「私が考え選ぶ明日」を基本テーマとする第18回信州岩波講座は8月6日に始まりました。
ー「ことばの再定義」が大切―
講座Ⅰは高橋源一郎さん(作家・明治学院大学教授)が「ことばの復興のために」と題して講演。およそ480人の方が聴講。大学での講義のようにステージ上を移動しながら、ユーモアを交えて語りかけました。
今の20代・30代の人が野間宏や椎名麟三を知らないからといって驚くことはない。彼らはそうした昭和文学の作家たちが〝存在しない世界〟に住んでいるのだ。しかし、例えばドストエフスキーを学生たちに読ませれば、結構キチンと読んでいることが分かる。あるもの(それは時代によって変わる)を読んで感動するということは昔も今も変らない。
8月8日の「天皇のおことば」で〝戦後〟は終わり、未知の世界に入っていく。そこで大切なことはきちんとものを考えることだ。他人の言うことをそのまま信用するのではなく、自分の頭で考えること、ことばを「再定義」することが大切だ。「民主主義を守れ」というとき、「民主主義って何だ」というように。憲法をめぐっても9条だけでもさまざまな考え方があるが、やはり「憲法って何」という再定義が必要で、その上で一から考えることだ。
文学には多様性がある。何も否定しない。それは政治とは正反対の世界だ。戦後は終わるが闘う手段はある。最終的には個人個人の再定義で時代に立ち向かうこと。そこに文学の必要性がある。「ことばの復興」とは、衰えてしまったことばや概念が新しい意味をもつことだ。
後半の質問に答えるコーナーでは、夏目漱石の評価、オバマ大統領の広島演説、弱者を排除しようとする風潮、若者と政治、立憲主義などの問題について、丁寧に答えていました。
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