NPO・999ブログ    本を読んで 考える力を養おう

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市民的知性の地平を拓くNPOふおらむ集団999

2017信州岩波講座Ⅱ 加藤典洋さんと内田樹さん

2017年09月11日 | 信州岩波講座
長野から東京へ-五輪につながる懸念
内田樹さん“文武両道”の投げかけ


 8月27日に登場した内田樹さんと加藤典洋さん。新幹線は別々で長野駅で合流。内田さんは見上げるような長身、上着のそでをまくりあげ、筋肉の盛り上がった腕で重いカートを引いて現れました。小柄でもの静かな思索家といった加藤さんとは対照的な印象。両氏は久しぶりの再会という。
 内田さんは神戸の女子大を退職し、今の名刺の肩書きは「凱風館 館長」。武道と哲学を両輪とする学びの本拠です。須坂に向かう車がエムウエーブに差しかかったとき「長野オリンピックの遺産はなにかな」との問いを発しました。かつて立ち寄ったスイス・ローザンヌの五輪記念館で「長野招致の功労者として開発企業トップが“ヒーロー扱い”されていましたよ」と話し「でも、長野の人たちにはいま、なにが残っているのかな」と、もう一度問いかけました。
 そして、語調を強めて「東京オリンピックは失敗しますよ」。暑さで記録は振るわず、財政負担が重く残るだけというのがその理由。なにより原発事故の放射能不安を「アンダー・コントロール」の一言で押しのけ、国と企業の思惑がらみの“上からの招致・準備活動”に疑問を示しました。

 「『帝国』化する世界・『中世』化する世界」がテーマの講座本番。内田さんは締めくくりに「人口減少の社会に成長は望めない。“信頼”や“友情”が資産となる」と、文武両道を地でいくアプローチで世界のゆくえを展望。そのうえで「東京は失敗」とする、車中での予測を繰り返しました。
 なぜ長野の過去にこだわったのか…東京の今につながる日本社会の問題を鮮明に線引きして見せた場面でした。
2部はお二人による対談

聴講者からは
・「現実」というものにいかにかかわるか。それは「理想」というものをいかにとらえるか、ということにも通ずるかと思う。その意味で、お二人の論客の示唆するところは大きかった。(70代男性)
・加藤先生のお話が面白かった。「一階」部分で「戦争はいやだ」と叫ぶ力はどの程度のエネルギーを必要とするのか。日本の8月の年中行事のように「戦争だけは嫌ですね」という声はどうすれば「一階」の力となるのでしょうか。(70代男性)
・幕末と太平洋戦争(第二次大戦)との照らし合わせの話はたいへん面白く、なる程と感じました。帝国時代に変っていく、戻っていく話。隙間帝国は大賛成です。人も地球の生物も、西へ西へと流れるコスモ的本能があるとの話も面白かったです。(60代女性)
・内田先生の人間、助け合わないと生きてゆけないという話に感銘を受けました。同感です。安倍首相は地球的外交と称し、百十数か国を訪問したが、肝心の韓国、中国への公式訪問なしという外交汚点を残しているのではないか。(70代) など多数の声が寄せられました。

2017信州岩波講座 Ⅰ 寺島実郎さん「激変する世界をどう読むか」

2017年09月10日 | 信州岩波講座
「信州のきょうの聴講者はちがう!」
         講座3度目の寺島さん感嘆


 8月5日、メセナホールには3度目、ことしの講師陣のトップを飾った寺島実郎さん。翌朝のテレビ出演のため、東京にとんぼ帰りの慌ただしさでしたが、講演、会場との質疑応答、サイン会の約3時間半のスケジュールをこなし「きょうの会場の真剣な雰囲気は格別」と感嘆の様子でした。
 講演のテーマ「激変する世界をどう読むか」では、世界史と自らの外国体験をもとに、西欧-米国-日本の三角地点を軸に据えた独特の視点から鋭く指摘。併せて、最近は国内の「地域の未来」に関心を注ぐ。目先の景気に目を奪われ、政治や財政が高齢層に偏重する「シルバー・デモクラシー」が地域を荒廃させていくと懸念しつつも「第一次産業と三世代家族を足場にする信州や北陸はむしろ“宝の山”」と評価。沈みがちの会場の雰囲気を盛り上げました。
 講演に先立つ昼食会の席で、注目すべき最近の動きとして「新たな物流拠点として日本海沿岸の港の活況」を指摘。地域の人びとが時代の変化にどう対応するか、固定観念にとらわれず、自分の頭で考えることの大事さを強調しました。また、席上マンガで紹介された幕末の須坂藩主堀直虎が改革派の佐久間象山や赤松小三郎に自ら教えを請うた足跡に関心を示し、須坂の伝統と地域性を見直す口ぶりでした。                                
 聴講者の皆さんからは、
・さすがに話が面白い。眠気も吹っ飛び最後まで真剣に話を聞いた。思わず『シルバー・デモクラシー』(岩波新書)を買ってしまった。(60代男性)
・『世界』を40年購読していますが、直接話を聞くのは有効でした。(60代男性)
・「サンデーモーニング」を毎回見ています。今日は特に世界から見た情報を聞けて良かったです。(60代女性)
・グローバルで次元の高い内容のお話だと思いました。資料集をいただけたことはとても有難く嬉しかったです。(70代女性)などの声が多数寄せられました。
2部では会場からの質問を中心に、内容も多岐にわたりました。