9月だったか、たまたま日曜美術館を見ていて、これは絶対に見ておきたいという衝動に駆られ、すぐに飛行機のチケットを購入。横浜美術館に行ってきました。
蔡國強展「帰去来」。一番見たかった作品は、《壁撞き(かべつき)》。
東西を分かった壁と同じ3.6メートルのガラスの壁を設定し、その壁を乗り越えるべく何度も何度も挑戦する数十頭の狼。一匹一匹の顔はどんな表情で表現されているのか?それが見たかった。
みんな険しい顔
一緒に付き合って下さった方は、壁は開くのに、なぜ青い若者のような作品を?って仰っいました。それもよくわかるのですが、諦めずに挑戦し続けるその思いを持ち続けたいと思ったからです。
そして、作品を眺める人たちの顔を眺めながら、みんな険しい顔をしているね。そういえば僕も。自分の生命と向き合う時って険しい顔になるんでしょうね。
壁撞きをはじめとする作品は、全て特大で驚きの連続。飽かずに眺めていたいと。
正面玄関に飾られた作品、皆さん記念撮影をしていたので、パチリ。
蔡國強は中国人で、作品を火薬を使って作る独特の技法。
大型キャンバスに、何重かの型紙を重ね合わせ、色彩や輪郭などの強さを表現するためその間に何種類もの火薬を調合しながら伏せ置き、一気に火をつける。凄い光景です。
また、世界各地の大きなイベントでメッセージ性の強い花火を展開。あれほど繊細で美しい日本の花火、それはそれで素晴らしいし、誇れるけれど、負けてる!って。
浮薄な風潮
かの戦争を挟んでどんなことを考え、どんな作品を残したのかというテーマの所蔵作品展も生命を揺さぶる作品が多数。
その中の一つ、昭和39年の観光帝国という作品。
キャプションには、高度成長期の浮薄な風潮を象徴する「観光」という言葉を使い…とありました。
揺さぶられたのは、作品ではなくテーマなんですが、高校生だったにしろ、全くそんな問題意識はなかったよなあって。
女性はみんな美しくなって、見とれてしまうけど、生活実感が見えないんだよなあ、東京ってこの先さらに大変な時代を迎え、本人を含めて孤独死のような問題が大きく広がっているのに。
「浮薄」、今の時代と重なるんじゃないかって。というか、全く進歩していない?