NPO・999ブログ    本を読んで 考える力を養おう

「自分のできることを できる時に できる処で」
市民的知性の地平を拓くNPOふおらむ集団999

おすすめ本  大塚信一著『火の神話学』(平凡社 2,520円)

2012年03月25日 | おすすめ本
 著者は、元岩波書店社長。当然信州岩波講座に縁の深い人でもあった。氏は、岩波書店の社長を退任しても講演や地域社会での活躍で忙しい日常を過されている。この書で一番面白いと思ったのは、人は囲炉裏の火を囲むと、なぜか誰ともなく人生論を語りだす、と言う条である。
 はじめ、火にまつわるエピソードや、風習などの「よもやま話」が読めるかと思って手にしたのだが、それだけでなく、さすがに日本を代表する学術書や全集、良書の類を出版された元締めだけあって、これは優れて「学術書」にもなりうる内容であった。氏の長年の編集者としての膨大な読書量から博引傍証が当然多くなりはするが、いま、「核の火」が問題になっていることからも、時宜を得た本ではある。
 そういえばギリシャ神話の「プロメテウスの火」は、太陽の「火」であろう。それは日本のアマテラス神話(天岩戸伝説は、「皆既日食」を指す)にも通じる話だ。人間と火の関係を語る「文化論」でもある。(看雲想居士)

おすすめ本 田坂広志著『官邸から見た原発事故の真実 これから始まる真の危機』 (光文社新書 920円)  

2012年03月12日 | おすすめ本
昨年の「絆」ブームはどこへやら、各地の自治体では被災地のガレキ受け入れを巡って、住民たちの「反乱」に手を焼いています。いち早く受け入れを開始した首都の知事は、「政府が先頭に立って、各自治体に割り当てろ」と云っています。法令をつくれとの声さえあります。どじょう内閣の野田政権は、なかなか地上に顔をみせないもどかしさはありますが、担当大臣の細野豪志氏(40歳)は、上から目線は自分の政治手法ではないとして、「説得」によって解決を図りたいと云っています。
住民の不信の原因はどこにあるか。この本を読めば答は書いてあります。つまり政治と国民との「信頼関係」が大事と著者は言っています。長年の原発の安全神話からの「裏切り」と、フクシマ事故後の政府の対応の拙さや東電の不実は、国民に根強い不信感を与えてしまった、ということです。何事も信頼がなければ、「信用」が生じない。理の理ですね。小さな子をもつ親ならなおさらです。
著者が、再三強調するのは、「安全」を語ることの自己催眠であり、「人的、組織的、制度的、文化的要因こそが原因」とるす検証をしっかりすることが、これからの全ての基礎になるとの指摘である。
著者は、東大工学部で原子力工学を学び、医学部では放射線健康管理学を学んだ、福島事故までは自ら「原発推進派」だったと述懐する科学者です。現在の職業は多摩大学教授と、シンクタンク・ソフィアバンク代表と書いてありますが、菅内閣で内閣官房参与として原発事故への対応に当たった人です。菅のバカ、枝野の嘘つきと言い張るのも結構ですが、ときに当時の官邸を覗いてみてはいかが? (0999)

おすすめ本  武藤類子著 写真・森住卓『福島からあなたへ」(大月書店 1260円)

2012年03月06日 | おすすめ本
(本文から)
 毎日、毎日、否応なく
 せまられる決断。

 逃げる、逃げない。
 食べる、食べない。

 洗濯物を外に干す、干さない。
 子どもにマスクをさせる、させない。

 畑を耕す、耕さない。
 何かにもの申す、黙る。

 さまざまな苦渋の選択がありました。

本の帯に「私たちはいま、静かに怒りを燃やす東北の鬼です。」とありました。
(0999)