制基準では、安全上、特に重要度が高いこうした機器につい て、1系統が故障しても深刻な事態に発展しないよう、複数系統の設置を求めている。しかし、北電は、配管の強度や耐震性の面から1系統でも十分と判断し て、そのまま審査を申請していた。
毎日新聞 2014年02月05日 02時30分(最終更新 02月05日 03時35分)
1993年に抗議先の朝日新聞社で拳銃自殺した右翼団体元幹部について、NHK経営委員の長谷川三千子埼玉大学名誉教授(67)が昨年10月、この自殺を礼賛する追悼文を発表していたことが分かった。メディアへの暴力による圧力には全く触れず、刑事事件の当事者を擁護したと読める内容で、NHK経営委員の資質を問う声が出ている。
自殺した元幹部は新右翼「大悲会」の野村秋介・元会長(当時58歳)。警視庁公安部などが銃刀法違反容 疑で同氏の自宅などを家宅捜索した。長谷川氏は元幹部の没後20年を機に発行された追悼文集に「人間が自らの命をもつて神と対話することができるなどとい ふことを露ほども信じてゐない連中の目の前で、野村秋介は神にその死をささげたのである」と礼賛。野村氏の行為によって「わが国の今上陛下は(『人間宣 言』が何と言はうと、日本国憲法が何と言はうと)ふたたび現御神(あきつみかみ)となられたのである」と憲法が定める象徴天皇制を否定するような記載をし ていた。
また、朝日新聞について「彼らほど、人の死を受け取る資格に欠けた人々はゐない」と不信感をつづっている。
追悼文は昨年10月18日に東京都内の会合で参列者に配布された。政府は同25日、衆参両院に長谷川氏ら4人をNHK経営委員会委員とする同意人事案を提示、11月8日に正式同意されている。
長谷川氏は毎日新聞の取材に「非常勤のNHK経営委員に は自らの思想信条を表現する自由が認められている。自らの仕事として精神思想史の研究を行ったり、民族主義者の追悼文を書いたりすることは、経営委員とし ての資格とはまったく無関係のこと。経営委員には番組作りに関与する権限はなく、追悼文を書いたからといって意図的な特集番組を放送することはありえな い。経営委員は常にルールに従って行動している」としている。
NHK経営委員の政治的な発言を禁じる規則はない。しかし放送法31条は、同委員の資格として「公共の福祉に関し公正な判断をすることができ、広い経験と知識を有する者」と定めており、議論になりそうだ。
◇資質疑う声も
経営委員会は事業計画や毎年の予算の議決、会長の任命・罷免などを行うNHKの最高意思決定機関。委員12人(任期3年)は衆参両院の同意を得て首相が任命する。委員には政党役員や同一政党に所属する者が5人以上いてはならない。
長谷川氏は昨年11月、作家の百田尚樹氏らとともに選ばれ「安倍カラー人事」と言われた。百田氏は3日、東京都知事選で田母神俊雄候補(無所属)の応援演説に立ち、南京大虐殺はなかったなどと歴史認識に関する持論を展開、波紋を広げた。放送法では個別番組の編集などに関与することはできないとされている。ただし経営委員会事務局によると、個人の思想・信条に基づいた行動は妨げられないとしている。
服部孝章・立教大教授(メディア法)は「長谷川氏は言論機関に拳銃を持ち込み、発射したというテロ行為とみなされる刑事事件を何ら批判せず、むしろ礼賛している。このような人物をNHK経営委員に任命した責任を政府は問われなければならないし、国会は同意した責任を問われなければならない」と指摘した。
作家の柳田邦男さんは「品格と見識を疑われるような言説だ。経営委員は、不偏不党が求められるNHKのあり方を左右する立場だ。その職に、こうした人物が選ばれることに時代の危機を感じる」と語った。
◇長谷川三千子(はせがわ・みちこ)
1946年生まれ。埼玉大名誉教授、哲学者。「2012年安倍晋三総理大臣を求める民間人有志の会」の代表幹事。少子化対策として、女性が家庭で育児に専念し、男性が外で働くのが合理的という趣旨のコラムを1月に発表、議論になった。
◇野村秋介氏拳銃自殺事件
官製談合なら負担金返せ…新幹線談合で新潟知事
県庁内で記者団に語った。知事は疑惑について、「(雪害対策工事にとどまらず)全体的に落札率が異常に高いと問題提起をしてきたので、やっぱりな、というのが正直な感想だ」と述べた上で、返還を求める考えを明らかにした。
県交通政策課によると、県の建設負担金は全体で1638億円に上り、県は1993~2012年度に計約1400億円を支払ったという。
毎日新聞 2014年02月05日 08時30分
橋下徹大阪市長の出直し選出馬表明を受け、市は4日、市公式ホームページ(HP)から橋下市長の顔写真 や主張を削除したり、公募区長に政治活動をしないよう指示したりするなど対応を始めた。橋下市長が「政治と行政の分離」を掲げて制定した「職員政治規制条 例」など3条例に基づく措置。条例には市HPや広報紙への政治的主張の掲載禁止も盛り込まれ、今回の出直し選で初適用される。
「今日から都構想のPRはあかん。条例に抵触しないよう、しっかりやってくれ」。4日朝、緊急の区長会 議で京極務副市長が指示した。市長は先月の定例記者会見で区長に都構想のPRをさせる考えを示したが、4日は報道陣に「選挙は状況が違うので都構想の話は 一切するなと指示を出す」と話した。
橋下市長は11年の市長選で前市長が市HPや集会で都構想反対を主張したと批判。12年7月に3条例を設け、市職員による▽投票勧誘▽集会での政治的主張▽政治団体の刊行物の配布−−などを禁じ、違反行為は免職などの対象にした。
市はHP手直しのほか、6日予定の市長定例会見を、条例が禁止する「政策的な主張に関する広報活動」な どに該当する恐れがあるとして報道陣に中止を申し入れた。区役所も新年度予算案を地域に説明する区政会議の延期や広報紙の内容見直しなどの対応を迫られて いる。職員の一人は「どこまでの行為が許されるのか前例がないので判断しづらい。違反には懲戒処分もあるので慎重にならざるを得ない」と話した。【茶谷 亮、重石岳史】
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【カイロ=今村実】シリア内戦で、伸長する国際テロ組織アルカイダ系の二つのイスラム過激派勢力が、主導権争いを激化させている。アルカイダ本部 はうち「ヌスラ戦線」を公式の支部として認める一方、「イラク・レバントのイスラム国」に今月、絶縁を宣告。アルカイダで表面化した異例のお家騒動で、戦 況は一段と複雑化しそうだ。
過激派のサイトに投稿されたアルカイダ本部の声明は「われわれは『イスラム国』とは無関係で、活動に責任は負わない」と明言。「アルカイダは民衆と共にあるべきで、弾圧したり、本部に相談もなく国家建設の宣言を急いだりしてはならない」と非難した。
「イスラム国」は隣国イラクを拠点とするアルカイダ組織がシリアに越境し、他の反体制派の支配地域を急速に侵食。先月から双方の衝突が拡大、潰(つぶ)し合いとなっている。掌握地域でシャリア(イスラム法)を強制し、恐怖統治を進めて地元住民の不満が強まる。
「イスラム国」の実態はアラブ諸国など外国人の戦闘員が多く加わる最強硬派だ。一方「ヌスラ戦線」はシリア人主体で、他の反体制派の集団とも協調しているとされる。
AFP通信によると、「イスラム国」は昨年五月、本部のザワヒリ最高指導者から、解散して従来の拠点であるイラクに戻るよう指示を受けたが、無視。ザワヒリ指導者の権威を揺るがす事態となっている。
本紙取材に、アルカイダ専門家のジャマール・イスマイル氏(パキスタン)は「『イスラム国』の戦術は本来の敵であるアサド政権を利しているとし て、本部は激怒した。アルカイダの評判に傷がつくのも懸念している」と指摘。だが「イスラム国」のバグダディ指導者は、本部より現場の判断が優先されるべ きだと主張しているという。
シリア北部アレッポを拠点とする反体制派のイスラム勢力活動家は、今回の絶縁宣告について「『イスラム国』はアルカイダ組織としての正統性を失い、戦闘員の離脱が増えるだろう。しかし、中核メンバーは残って、自爆攻撃などを先鋭化させる」との見方だ。
ロイター通信によると、従来は同じアルカイダ系として直接の戦闘を控えていたヌスラ戦線の司令官の一人は「『イスラム国』と戦い、きっぱり(混乱を)終わらせる」と発言。抗争が激化する恐れがある。
安倍晋三首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)は四日、官邸で会合を開き、本格的な武力攻撃に至らない 領土・領海への侵入に関する自衛隊対処の法整備の必要性を、四月にもまとめる報告書に盛り込むことで一致した。対処法整備をめぐっては、自衛隊のなし崩し 的な出動につながり、武器使用範囲も拡大するとの懸念が指摘されている。
首相は会合で対処法整備に関し、沖縄県・尖閣諸島周辺への中国の進出を念頭に「外国潜水艦が領海に侵入し、離島で警察や海上保安庁だけでは対応が困難な事態に対処する必要性がある。安全保障上の脅威に対応する備えが十分とは言えない」と意欲を示した。
武力攻撃に至らない主権侵害などは、平時と有事の間の「グレーゾーン」と呼ばれる。出席者からは「今の法律では不十分だ」「合理的に武器を使用する規定が十分でない」といった意見が出た。