京都府与謝野町の山中でこじんまりと営業している「加悦SL広場」。京都府内としてはある程度まとまった数の車両が保存されていることから、保存車ファンの方はきっと聞いたことがあるのではないでしょうか?
以前から訪問したいと考えていたのですが、先日ようやくその念願が叶いましたので、何記事か連続で保存されている車両たちをご紹介して行きたいと思います。しばしお付き合いくださいませ。
まずご覧に入れるのは、キハ08 3…貴重な客車改造気動車の生き残りです。
気動車とは思えない屋根の深さ、切妻に不器用に配置された運転台としての設備、そして客車を思わせる側面の窓配置、扉の形状…その圧倒的な「不格好さ」を存分に見せ付けてくれるこの車両は、加悦SL広場の誇る最強の“迷車”、キハ08 3です。
遡ること1950年代後半、気動車が本格的に普及し始めた頃。北海道では気動車の需要に対して、新型車両の製造が追いついていませんでした。そんな折、当時の国鉄技術者から提案されたのが、余剰となる客車にエンジンを載せて気動車にする案でした。
この提案に基づき、61系客車の厳寒対策版である62系客車を種車として改造されたのが、キハ08系気動車です。オハ62形を改造した両運転台のキハ08形、オハフ62形を改造した片運転台のキハ09形等合わせて4形式が製作され、北海道を中心に活躍しました。しかしながら、重量が従来の気動車より大きく、また改造コストも高額であったことから多くは改造されず、改造から10年程で全車が廃車となりました。
キハ08形は3両が改造され、その内のキハ08 3が国鉄での廃車後に加悦鉄道へ入線しました。譲渡後は主力車両として活躍し、1985年の路線廃止と共に廃車、そのまま加悦SL広場の展示車両として余生を過ごしています。
個人的に一番見たかった車両なので、実際にお目にかかった時には思わずため息。無骨なスタイルですが、それが非常に魅力的です。にしても、こんなに客車然としているにも関わらず国鉄気動車標準色があまりにも似合っているのは、この塗装の持つポテンシャルなのか、一般型気動車に似た前面形状が故か。
衝撃的なことに、車内は休憩スペースとして誰でも立ち入ることができる状態でした。お世辞にも座り心地が良いとは言えないクロスシートは所々撤去され、外向きの座席が賑やかに設置されています。また、隣接する喫茶店の食事を車内で頂くことも出来、なかなか面白い使われ方をしている車両だなと感じました。
次記事でも引き続き、加悦SL広場の展示車両をご紹介します。
<物件データ>
設置場所:京都府与謝野町 加悦SL広場内
公開時間:10時~17時
撮影データ:2018年2月27日14時頃