二銭銅貨

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ピグマリオン/新国立劇場

2013-12-07 | Weblog
ピグマリオン/新国立劇場

原作:ジョージ・バーナード・ショー、演出:宮田慶子
出演:イライザ:石原さとみ、ヒギンズ:平岳大、
   ドゥーリトル:小堺一機、ピカリング:綱島郷太郎

平面的で線の多い白が基調のデザインはやや漫画的。タクシーにも、平面の板に車の絵を書いたものを使って簡素な表現をしていた。最初に登場するコベントガーデンの建物は大きくかしいでいて、これも漫画的と言えなくもない。キャラクターのデフォルメされた性格づけの故か、演出も何となく漫画的な印象に感じた。一方、舞踏会の場面では一転して奥行き感のある豪華なセットが使われ、車も本物のクラシックカーのようなものが出てきて豪華な雰囲気だった。演出や美術も安物っぽい感じと豪華な感じの間に大きな落差をつけて、このシンデレラストーリーを強調しているようだった。全体にメリハリと軽快さが感じられて楽しかった。

石原さとみは元気良くめいっぱいに芝居して、平岳大(ひら・たけひろ)の迫力ある芝居に良くアンサンブルしていた。舞踏会の場面ではイライザと同じように中々うまくやっていた。小堺一機のセリフは落語の語りのようで面白かった。ロンドンの話に落語の雰囲気なので、ややミスマッチな感じがしたけれども、和楽器とオーケストラのアンサンブルのようなユニークさが良かった。綱島郷太郎は安定感がある芝居で、しっかりと主役2人の芝居を支えていた。増子倭文江の家政婦役、倉野章子の母親役はそれぞれピシッと締まって注目された。

ヒギンズの性格づけが、ややマザコン気味で典型的な理学系男子の若造で子供っぽい作り。対するイライザは素朴ながら、ちょっとおませで好奇心の強い文系かあるいは理系でも化学系の女子といった感じ。かたや恋愛における抽象論、一般論、ロジックを問題にし、かたや「私」と「あなた」固有の心の状態が今どうなっているのかを問題にしている。両者の相反する性格間の化学反応やいかにといった感じの芝居になっていた。バーナードショウは当時の上流階級に対する風刺の意味も強く物語りの中に入れていたようにも思えるが、演出の宮田はこのありがちな男女の恋愛感情のすれ違いのディテールに踏み込んでいたようにも思える。バーナードショウの脚本と宮田の演出も、もしかしたらすれ違っていて、ヒギンズとイライザと同じ関係になっていたのかも知れない。

この物語の後、どうなるかは観客まかせだと思うけれど、多分このあとヒギンズはイライザを追いかけて、結局母親と息子の関係と同じようにイライザの尻に敷かれるハメとなり、めでたしめでたしとなるような気がした。

楽しかった。

13.11.17 新国立劇場
コメント
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