NPO・999ブログ    本を読んで 考える力を養おう

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市民的知性の地平を拓くNPOふおらむ集団999

「人を育てること」

2020年05月11日 | 臥龍つぶやき
 私は須坂市の子育て講座の講師を長年やらせていただいています。そこで子育て中の保護者の皆様に伝え続けてきたことについて、お話ししたいと思います。
 まず第一に、子どもを愛していることをちゃんと伝えて欲しいということです。愛情の伝え方はいろいろあり、折に触れ「大好きだよ」と言葉にしてもいいし、ぎゅーっと抱きしめてもいいし、一緒に同じ事を楽しむのも、優しい視線を送ることでもいいと思います。
 その子の年齢や性格に合わせ伝え続けること、そして時々ちゃんと伝わっているか確かめる機会を持つことが大切だと思います。愛されていることを知ることは、その子を安心させ、その子の持つ能力や好奇心、冒険心を健全に成長させることに繋がっているのです。

 ひとつ臨床例があります。体重が増えないと受診した4歳の男の子は、実はネグレクト(育児放棄)という環境で育ちました。母子家庭とはいえ普通の家で、食事は与えられ、衛生面も問題なかったのですが、愛情だけが与えられなかったのです。痩せ細った身体に表情のない顔、虚ろな目は開けていても周囲への関心を示さない子でした。
 すぐ親から引き離し入院となり、病院スタッフや同室の子どもたちとの生活が始まりました。家庭のようにとはなかなかいきませんが、皆が彼に関心を持ち、言葉をかけ見守りました。幸い彼のことを皆がすぐ好きになりました。
 2年の歳月が彼を変えていきました。かける言葉に反応するようになり、表情が少しずつ豊かになり笑うようにも。身体は標準的な大きさに近づき、行動も活発になってきました。
 しかし主治医が何より驚いたのは、彼の頭囲の成長でした。萎縮していた脳が活発に成長しはじめたのです。
 人は、慈しみ抱きしめ話しかけて育ててこそ人になっていくのだと実感したものです。
  後日談ですが、入学式で2年ぶりに母親に会った時、戸惑う母に「大丈夫?」と彼から声をかけたということです。