本の扉をあければ、
「いま、きみの目の前には、先の見えない地獄が広がっている。」との文言が眼に飛び込んでくる。
著者は、東北宮城県出身の30代半ばの学究。一旦は高卒で地元の公共文化施設に就職したが、施設の運営が人口減で先行き不透明になるなか、東京の大学をめざし現在は一橋大学大学院博士課程に学ぶ。自ら「百姓」の娘という。
まず、「東北」って何だ、という頭の体操をさせられる。地域的空間を指すことばか、それとも? 祖父母を語り、生い立ちを語りながら東北の百姓の過酷で悲惨な歴史が書かれる。一見自分史のようなやわらかい語り口につられて読み進むうちに、気がつけば現代日本社会の病理がみごとに表されている。
「こども」と題されているからには、中学生などを対象にしているのだろう。しかし、「放射能汚染不安が日本社会を覆いはじめたとき、わたしがいちばんはじめに感じた違和感は、いま起きている土と海の汚染が、自分のからだの一部で起こっている、ということを誰も語らないことだった。」と書くとき、大人こそ読むべき本となった。(看雲想居士)