ノリの東京の友人の生きる糧(福岡編)

日々のちょっとした楽しみや悲しみを徒然に語ります。

街で見かけたニュースの現場(番外編) ~ 某企業の灯油巡回販売時の不正行為の発覚 ~

2015年02月12日 | 日々の出来事

 先々週だったと思いますが、TBSの夕方のニュースを晩飯を食べながらボ~っと観ていたら、私の仕事に関係のあるニュースが流れてきたので、珍しくテレビに目が釘付けになってしまいました。
 しかし、その内容は灯油の販売の仕事をしている私のような人間が観ると、「ふざけんなよ。お客さんだけでなく全国の同業者に迷惑がかかるだろうがぁ~。」と言うとんでもない内容だったので、ごはんが喉を通らない状況になってしまいました。

 そのニュースは10分くらいの特集だったのですが、灯油の巡回販売を行なっている東京シェルパック株式会社の複数の社員がお客さんを騙して、月に40万円くらいの不正な収入を得て私腹を肥やしている、と言う内容でした。その手口は、お客さんが給油の現場を見ていない事を幸いに、お客さんの灯油のポリタンク(18リットル用)に17リットルしか入れていないにも関わらず18リットルの代金をもらって、その1リットル分の差額(約100円)を懐に入れる、と言うモノでした。月に40万円の収入と言うことは、単純に考えると月に4000リットルごまかしている計算になります。

 私はこのニュースを観ながら、「こんな事をする奴がいるんだ。」と驚いたのは間違いないのですが、自分の行なっている業務の流れを思い浮かべながら、「お客さんはともかく、会社にはすぐバレるだろう。この会社はどんな事務処理してるんだ。」と思ったのですが、その事務処理に関しては全く触れずにニュースは終わってしまいました。単に2人の社員が反省している映像が流れて終わりです。『誰に、何リットル、いくらで売った』と言う販売管理と、灯油販売車(ローリー)の『今日は何リットル出荷したので在庫は何リットルある』と言う在庫管理さえきちんと行なっていれば、こんな不正は簡単に発覚する(または変に思える)はずなんですけどね。

 そんな中途半端な感じでニュースが終わってしまったので、「番組宛にメールを出そうかな。」等と思いながらモヤモヤした気持ちでその日は眠りにつきました。まぁ、私の会社は灯油の巡回販売(ながし)は行なってないので、同業者ですが私とは少し環境が違いますしね。

 しかし、翌日、ネットでこのニュースの話題を検索したところ、東京シェルパック社に対する批判以外にも、「灯油の販売員はみんなヤっている。」、「ガソリンスタンドもごまかしている。」等と言う、思わず、「俺はやってねぇよ。」と叫びたくなる書き込みも何件かヒットしたので、その火の粉は少なからず私にも降りかかってきました。こうなると、ニュースを観た私のお客さんから何か言われる可能性もなくはないので、理論武装だけは準備しておかないとマズい状況になっていました。


 と言う事で、今回のニュースで紹介された不正行為を自分の仕事に当てはめて検証する事にしました。普段は悪事について考える事はほとんどないので、考えるだけで頭が痛くなってしまいました。そして、その検証結果は、『できなくはないけど、かなり面倒、しかも、お客さんの動き次第ですぐにバレる』と言うモノです。

 さて、私の会社の灯油の販売の1日の流れは以下の通りです。1日の販売件数は多くても30軒くらいなので、大量の顧客を回る巡回販売の会社とは事務処理の内容は違うかもしれません。
 ちなみに、私の乗っている灯油販売車(ローリー)のタンクの灯油の最大搭載量は430リットルです。お客さんに灯油を販売してローリーの在庫が減ったら、最大20,000リットル(10,000リットルのタンクが2つ)備蓄できる地下タンクから減った分をローリーに補充します。そして、その地下タンクの灯油の在庫が少なくなったら、灯油の卸売業者さんに頼んで補充してもらいます。
 
 (1)顧客から電話で灯油の注文が入る
   ※顧客名と顧客コードを事務所の受付台帳に記入
 (2)顧客にローリーで灯油を販売する(領収書と納品書を顧客に渡す)
   ※顧客名と販売量をローリーに積んでいる台帳に記入
 (3)ローリーの在庫が減ったら、地下タンクから減った分を補充
   ※地下タンクからローリーに入れた出荷量をローリーの台帳に記入

   ※1日(1)と(2)と(3)を繰り返す

 (4)その日の業務終了時に、以下の情報をローリーに積んでいる台帳に記載
  ①ローリーのその日の販売量の総合計
  ②ローリーのその日の在庫量の指針
  ③ローリーの今までの積載計(累計)の指針
  ④ローリーに地下タンクから入れた灯油の総合計
  ⑤地下タンクの今までの出荷計(累計)の指針
   ※⑤に関しては、事務所にある地下タンクの在庫台帳にも転記、在庫を常に管理

 上記のような流れで1日の灯油の配達業務は終わります。冬の繁忙期は朝から夕方まで働きっぱなしで、昼飯を抜く事がよくあります。夏は丸一日注文がない時もあるので暇ですけどね。


 この業務の流れの中で、ニュースで報道されたようなインチキを行なうとすると、まずは、お客さんに渡す領収書と納品書の偽造は必須になってきます。実はこれが私の会社では結構大変です(普通の会社もそうだと思いますが・・・)。
 ちなみに、客先で灯油を給油する際にお客さんがその作業をずっと見ている事は滅多にないので、18リットルのポリタンクに17リットルしか入れないと言うインチキはやろうと思えばできると思います。

 私の会社では、5枚複写の売上伝票(社名入り・伝票は連番)を使用しています。1冊で50件処理できる冊子の伝票です。
 5枚複写の伝票は、1枚目:売上伝票、2枚目:入金票、3枚目:領収書、4枚目:納品書兼請求書、5枚目:納品書(控)、と言う感じで、1枚目と2枚目は会社に提出、3枚目と4枚目はお客さんにお金と引き換えに渡し(銀行引き落としの場合は4枚目だけ)、5枚目は冊子に残したまま、と言う感じで処理します。

 こんな状況なので、お客さんにはインチキの『18リットル』で領収書を切り、会社には実際に出荷した『17リットル』で申請し、差額を懐に入れる悪事を私の会社で行なう場合は、会社に残す5枚複写の1枚目と2枚目と5枚目には17リットルと金額(1リットル100円だと1,700円)を記入し、お客さんに渡す3枚目と4枚目には18リットルと金額(1リットル100円だと1,800円)を記入する必要があります。こんなふうに5枚複写の伝票を誤魔化して記入するには高度な偽装技術が必要になりますね。時間もかかります。
 また、伝票を偽装したとしても、その伝票をお客さんに会社に持ち込まれたら一発で悪事が発覚してしまいます。伝票の偽装は危険度が高いですね。領収書を発行しなければ、この危険はなくなりますが、領収書を発行しない会社って今時あるんですかね。

 これに加えて、会社に『17リットル』の売上伝票を出しまくっていたら、「なんでお前は満タンの18リットル入れないんだ。」と必ず突っ込まれます。私の知るかぎり灯油のポリタンクは『18リットル』と『20リットル』の2種類が主流なので、毎回1リットル少ない『17リットル』とか『19リットル』の売上だったら明らかに変と言うか怪しいです。


 伝票の偽装は上記のような感じなので、「それだったらローリーの在庫も偽装するか。」となりますが、上に書いたように在庫の管理は徹底しています。ローリーの在庫を誤魔化したら、次は地下タンクの在庫も誤魔化す必要が出てきて、在庫が狂っている(台帳に書いている在庫よりも実際の在庫の方が多い)と最終的に灯油の卸売業者さんに補充してもらう時に地下タンクから灯油が溢れてしまいます。この時点でインチキが発覚ですね。冬の繁忙期は灯油の卸売業者さんが毎週来ているのでインチキが発覚するのは早いでしょうね。


 以上のような検証結果なので、電話注文のあったお客さんに灯油を配達する形態の私の会社では、東京シェルパック社の社員が行なったような不正行為を行なうのは難しいですね。やってもすぐにバレると思います。お客さんに領収書を発行せずに、会社には『今日の出荷量はいくら、売上はいくら、灯油配達車の在庫は何リットル』と言うザックリとした事務処理だけで済むような事務処理だったらインチキは簡単にできると思います。


 以上、街で見かけたニュースの現場の番外編の『某企業の灯油巡回販売時の不正行為の発覚』の記事でした。
 私が仕事をしている街でも東京シェルパック社とは違う巡回灯油販売の会社の車が回っていますが、その車を見る度に、「もしかしたらここの会社もやっているのかなぁ。」と疑ってしまう私がいます。業界的にはインチキを行なっている会社(人間)が今回ニュースで出た2人だけだったら不幸中の幸いですね。

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