NPO・999ブログ    本を読んで 考える力を養おう

「自分のできることを できる時に できる処で」
市民的知性の地平を拓くNPOふおらむ集団999

おすすめ本  松本健一著『海岸線は語る』

2012年06月11日 | おすすめ本
松本健一著『海岸線は語る 東日本大震災のあとで』(ミシマ社刊 1600円+税)

 著者は、哲学カフェ2012松本健一氏「司馬遼太郎の世界を語るーなぜ司馬は佐久間象山を書かなかったのか」の講師です。大変ジャンルの広い著述家で、上梓した本も数多い。その幾つかは7月7日の会場で販売されます。お買い上げの方には松本さんからサインもいただけます。是非7月7日は哲学カフェ会場の長野市問御所トイーゴ4F「長野市生涯学習センター」までお越しください。参加費は1,000円です。
 さて、『海岸線は語る』は、『海岸線の歴史』の姉妹編にあたる最新作といわれています。日本人は「海やまのあひだ」に住んできた民族であると、折口信夫の言葉を紹介しながら、列島の豊かな自然と四季折々の風景や食べ物が日本人の細やかな精神性や繊細な美的感覚を育んできたとしています。時に自然の猛威にさらされながら、自然と共生する暮らし方を選択してきた。それが、西洋近代の到来によってうんぬん、と。3.11後の生きざまを被災地の岩手、宮城、福島の海岸線を見据えながら説き起こす。
 「私は東日本大震災によって大きな被害をうけ、多くの人家がなくなった海岸線が今どうなっているのかを知るべく、各地に足を運んだ。それは、本書で何度かふれているように、まず「現場」を知らなければならないと考えるからだ。「現場」を知らないまま、復興を議論したところで仕方がない。その「現場」に立って、その土地の人びとのこれからの暮らしかたやこれからの「国づくり」を考えなければならない」と政府主催の復興構想会議に集められた学者や官僚の「空論」を批判している。(「あとがき」から)                            (看雲想居士12/6,11)

沖縄と福島

2012年05月17日 | おすすめ本
沖縄の本土復帰から40年。5月15日に宜野湾市で行われた記念式典に元沖縄県知事の大田昌秀さんは、「沖縄の実情はお祝いできる状況ではない」として出席しなかったと新聞が伝えていた。日本にある米軍基地の74%が沖縄に集中している。その沖縄では今、「痛みを体験しないとわからないのなら、基地を本土に移して」という考えが広がっているという。こうした報道に接したのと同じ時期に、『犠牲のシステム 福島・沖縄』(高橋哲哉著、集英社新書)を読んだ。高橋氏によれば、福島と沖縄は「戦後日本の国家体制に組み込まれた二つの犠牲のシステムを表している」というのだ。経済成長や安全保障といった共同体の利益のために、誰かを犠牲にするシステムは正当化できるのか?と問いかける。今年1月に出た本なので既に読んでおられる方も多いとは思いますが、もしまだでしたらお薦めします。原発や基地問題を他人事としないためにも。(999会員 K.M)

おすすめ本  大塚信一著『火の神話学』(平凡社 2,520円)

2012年03月25日 | おすすめ本
 著者は、元岩波書店社長。当然信州岩波講座に縁の深い人でもあった。氏は、岩波書店の社長を退任しても講演や地域社会での活躍で忙しい日常を過されている。この書で一番面白いと思ったのは、人は囲炉裏の火を囲むと、なぜか誰ともなく人生論を語りだす、と言う条である。
 はじめ、火にまつわるエピソードや、風習などの「よもやま話」が読めるかと思って手にしたのだが、それだけでなく、さすがに日本を代表する学術書や全集、良書の類を出版された元締めだけあって、これは優れて「学術書」にもなりうる内容であった。氏の長年の編集者としての膨大な読書量から博引傍証が当然多くなりはするが、いま、「核の火」が問題になっていることからも、時宜を得た本ではある。
 そういえばギリシャ神話の「プロメテウスの火」は、太陽の「火」であろう。それは日本のアマテラス神話(天岩戸伝説は、「皆既日食」を指す)にも通じる話だ。人間と火の関係を語る「文化論」でもある。(看雲想居士)

おすすめ本 田坂広志著『官邸から見た原発事故の真実 これから始まる真の危機』 (光文社新書 920円)  

2012年03月12日 | おすすめ本
昨年の「絆」ブームはどこへやら、各地の自治体では被災地のガレキ受け入れを巡って、住民たちの「反乱」に手を焼いています。いち早く受け入れを開始した首都の知事は、「政府が先頭に立って、各自治体に割り当てろ」と云っています。法令をつくれとの声さえあります。どじょう内閣の野田政権は、なかなか地上に顔をみせないもどかしさはありますが、担当大臣の細野豪志氏(40歳)は、上から目線は自分の政治手法ではないとして、「説得」によって解決を図りたいと云っています。
住民の不信の原因はどこにあるか。この本を読めば答は書いてあります。つまり政治と国民との「信頼関係」が大事と著者は言っています。長年の原発の安全神話からの「裏切り」と、フクシマ事故後の政府の対応の拙さや東電の不実は、国民に根強い不信感を与えてしまった、ということです。何事も信頼がなければ、「信用」が生じない。理の理ですね。小さな子をもつ親ならなおさらです。
著者が、再三強調するのは、「安全」を語ることの自己催眠であり、「人的、組織的、制度的、文化的要因こそが原因」とるす検証をしっかりすることが、これからの全ての基礎になるとの指摘である。
著者は、東大工学部で原子力工学を学び、医学部では放射線健康管理学を学んだ、福島事故までは自ら「原発推進派」だったと述懐する科学者です。現在の職業は多摩大学教授と、シンクタンク・ソフィアバンク代表と書いてありますが、菅内閣で内閣官房参与として原発事故への対応に当たった人です。菅のバカ、枝野の嘘つきと言い張るのも結構ですが、ときに当時の官邸を覗いてみてはいかが? (0999)

おすすめ本  武藤類子著 写真・森住卓『福島からあなたへ」(大月書店 1260円)

2012年03月06日 | おすすめ本
(本文から)
 毎日、毎日、否応なく
 せまられる決断。

 逃げる、逃げない。
 食べる、食べない。

 洗濯物を外に干す、干さない。
 子どもにマスクをさせる、させない。

 畑を耕す、耕さない。
 何かにもの申す、黙る。

 さまざまな苦渋の選択がありました。

本の帯に「私たちはいま、静かに怒りを燃やす東北の鬼です。」とありました。
(0999)

私の読後感  山内明美『こども東北学』(イースト・プレス 1260円)

2012年02月12日 | おすすめ本

 本の扉をあければ、
 「いま、きみの目の前には、先の見えない地獄が広がっている。」との文言が眼に飛び込んでくる。
 著者は、東北宮城県出身の30代半ばの学究。一旦は高卒で地元の公共文化施設に就職したが、施設の運営が人口減で先行き不透明になるなか、東京の大学をめざし現在は一橋大学大学院博士課程に学ぶ。自ら「百姓」の娘という。
 まず、「東北」って何だ、という頭の体操をさせられる。地域的空間を指すことばか、それとも? 祖父母を語り、生い立ちを語りながら東北の百姓の過酷で悲惨な歴史が書かれる。一見自分史のようなやわらかい語り口につられて読み進むうちに、気がつけば現代日本社会の病理がみごとに表されている。
 「こども」と題されているからには、中学生などを対象にしているのだろう。しかし、「放射能汚染不安が日本社会を覆いはじめたとき、わたしがいちばんはじめに感じた違和感は、いま起きている土と海の汚染が、自分のからだの一部で起こっている、ということを誰も語らないことだった。」と書くとき、大人こそ読むべき本となった。(看雲想居士)

私の読後感  井上ひさし『一週間』(新潮社 1995円)

2012年01月27日 | おすすめ本

 昭和21年(1946年)の旧ソ連ハバロフスクの早春。場所は日本軍人の捕虜収容所。主人公は、ロシア語も理解する一兵卒の日本人捕虜。実は国内にいたころは、地下活動で1年間獄中も経験する筋金入りの強者である。
 主人公がやはり囚われの身の日本人医師から、「レーニンの手紙」なるものを預かったことから事件がはじまる。その間、1週間の月・火・水・木・金・土・日の出来事として小説ができている。先年惜しまれて亡くなった井上ひさし氏の「最後の長編小説」と帯のコピーに書いてある。
 小説のおもしろさは、「虚実皮膜」という。有名なスパイMまでからませて、その上レーニンの「裏切り」の手紙とう道具立てを用意する。しかも井上氏の筆である。おもしろくないはずはない。とりわけボクは、『日本海軍はなぜ過ったか』(岩波書店)を併読したので、日本軍隊の虚妄を垣間見て興味は倍化した。とても近ごろの芥川賞に代表される「半径5メートル内の小説」では味わえない社会性の醍醐味である。
 ただ、同氏の『東京セブンローズ』でもそうだったが、後半「木曜日」以降は、無理に戯作の運びにもっていっているように読めて、ボクにはちょっと残念だった。「虚」が勝ち過ぎてしまうのである。(999同人)

私の読後感『僕のお父さんは東電の社員です』

2012年01月22日 | おすすめ本
 「3.11後を生きる」が、日本に住む人々の、今年の大きなテーマであるという。どう生きるか。みんな変わらなければいけないという。どう変わるか、何を変えるか。自分の来し方を思い、行く末に思いをはせる。
 そんな時、映画監督の森達也さんが著作、毎日小学生新聞編集になる『「僕のお父さんは東電の社員です」小中学生たちの白熱議論! 3.11と働くことの意味』(現代書館 1470円)を読んだ。そして考えた。
 テレビに出るエライ評論家先生などから「被告」とまでののしられる東電にも、普通の社員がいて、お父さんお母さん、あるいはお兄さんがいて「生活」している人たちがいるのだ。もちろん原発事故の福島の現場で頑張っている関係の人びともいる。
 今年から、自分と異なる考え方や立場の人の「なぜ」に考えを及ばせながら、本を読んだり文章を書こうと思う。(看雲想居士)

健康を考える

2012年01月21日 | おすすめ本
皆さん健康に自信がありますか

内場先生という現代の赤ひげ先生ご存知ですか

 長野県の山村の診療所の先生です
このほど(糖尿病で寝たきりにならないための血管マネージメント)という本を
光文社より発行しました。1400円です。5万部ほど既に売れている人気本です。
この本読むと難しいことしなくてもたった3つの実践をすれば健康でいられることが分かります。
 是非本屋で覗いてみてください   秀一