衝突が起きた首都キエフ中心部の独立広場で取材しているCNNの取材班は、休戦合意を受けて広場から撤収する治安部隊を追いかけて、デモ隊が石や火炎瓶を投げつける場面を目撃した。
デモ隊の少なくとも1人は警官隊に向けて散弾銃を撃ち、治安部隊はこれに対して自動小銃やライフルで応戦している様子だった。銃弾に倒れた男性を助けようとする医師の姿もあった。
これに対して反政権派の手当てをしているボランティアの医師は、射殺しているのは政府軍だと語った。同医師が診察したうちの13人は「プロのスナイパー」に狙われたとみられ、心臓や頭などを狙い撃ちにされて即死していたという。
CNNの取材では、この医師の証言や、政府軍による狙撃の事実関係について確認できていない。
同国内務省は20日、治安部隊が火器を使用していることを認めたうえで、非武装の警察官を守るためだけに使っていると説明した。
ウクライナの議会は同日夜、治安部隊に対して銃の使用中止を求める決議を採択し、先に発表された「テロ対策」作戦を非難した。ただ、この決議にどの程度の効力があるのかはまだ分からない。
一方、内務省は同日、警察官約70人が反政権派の人質にされたと述べ、警察官を解放するために武力行使の権限を保持すると表明した。
ただ、同国のテレビには警察官を名乗る人物が多数登場し、自分たちの意思で反政権派に加わったと語った。これが人質になったとされる警察官なのかどうかは不明。
キエフ市には平常に戻ろうとする動きもある。キエフ市長は与党からの離党を表明し、デモ隊に使われるのを防ぐ目的で政府が運行を停止させていた公共交通機関を再開した。
衝突はキエフにとどまらず、ポーランドとの国境に近いリビウなどの地方都市にも広がっている。
ウクライナ情勢を巡って各国の外交努力も続いた。キャメロン英首相は20日、ポーランドの首相やロシアのプーチン大統領と電話で会談。ドイツのメルケル首相とオバマ米大統領も対応を協議した。
ヤヌコビッチ大統領は、バイデン米副大統領と20日遅く電話で会談するとともに、国連の潘基文(パンギムン)事務総長とも接触している。潘事務総長 は同日、「警官隊とデモ隊の双方による火器の使用に戦慄(せんりつ)を覚える」と述べ、「真摯(しんし)な対話」を呼びかける声明を発表した。
ロシアはヤヌコビッチ大統領の要請を受け、反政権派との交渉のために仲介者を派遣すると表明した。ただ、ロシアの国連大使は、反政権派が対話を望ん でいるとは思わないとの見方を示し、反政権派が政府の建物に侵入して議会乗っ取りをはかっていると非難、「暴力的なクーデターの動きを食い止める必要があ る」と強調した。
一方、欧米諸国はヤヌコビッチ政権に対する批判を強めているが、駐ウクライナ米大使は20日、政情不安が増す中で、「双方とも過激派が勢力を強めている」との見方を示した。
米軍のカービー報道官によれば、ウクライナ軍は暴力に関与している兆候はなく、軍の施設や武器を守る動きに出ているという。ただ、ヘーゲル米国防長官がウクライナ軍の新指導部との接触を試みているにもかかわらず、反応はないとした。
欧州連合(EU)はベルギー・ブリュッセルで緊急会合を開き、ウクライナの暴力の責任者とされる人物の資産凍結と、EUへの渡航禁止で合意したと発表した。
ドイツ、フランス、ポーランドの外相は20日にキエフを訪れ、反政権派の指導者やヤヌコビッチ大統領と会談した。ポーランド外相はこの会談について、ある程度の「進展」はあったものの、「重要な違いが残っている」とコメントした。
ポーランドのトゥスク首相はヤヌコビッチ大統領に対し、年内の選挙実施と選挙から10日以内の新政権発足、この夏までの憲法改正を提案したことを明らかにした。
The Huffington Post | 投稿日: 2014年02月20日 13時35分 JST | 更新: 2014年02月20日 14時15分 JST