3.11東日本大震災から5か月目となる8月11日、第13回信州岩波講座の一環として、信州岩波講座実行委員会と須坂市の読み聞かせの会有志の共同事業として大津波で被災した、岩手県下閉伊郡山田町の私立保育園3館(園児数約170人)に岩波書店の絵本330冊、須坂市民厚志の絵本300冊、合わせて630冊を届けました。
今回の図書贈呈では、単に絵本を贈るのではなく、昨年結成された「須坂市子ども読書活動支援研究会」有志の方による読み聞かせを併せて行い、子どもたちに直接絵本を手渡しました。
山田町大沢地区の高台に上がっていた時のことです。住宅の基礎しか残っていない町並みの中を、自転車に乗った男性が走り、基礎だけ残された家(ご自宅だと思います)の中にぽつりと座り、じっと動かずにただ見つめている姿がありました。
この衝撃的な光景に、「断たれた絆」をつなぎ合わせることに絶望感を感じました。一瞬で絆を断たれた人に、「がんばれ」と声をかけることの残酷さも感じました。
しかし、訪問した保育園の子どもたちは、読み聞かせに眼を輝かせて聞いてくれました。悲しみや心の傷は癒えていないと思いますが、私たちが日ごろ目にする子どもたちの輝く眼と何ら変わりはありませんでした。
子どもたちの眼に、私たちはどう応えるのか。それは断たれた絆をつなぐことだけでなく、新たな絆を作り出していくことではないかと思います。自ら動きつながっていくこと。大それたことでなく、小さなつながりを作り続けていくことが必要と強く感じました。
被災地を訪問し、子どもたちの姿を見、保育園の皆さんから学んだのは、被災地の皆さんに「絆」を求めるのではなく、被災地の外に住む私たちが「絆」を結んでいくことが、復興の大きな力になるのではということでした。被災地に掲げられた「がんばれ」は、被災地の人ではなく、私たち被災地以外に住む者に投げかけられた「がんばれ」ではないかと思います。被災地の外にいる私たちが紡ぎだす「絆」こそ、大きな転換期の今、希望を見出す鍵の一つとなりえると思えてなりません。(kobayashi)