元中国大使 丹羽宇一郎氏
「日本の国是と未来の姿」
“ハプニング”重なり 会場湧きたつ
信州岩波講座2018本講座が9月8日、須坂市メセナホールで開幕しました。「今、くにのかたちは-歴史と向き合う」を基本テーマとする節目の第20回。
皮切りには「日本の国是と未来の姿」のテーマで、元中国大使の丹羽宇一郎氏が登場。「安全保障とは憲法の平和を守り自由貿易のもとで生活を発展させること。それが<国是>。防衛(軍事)の方向とは違うのに、今は本道を歩んではいない。何のために生きるかを問い、自分の声を挙げて」と熱っぽく訴え、約470人の聴講者に共感が広がりました。
今回は緊張感のなかハプニングに始まり、ハプニングに終わる活気にあふれた会場となりました。
あらかじめパワーポイントで中国指導部の顔ぶれが並ぶ資料を用意して臨んだ丹羽さん。冒頭、なにか会場の雰囲気が琴線にふれたかのように「教育熱心な土地柄で話すことを楽しみに来ました。資料を使うのをやめ、違った話題で話したい」と驚かせました。
約1時間半の講演のなか、丹羽さんは抑えきれない思いがあふれ出すかのような場面が見られました。
▽歴史には後になって悔やんでも、もはや戻れないターニングポイントがある。だからいったじゃないか、とこの世を去るわけにはいかない。
▽戦争の体験を語る人びとが少なくなっていく。残虐な実態、国は国民を助けてくれたりはしない真実が若者には伝わらない。ゲームの世界と同じと思い、殺す殺される人間が見えていない。
▽日本の未来、くにのかたちをどうするか-革命的、ベストな道はない。10年、20年の先を考えるベターチョイスとして進むしかない。考えが左、右だからと選択することではない。
▽政治のトップは「声なき声」を100%自分の支持と受けとめる。勇気を出して、できる範囲で自分の声を出さないと。
「じっと座っていては、世界は変わらない」
講演を終えたところで、またハプニングが起きました。今回はすぐ帰京する急ぎの日程のため、会場との質疑応答は予定されていませんでした。しかし、控室に引き揚げる途中「岩波講座は会場から質問がたくさん寄せられるのが定番です」と伝えると「それならぜひ聴いて応えたい」と再登壇してくれました。
さっそく会場から「中国大使退任」と「いま個人が成すべき具体的なこと」の質問2点が出され「私はカネや名誉でなく日中関係のためにいうべきをいうが基本。政治の方で使いにくくなったのでは…。官僚の役割を大事にせず、政治が動きすぎた面も」と率直な感想。また「じっと座っていては世界は変わらない。勇気を出してはがき1枚でも発信することが大事」と奮起を促しました。
丹羽さんの著書の末尾には「印税は著者の意向に寄付されます」と記されています。贈り先は会長を務める日中友好協会と、かつて会長だった国連食糧計画協会。前者は中国からの留学生向け奨学金、後者はアフリカの子どもたち向け食糧支援です。行動する知の人らしい現地体験に基づく「個人が成すべきこと」としています。
「日本の国是と未来の姿」
“ハプニング”重なり 会場湧きたつ
信州岩波講座2018本講座が9月8日、須坂市メセナホールで開幕しました。「今、くにのかたちは-歴史と向き合う」を基本テーマとする節目の第20回。
皮切りには「日本の国是と未来の姿」のテーマで、元中国大使の丹羽宇一郎氏が登場。「安全保障とは憲法の平和を守り自由貿易のもとで生活を発展させること。それが<国是>。防衛(軍事)の方向とは違うのに、今は本道を歩んではいない。何のために生きるかを問い、自分の声を挙げて」と熱っぽく訴え、約470人の聴講者に共感が広がりました。
今回は緊張感のなかハプニングに始まり、ハプニングに終わる活気にあふれた会場となりました。
あらかじめパワーポイントで中国指導部の顔ぶれが並ぶ資料を用意して臨んだ丹羽さん。冒頭、なにか会場の雰囲気が琴線にふれたかのように「教育熱心な土地柄で話すことを楽しみに来ました。資料を使うのをやめ、違った話題で話したい」と驚かせました。
約1時間半の講演のなか、丹羽さんは抑えきれない思いがあふれ出すかのような場面が見られました。
▽歴史には後になって悔やんでも、もはや戻れないターニングポイントがある。だからいったじゃないか、とこの世を去るわけにはいかない。
▽戦争の体験を語る人びとが少なくなっていく。残虐な実態、国は国民を助けてくれたりはしない真実が若者には伝わらない。ゲームの世界と同じと思い、殺す殺される人間が見えていない。
▽日本の未来、くにのかたちをどうするか-革命的、ベストな道はない。10年、20年の先を考えるベターチョイスとして進むしかない。考えが左、右だからと選択することではない。
▽政治のトップは「声なき声」を100%自分の支持と受けとめる。勇気を出して、できる範囲で自分の声を出さないと。
「じっと座っていては、世界は変わらない」
講演を終えたところで、またハプニングが起きました。今回はすぐ帰京する急ぎの日程のため、会場との質疑応答は予定されていませんでした。しかし、控室に引き揚げる途中「岩波講座は会場から質問がたくさん寄せられるのが定番です」と伝えると「それならぜひ聴いて応えたい」と再登壇してくれました。
さっそく会場から「中国大使退任」と「いま個人が成すべき具体的なこと」の質問2点が出され「私はカネや名誉でなく日中関係のためにいうべきをいうが基本。政治の方で使いにくくなったのでは…。官僚の役割を大事にせず、政治が動きすぎた面も」と率直な感想。また「じっと座っていては世界は変わらない。勇気を出してはがき1枚でも発信することが大事」と奮起を促しました。
丹羽さんの著書の末尾には「印税は著者の意向に寄付されます」と記されています。贈り先は会長を務める日中友好協会と、かつて会長だった国連食糧計画協会。前者は中国からの留学生向け奨学金、後者はアフリカの子どもたち向け食糧支援です。行動する知の人らしい現地体験に基づく「個人が成すべきこと」としています。