NPO・999ブログ    本を読んで 考える力を養おう

「自分のできることを できる時に できる処で」
市民的知性の地平を拓くNPOふおらむ集団999

第21回信州岩波講座トップに出口治明氏

2019年08月28日 | 信州岩波講座
講座幕開け>出口治明さん、意表をつくトーク
 日本の閉塞…少子化の根本は男女差別にこそ
       「フロ・メシ・ネル」から「人・本・旅」へ

 
 第21回信州岩波講座が8月17日に始まり、トップに登場した立命館アジア太平洋大学学長の出口治明さんが「本の世界 読書のすすめ」のテーマで話しました。関西弁のやわらか口調のトークながら、内容は私たちの常識を次々にひっくり返す意外性に満ち、ユーモアと緊張感こもごもの展開となりました。
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 「本を読めば仕事に役立つなんてトンデモナイ」「親のいうとおりに育ったと思うひとはここにいますか」「フランスでは働く女性が専業主婦よりも出産率が高いのが常識」。随所にファクトを基にした、意表をつく刺激的な問いかけが散りばめられました。
そして「労働時間が長いのになぜ低成長か」「少子化の元凶は男女差別」「GAFA(巨大IT4企業)が育たない」と日本の閉塞を指摘し「土地・資本・労働力」による製造業や「フロ・メシ・ネル」の男優位の社会はもう限界………、ターゲットが一挙にしぼられました。
ではどうすれば?これからは市民みんなで育む「公共の知の力」が重要と強調。考えるプロセスを大事に、アイデアを生みだし、産業に結びつけていく。個人としてはまず「人・本・旅」がカギと、講演テーマ「本の世界 読書のすすめ」へと一気呵成にみちびく鮮やかな展開でした。実は出口さんの提案で急きょ、講演時間を短縮し質疑応答の場を設けました。会場には想定外の熱気がこもる“出口ワールド”が出現しました。
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 今回は講師を囲む<トークセッション>の趣向を盛り込みました。岩波書店の馬場公彦さん(編集部長)の発想と須坂市図書館長の文平玲子さんのおぜん立てにより、市内の子ども読書支援、読み聞かせ、読書会、紙芝居の4団体代表に登壇していただきました。<読書>と<こども>を結ぶ図書館の役割、地域づくりがみえてくる交流の場となりました。
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 出口さんはこの日、名古屋からの特急しなので単身、バックパッカーのいでたちで長野駅に現れました。見ると、鼻穴の片方に鼻血止めのティッシュペーパーの栓が。「長野に着いたとたんに………、でもよくあることです」と心配を受け流し、メセナホールまでの車中では、学長を務める大分・別府にある新設大学(2000年開学)の理念、アジアから集まる学生の動向を、愛情と熱意にあふれる口調で語り続けました。

“講座の裏方”ふおらむ集団999の願い

2019年08月28日 | ふおらむ集団999
“講座の裏方”ふおらむ集団999の願い
 
地域に根差し ひとを<繋ぐ場に
 

 さあ、信州岩波講座2019の開幕です。21回目の新たな第一歩、いまや“須坂の夏の代名詞”と自負したいイベント。基本テーマは「あすへ繋ぐ学び」です。岩波講座を担う裏方として、私たち文化ボランティア・ふおらむ集団999は<繋ぐ>をキーワードに、活動の輪を広く深めていきたいとの意欲を込めています。
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 <つなぎ>というと『鬼平犯科帳』を思い浮かべます(個人的なこだわりに失笑をかうかしれませんが)。池波正太郎の小説も、中村吉右衛門のドラマのどちらも熱烈ファン。たかが盗っ人集団と火付盗賊改のスベッた転んだといわれればそれまで。でも全く相反する目標に組織のせめぎ合いとみれば味わいが深まり、そこに息づく重要なスキルが<つなぎ>。それも単に情報のやりとりにとどまりません。盗賊の統領-配下、長官-与力同心―密偵の身分や職分をこえた仲間としての親密なふれあい。物語の粋です。
私たちボランティアにも、そんなふくらみのある<つなぎ>があったら、と思います。
信州岩波講座の<繋ぐ>ポイントは、いうまでもなく講師と聴衆のみなさん。また、講座を地域づくりに<繋ぐ>ことも重要です。では、自分たち自身はどうか。実状はいまひとつなのが残念です。
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 講座が<繋ぐ>企画は、この大ホールでの本講座だけではありません。さまざまな規模の催しが行われています。もともとは仲間の読書会から出発した「ふるさと塾」、唯一の野外学習である「文学散歩」、そして次世代のための「高校生編」・・・ 講座会場の古本市、ブログ、街中のすざか図書カフェの構想も。この須坂の地に着実に浸透しています。
 新たな試みも始めました。「臥龍のつぶやきinナガノ(あるいはスザカ)」という自分たちの<繋ぐ>場づくりです。仲間の一人が「信州の本-出版こぼれ話」と題して語り意見交換しました。耳を傾けるべき存在が身近にこそ……拍子抜けするような新鮮な発見がありました。            ◇
 実は999のメンバーは現役のころ、国鉄機関士、民放アナ、前衛書家、県・市職員、出版編集者、新聞記者、いまもCATVディレクター、主婦・・・ 多彩なキャリアの持ち主です。これからの人材掘り起こしが楽しみです。みなさんにも「それなら自分だって」と参戦してほしい──それがこの小文の主旨です。

さて、今年の講座トップには出口治明さんの登場です。「本の世界 読書のすすめ」は、のっけから当講座の一丁目一番地です。「“人・本・旅”の重要さ・その理由について、皆さんがワクワクするような話を」と抱負を寄せていただいています。講演をテコに、私たちの<繋ぎ>をさらに深く広くしていければ、と願っています。(実行委企画委員長 斉藤次男)