今シーズンの冬は寒い日が多いこともあってお客様への灯油の配達業務が大忙しです。朝から夕方まで休憩時間も取らずに、上記の写真のような430リットルの灯油タンクを積んだ軽トラックで埼玉の4つの市の田舎道を走りまくっています。仕事が終わる頃には腰が痛くなって大変です。
『寒さ』が灯油の配達業務が忙しい最大の理由なのですが、それに加えて『新規の灯油のお客様』の存在も忙しくなっている要因の1つです。どのお客様に尋ねても、「今まで配達してもらっていたガソリンスタンドや業者さんが廃業しちゃってね。」とおっしゃるので、世間を騒がしている『改正消防法の影響によるガソリンスタンド等の業者の廃業問題』の影響が出ているようですね。
ニュースで既にご存知の方も多いと思いますが、改正消防法によって2013年の1月末までに40年以上経過したガソリンや灯油の地下タンクの改修がガソリンスタンドや業者に義務づけられました。
しかし、地下タンクの改修には数百万円の費用がかかるみたいなので、これを機会に廃業するガソリンスタンドや業者が続出しているようです(知り合いのガソリンスタンドはタンク2個の改修作業で800万円近くかかったそうです)。ただでさえガソリンや灯油等の燃料販売だけでは利益が出ないのに、タンクの改修作業に投資する余裕なんてない、と言うところが多いみたいですね。後継者不足問題も絡んでいるので、「儲からない仕事を子供に継がせても仕方がない。店を閉めよう。」等と言う判断に至っているようです。
その結果、ガソリンスタンドや業者が近所に存在しない『ガソリン難民』や『灯油難民』が発生しています。その一部の方が私の会社にも来られている感じですね。1シーズンでこんなに多くの新規のお客様が増えるのは私の会社でも初めての経験のようです。それくらいガソリン難民や灯油難民が全国で増えているんでしょうね。
さて、ここまで読まれた方は、「新規の灯油のお客さんが増えてよかったね!!。」と感想を持たれると思いますが、プロパンガス屋としては、「お客様が増えて嬉しい。」と単純に喜んではいられないのが現実です。「ガス屋は灯油の配達業務なんてやめてしまえ!!。」と平然と言うコンサルタントがいるくらい灯油の配達だけでは利益が出ないのです。正直、灯油の販売は儲かりません(うちの会社だけかもしれませんけど・・・)。
儲からない理由としては、ガソリンや灯油は仕入れ値が高いにもかかわらず、競合業者が多くて店頭販売価格や配送販売価格等の市場価格がほぼ決まっているので、利益を乗せられる状況にないからです。「どうやったらそんな値段で売れるんだ?。」と言う安売りガソリンスタンドやホームセンターの存在もありますしね。そんな状況なので、ガソリンスタンドはガソリンや灯油等の燃料販売以外の商品の販売(タイヤ、オイル、その他の製品やサービス)でいかに利益を上げるかが重要になっている、と聞いています。昔から地域密着で商売をしている販売店はどこも厳しい状況みたいです。
そんな利益があまり上がらない灯油販売を私の会社がなぜ行なっているかと言うと、プロパンガスを使って頂いているお客様へのサービスのためです。
私は子供の頃からずっと『お風呂はガスで沸かす』と言う環境でのみ生活していたため、『お風呂を灯油で沸かす』と言う環境がある事を今の会社に入るまで全く知りませんでした。これはカルチャーショックでしたね。埼玉だけの話かと思ってネットを調べたら、まだまだ全国的に灯油でお風呂を沸かしている環境が多くてビックリしました。私もまだまだ知らない事ばかりです。
私の会社のお客様の中にも、台所の湯沸かし器とコンロはガスで、お風呂は灯油、と言うところがかなりあります。そのお客様の家には下記のような灯油専用のタンクが設置されています。私が行なっている灯油の配達とは、電話でご注文を頂いたお客様の家の灯油タンクに注油する仕事がメインです。100リットル以上入る大きなタンクを設置されている家もたまにありますが、60リットル入るタンクが設置されているケースが多いですね(下記の写真はお風呂をガスで沸かすように変更されたお客様のいらなくなった灯油タンクを引き取ってきたものです)。
灯油タンクは家の裏の方に設置されている事が多いので、下記の写真のように軽トラックから給油ホースを伸ばして注油します。
ホースが届かない場合や軽トラックが駐車できないお客様の場合は、停車できる場所に車を停めて、20リットル入るポリタンクに灯油を一旦注油して、それを灯油タンクのある場所まで運んで、ポリタンクから灯油タンクに移します。
60リットル入る灯油タンクの場合はその作業を3回繰り返さないといけないので結構体力を使います。20リットルのポリタンクは20kgあるので、それを運ぶのと、灯油タンク上部の注油口までポリタンクを持ち上げて逆さにして注油する作業を何回も繰り返すので体力を使うのは当たり前ですね。作業服も灯油臭くなるので、毎日の洗濯もかかせません。
そんなそれなりに手間のかかる注油作業なので、一軒の配達に移動時間を入れると1時間くらいかかる事はザラです。「そんな手間がかかって利益が出ない仕事はやめてしまえ!!。」と言っている人がいる事を上にも書きましたが、地域密着で仕事をしているプロパンガス屋は利益が出ないからと言って簡単に灯油の配達をやめられないのが現実です。灯油の配達のサービスをやめたらプロパンガスを他の業者に替えられる危険性もありますからね。
そう言う実情なので、灯油(だけ)の新規のお客様が増える事は手放しには喜べないのが現実です。
新規のお客様の中には注油がお風呂の灯油タンクではなくて、石油ストーブに使用するポリタンク1個とか2個の灯油と言う少量のお客様も多いので、薄利多売状態が更に拡大しています。本当はこれを機会にガスの購入もうちの会社に変えて頂ければありがたいのですが、そんなおいしい話は滅多に転がっていませんからね。私の会社も評判の悪いガス切替屋のような行動はできませんしね。
尚、『灯油だけの新規のお客様は断る』と言う判断もあるとは思いますが、私の会社の現在の方針は『全てのお客様を受け入れる』なので、あまりに遠方のお客様以外はお取引をさせて頂いています。ガスも使用して頂いているお客様と灯油だけのお客様への対応を変えるのは灯油不足になった時くらいですかね。そう言う事態になった時は灯油の供給はガスも使用して頂いているお客様を優先する事になると思います。
以上、少し長くなりましたが、私が身近に接している灯油難民の話でした。
灯油の配達先は年配の方も多いので、私の会社も含めて現在灯油を配達している業者が利益優先で灯油の配達業務をやめてしまったらどうなってしまうんですかね。
「価格の安いホームセンターやガソリンスタンドに買いに行けばいいじゃん。」とか「オール電化にしちゃえばいいじゃん。」とか「地球温暖化対策のために灯油なんか使うな。」等と言う人がいますが、車や自転車に乗れない方や持っていない方、家の設備を改装する予算がない方も多いみたいなので、そう簡単に話が進むとは思えません。
国のエネルギー政策で原発や再生可能エネルギー等のいかに電気を作るかの話が議論されているようですが、現時点では灯油難民やガソリン難民の事も考えないといけないと私は思います。数十年後には解決している問題だとは思いますが、ここ10年では明らかに『今そこにある危機』ですからね。
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まだまだ私もH先輩も知らない事ばかりですね(笑)。
エネルギー業界にいると規制緩和を推し進めた小泉改革が残した『資本力のある企業だけが生き残る』と言う現実を痛感します。弱者は滅ぶのみの社会ならば、今後は色々な○○難民が日本中に増えていきそうですね。
が、やはり切実な問題だと思います。
都心はともかく、何代も住み続けている今の地方の人には生活と密着していますから。
ガソリン価格も上がる一方の見込みだし、電気料金は値上げになるし、生活が困窮する要素ばかりでやりきれませんね。
株主のために利益の追求だけを考える大企業と、なんでもかんでも安さを求める消費者の間には、昔ながらの地域密着の中小企業が入り込むスペースは小さくなってきています。駅前のシャッター商店街のエリアが広がっている感じですね。今後の高齢化社会って、この流れでいいんですかね?。
私の状況がまったく、お書きになっていらっしゃる灯油難民にあてはまりまして、ついコメントを書いてしまいました。突然に申し訳ありません。
近所のガソリンスタンドが相次いで閉店し、近距離で買えるお店がなく、昭和シェルの宅配サービスでもエリア外となり、近所に灯油の宅配を請け負うような流し売りも来ません。都市ガス圏なので、ノリの東京の友人さんのような方もいらっしゃいません。
そこでふと、灯油の宅配は儲からないのだろうかと思い、検索してみたら、予想通りのことが書かれていました。重労働で薄利であることです。本当にご苦労様でございます。東京のノリの友人様は人助けをされていると思います。私は本当に困って、電気対応に切り替えることを今日決心しました。
それにしても、ガソリンタンクの修理の法律は、どうやって成立させたんでしょうかね。大手石油会社からの猛反対に合ったり、外圧がかかったりしたのではないでしょうか。原発を再稼働させるために、エネルギーを電気にシフトさせるための政策だろうかとすら、思います。困っている家庭は予想外に多いと思います。
お仕事頑張ってください。失礼いたしました。
灯油をやめられて電気にされるとの事、仕方のない流れかと思いますが残念ですね(せっかく昨年から世界的にガソリンや灯油が安くなってきているのに・・・)。
小泉政権の頃から資本力のある企業を重視する政策を自民党は進めているので、地域蜜着だった中小のプロパンガス屋やガソリンスタンドはやっていけなくて店をたたむところが増えたみたいです(先輩社員談)。
まぁ、60代のベテラン社員と話すと、「売ってやっているんだ。」と客に威張っている人も多いので、他の業種から転職してきた私からすると「自業自得かな。」とも思えます。その分、お客さんが不利益をこうむっていますけどね。
私は冬は灯油の配達がメインの仕事なのですが、一部のお客さんから「ホームセンターに比べて高い。」とイヤミを言われたり、先輩社員から「灯油はもうからないんだからやめればいい。無駄な仕事だ。」なんて事を言われたりしています。社内社外からイヤミを言われる変な仕事ですが、高齢者の方の手助けにはなっているので、それだけが心の支えですね。まぁ、勉強だと思って明日からも灯油を配りまくりますよ(笑)。